君はいつもそうだ。私の嫌がることばっかりする。
遼一と奈々の平穏な日常は唐突に終わった。見知らぬ場所で目覚めた奈々は、一人、鎖につながれていた。遼一が近くにいない奈々は満足に力も発揮できず、そこで奈々は4人の少女と対峙する。天使育成のためのプログラムに落第した少女たち。5人が放り込まれた密室で生き残りをかけた新しいゲームが始まろうとしていた。
前巻できれいに終わっていたかと思ったら続きが出たよ!
宿主を食らうことで天使として完成するという残酷なゲームをイレギュラーな形で生き残った奈々と遼一。あの後は割と穏やかに暮らしていて、そのまま何も起こらなければそれこそハッピーエンドだったろうに、だけれど、そうは問屋が卸さないってことで今度は奈々の方がゲームに巻き込まれ、生き残るために過酷な試練に挑むというエピソード。
疑心暗鬼の中、自信の知恵だけが状況を打破する唯一の鍵であるというのは、これまでのシリーズと同様。ルールの穴を突き、裏切りを強要するようなシステムの、さらに裏を突いて最終的には(ふたりにとっての)ハッピーエンドに至るあたりは、逆にこのシリーズならではなのかも? 割と救いのあるラストを、今回も提供してくれたので、そういう路線の物語なのかも。ただ、そんな安心感があるからこそ、緊迫感が微妙に薄れている一面もあるかもしれませんね。ぎりぎりな状況なんだけれど、何とかなるんじゃないかって予感が常にありましたし。
今回は影の薄かった遼一は、それでも最後の最後で主人公らしい決断を下しますね。こういう自己犠牲な選択を下すのが人間で、作中でそういう選択をハナから否定していた天使たち対比する形になってるのが面白いかも。不完全な奈々と依存すべき相手である遼一、今回も結果的に遼一との関係が断ち切られることもなく、けれど天使として生きることになった彼女。機械然とした他の天使たちと違い、不必要な感情というものを残したまま天使となった奈々は、その不完全さがあるからこそ、彼女らしいのかなと思います。
hReview by ゆーいち , 2009/05/18
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