ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2

2013年4月18日

stars 変なこと聞いて良いかな? 都築くん、本当にあたしたちと同じ現実で生きてる?

世界改変のエラーにより、ヒロインたちを取り戻した武紀。彼女たちを幸せにするために、激甘なハーレムライフを送る武紀の周囲で、奇妙な噂が流れている。伝説の木で恋愛成就、どこかで聞いたことのあるその噂に、武紀は新たな世界改変の疑いを持つ。そして、唐突に訪れる「ほんとうの」幼なじみとの再会。虚構であることに揺れるもうひとりの幼なじみの理恵。果たして武紀の選ぶべき選択肢は……?

続いちゃったよ、な第2巻。やっぱり受けが良いと続編というのはどこの世界でも一緒なのですか。1巻がきれいに片付いていて、彼らの物語としては一抹の不安を持たせつつ希望を予感させる幕だったのでどういう展開になるかと思いきや……。

何このスーパーギャルゲー大戦!?

武紀が幸せにすると決断した『エターナルイノセンス』のヒロインたちと、他のゲームの夢のコラボ、ってかクロスオーバーですな。武紀以外の人物が投影したゲームのシナリオに彼らが巻き込まれ、その中でお互いの絆を確認していく流れ。なんか、これだとまた別のゲームの物語としてありそうだけれど、そういうことなのかなあ。

突然、現実世界に投影されるゲーム世界。それを実現するフェアリーテールシステムの存在が作中でもほのめかされ、FBOnlineで連載中の外伝では、より踏み込んだ設定解説がされてるようだけれど ((こういう、Web連載追わないと概要が掴めない構成は個人的にはどうかと思いますが。))、現実世界というレイヤーに各種ゲームの世界を被せることで世界を改変する構成なんですねね。それが現時点だけでなく、過去にまで遡って改変するというのはなかなかに凶悪な仕様に思えますが、そのレイヤーをコントロールするシステムの設計者や運用者は、作中世界よりも上位にある何かであるんでしょうかね。物語を観測する読者視点で、この構成が把握できるってことはそういうことなのかと思えますが。

しかしまぁ、古今東西様々なゲームが溢れている中、自ら望んでバッドエンド溢れるシナリオのゲームを選んだものです。そこら辺、もうひとりの主人公となった彼の気持ちに共感できる部分がないので、単に全体の物語の都合上、あるいはそういう設定の物語を登場させ、武紀や理恵を巻き込むことを目的としていたような感じを抱いてしまいますね。その過程での物語VS物語なシーンとかは、ワリと夢の競演的に面白くもあるのですが。

そして、武紀の彼の物語のヒロインたちに対する気持ちというのもぶれてないのかなあ? ギャルゲーをプレーしまくって、鈍感で朴念仁な主人公をいくらでも見てきたはずなのに、その彼らと同じ行動を無意識に取る。投影されたシステムの影響を受けているとはいえ、そして後になってそういう行動を取ったことを自覚しながらも自己弁護をするあたりが、前巻の最後に抱いた覚悟からするとどうよ? とか思ってしまったり。そして、今回もエピローグで決意を新たにす、ってこの繰り返しですかい? そうすると、一切の影響を受けていないリアル満載な高橋愛子さんの存在がなんとも意味深に。皆に対して人間として一番接しているのは彼女なのかもなあ。

ともあれ、そんなギャルゲー主人公の役に収まり、ウハウハハーレムライフを満喫する武紀にも、その内ゲームシナリオではない選択肢が突きつけられるのは間違いないでしょうね。現実で生きるのなら、甘いだけではいられないというその事実と対面したとき、それでも自分の覚悟を貫けるのかどうかってところで、主人公の器が計れるのではないでしょうか。ま、個人的には幼なじみルート推奨ですが!

hReview by ゆーいち , 2009/06/06

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2 (ファミ通文庫)
田尾 典丈
エンターブレイン 2009-05-30
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