契約しようアイム。これから僕はアイムのためになんでもする。僕がアイムにあげられるものなら、なんでもあげる。代償でもなんでも、好きなだけとっていけばいい。けれどその代わり、僕に力を貸して。今を守る力を。
かつて起きた内乱により極東最大の景教国となった日本。そんな国に生きながら信仰心ゼロの少年・遠野九罰は悪魔に付きまとわれていた。召喚した覚えのない悪魔・アイムの自由奔放な行動に振り回され、ときには妹の七罪の手痛いおしおきに耐えつつ平穏ならざる生活を送る九罰。しかし、街で発生する悪魔絡みの事件は九罰たちも巻き込み、そして事態は意外な方向へと流れていって……。
[tegaki]あああ……ラストが、ラストがああ。[/tegaki]
と、この結末はなんとも微妙な印象の作品。というか、どうにも禁書の1巻と同じ流れになってしまってるせいで目新しさがないような。主人公の選択に対する説得力が今ひとつないのもいっしょかなあ。
放火魔な高位悪魔アイムをなぜか召喚したことになってしまった九罰。景教が日本の最大宗教であるという現代とはちょっと変わった日本を舞台に悪魔とそれを討つエクソシストまで登場して、すわ異能バトル勃発か! と、これはまあ予想通りの展開なのですが、どうしてこうラスボスが小物感あふれるキャラになってしまうんでしょう。やってることはなんとも醜悪で、悪魔らしい所行ではあるのですが、台詞回しと行動がいまいち脅威に思えないというのは導入巻の敵方としても、荷が勝ちすぎる感じですね。
同様に主人公・九罰の言葉も終始違和感を覚えてしまうとすんなりと読めないのですよね。あれ、こんな台詞言うキャラだっけ、とかバトルシーンで思ってしまうと ((アイムとの融合とか純粋に九罰自身という状況ではないのですが妙に女っぽい言葉遣いになってません?))せっかくのバトルも勢いが減じてしまってるような印象でした。
そして、あらゆる代償を払っても、今を守りたいと願い誓った九罰が、その直後に自らを犠牲にするとか、う~ん。やっぱり、彼のこの最後の選択は疑問が残ってしまいますね。アイムと、妹・七罪のいずれかを選ぶというある意味究極の二択ですが、そこでアイムを選ぶための説得力が足りないかなあ。彼が見続けたアイムの居るべき世界の過酷さへの同情なのか憐れみなのか、あるいは九罰自身の自己満足なのか、それを伝えるためにはもうちょっとアイムとの絡みを増やしてほしかったかなあ。
で、その二択の結果と、さらに覆される結末という、二転三転してるんですがどうにも微妙な流れ。というか、なんでその「お願い」を受け入れるのかがホントに理解できないんですが、敵へ借りを返すとかそんなレベルで、自分の大切な身内の悲しみを拭ってやることができないとかって……。彼の性質云々で済ませるには悪趣味かなあ、と。
中盤から同居人も増えたりしてウハウハなハーレムライフがスタートしたのにそっちの盛り上がりもなかったし、異能ものを描くにしてもラブコメを描くにしても、ちょっと立ち位置が難しいお話なのかもしれませんね。
てか、九罰が景教に対して極度の拒否反応を示すのって、彼が人間じゃなくて悪魔である伏線だと思っていたんですが、そんなことなかったですね。や、まぁ、このラストがそういうことを暗示してたのかもしれないけど、それは違うような気もするし。
hReview by ゆーいち , 2009/06/14
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