アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫

stars たとえどのような未来が訪れようと、私はキミを選んだことを後悔だけはしないよ。

加速世界に異変が起きていた。敵味方の区別なく無差別にデュエルアバターを襲い続ける呪いの強化外装・災禍の鎧。その打倒のためには唯一の飛行アビリティを持つハルユキのシルバー・クロウの力が必要だという。突然訪れた重大かつ困難なミッションにハルユキはどう立ち向かう!?

新キャラも続々と投入され、大きく物語が動き始める予感を覚える第2巻。

純色の七王も今回は赤と黄が登場し、順当に行けば続刊でも残りの王たちが次々にお目見えしてくるのでしょうか。

バーストリンカーとしては、唯一無二の貴重なスキルを持ちながらも、まだまだ未熟なハルユキと、彼の「親」となった黒雪姫先輩。ふたりの関係はリアルだけでなく加速世界においても決して切れることがなく、むしろ加速世界においてこそ親と子という繋がりを意識させるだけに、より強い結びつきを互いに意識させているのかも?

リアルでは自分に自信が持てないハルユキ、せめて同じレギオンの旗のもと、共に戦う戦士として対等にありたいと思いつつも恐れだったり気後れだったり、そして自分の知らない過去を彼女が持っていることに対して不安を抱いたりと相変わらずここぞというところまでヘタれてるのは、もうちょっとガンバレと気合いを入れてあげたくなったり。

もっとも、今回登場した加速世界の真の姿、無制限中立フィールドで闘い続けてきたという壁が、お互いの間にあるわけで、実時間をはるかに上回る時間をそこで過ごしてきた上位ランカーたちとの溝を埋めるのは一筋縄どころでは行かないでしょうね。登場人物たちがその実年齢に比べてやたらと大人びた考え方をしてる理由付けとかにもなってますが、今後はいわゆる廃人プレーヤーみたいな、こちらとあちらを完全に逆転させてしまった人物も出てきたりして。

あるいは、その象徴が今回、赤の王との共同戦線の原因ともなった災禍の鎧なのかもしれませんね。ただひたすらに強さを求めるための強化外装という名の呪いの具現。呪いなんて非科学的な要素が割り込む余地がなさそうな舞台なだけに、それを設定した何ものかの意志が、今後も加速世界で戦う戦士たちを翻弄していきそう。辛くも災禍の鎧を退けたと思ったら、なにやら意味深な言葉がハルユキに届いてるようだし。自分の弱さにコンプレックスを抱いている彼が、これまでの犠牲者と同じ轍を踏まないという保証はないわけで。

だからこそ、今回登場した赤の王たちのような親子関係とは別の関係を、ハルユキと黒雪姫先輩が築いていけるかという点に興味が湧くわけですが。バトルだけでなく、ハルユキを中心としたリアルの側の人間関係も少しずつ深みを増してて、黒雪姫先輩との関係だけでなく、幼なじみのチユリも今後大きく関わってきそうだし、赤の王ことニコも敵ではない立ち位置でこれからもちょっかいを出してきそう。むしろ、そんな女の子たちが増えていくことで、黒雪姫先輩がやきもきするシーンがいろいろ楽しめるとか、そんな方向で期待をひとつ。

それにしても、物語の最終目的となるレベル10とその先へ至る、というのは今の段階だと果てしない夢物語に思えてしまいますね。その過程においては、せっかく友達になれたはずのニコとも事実上の命を賭けた戦いをしないと行けないわけだし、これからの戦いはそういう意味でも苦悩の度合いを増していくのかもしれませんね。

hReview by ゆーいち , 2009/06/22

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)
川原 礫
アスキーメディアワークス 2009-06-10
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