聖剣の刀鍛冶 #6 New World

2009年7月6日

stars ルーク、あなたは私を救ってくれると言ったけれど。私はただ守られるだけの女ではないよ。

聖剣の鞘としての役割を知ったセシリー。独立交易都市でのヴァルバニル会議開催が目前に迫る中、ルークは彼女に科せられた呪われた使命を断ち切るため、聖剣の完成のため、初代ハウスマンの生家が残る小国家へと向かう。強引に同行したセシリーとの小旅行は、しかし、帝政列集国が小国家統一のために送り込んだ剣士との戦いへと転じることとなる。

[tegaki]終わる世界、変わる世界。[/tegaki]

おいおいおい、何ですかこの絶望的な展開は。ラストの一文と、そこに添えられた挿絵の効果が絶大すぎて茫然自失。ここまで落としに落とした展開を持ってくるとは、逆転の目が見えない状況下、ここからの挽回策がどこにあるというのやら?

誰にも迫りつつあるタイムリミットを強く意識させられる展開ですね。ヴァルバニルの復活という世界にとっての限界点、人間の、国家の思惑はそれすらも政治として利用しようと、開かれるのは二国一都市会議。独立交易都市に集う軍国の女王・ゼノビアや帝政列集国の中にあってさえさらに異端的な存在のシーグフリード。ルークやセシリーといった都市側のあるいは世界にとっての切り札的なふたりの不在の中、シーグフリードの手によりもたらされる混沌と破壊。そこから新たな世界を目指すという彼の狂気が目指す先はまだ見えず、ただそこで振りまかれた絶望だけが登場人物たちを打ちのめす。

果たしてかつてないほどの圧倒的な絶望で心折られてしまったセシリーたちに、これからどんな運命が用意されているのやら。最終的な手段はまだあれど、それを選択するということは、すなわち自分たちの未来を諦めてしまうことにも等しくて、分断されてしまったルークとセシリーが再び並び立つというシーンはこの状況ではひたすら難しいように思えますが、けれどそれなくしては逆転に目など見えないように思います。ことごとく分断されてしまった彼らが集い、反撃に転じるとき、その場面がひたすらに待ち遠しく感じます。

ああああ、しかし、クエイサーの不穏な発言と決意が今後のさらなる悲劇的なフラグに思えてしかたないんですよね。立場的にも状況的にも、彼ならそういう決断をしかねないように思えてしまって。そして、仮にそうなった場合、セシリーたちにとってはそれはどうしようもない決定的な打撃となり得るだけに、容赦ない展開からするとそんな未来もちらりと想像してしまいます。ああ、ただの希有であってくれ。

hReview by ゆーいち , 2009/07/04

聖剣の刀鍛冶〈6〉

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 6 (MF文庫J)
三浦 勇雄
メディアファクトリー 2009-06-25
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