また会いましょう。次もまた、初めてお会いしたときと同じように戦場で。
房州の外れ、他国との国境に位置する都市・吉原。数多の遊郭が集まり、多くの異人の住まう吉原は、異人を排斥しようとする房州の思惑と対立し、争いの火種がくすぶっていた。そんな中、吉原で立て続けに起きる殺し。犠牲となるのは遊女と国の高官。街一番の妓楼・秋月楼の花魁・
独特の世界観で彩られる愛憎劇。街で立て続けに発生する殺人事件と、その結果として巻き起こるであろう吉原と国との戦争という、まさに一触即発な状況下。時には華々しく、また時には切なく悲しく、咲くように生きていく花魁たちの物語、かと思いきや……。
花魁である紅が、その事件の次なる標的と定められたかのような脅迫状が届いたあたりからどんどんと血なまぐさい方向へと物語が流れていってあれれれれ?
この時代、そして妓楼、吉原という舞台を設定したのは、後半のこういう展開を描きたかったがゆえなのかな、とか。紅をはじめとした花魁たちの生き様がどうのこうの言ってる場合じゃなくて、吉原炎上! とかなんとも壮大というか大変なことになる後半に至るまでの流れが凄いなあ。
紅の生き方とか、彼女の一族が母から娘へと連綿と受け継いできた本性とかが過去のエピソードを交えて明かされていくにつれて、はげ落ちていく紅という仮面とその下に潜んでいた彼女の本性。それに惹かれ、あるいは憎しみをたぎらせた、たったひとりの人間の感情が巻き起こした事態としては度が過ぎているとしか思えない大事ですが、だからこその狂おしいほどの焦がれがそこにあったように思います。が、そもそも登場人物たちが一癖も二癖もあって煮ても焼いても食えないようなひとびとなので、そんな彼らの心の内はあまりに生々しく感じてしまうのですが。
結構な人数が登場し、紅を中心としてお話が動いていくはずなのに、印象に残ったのは吉原自警団の頭領・ベルガモットというのは親父好きにはたまらない、のかな。いけ好かない独善的で高慢な性格で反感を生んでおきながらも終盤での大立ち回りとかもうね。
逆に紅の周囲にいた人物たちは影が薄くなっていくキャラがいたり、彼女への想いが報われずに手痛い裏切りを受けたりと、文字通り彼女に「食われて」しまってる感じがして不憫ですね。
そんな紅がどうなったのか、これからどうなったのか、それが今後描かれるかどうかは微妙な気がしますが、彼女は彼女の血の命じるまま戦い喰らい死のその瞬間までひたすらに生き続けていくのでしょうね。
hReview by ゆーいち , 2009/07/08
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紅はくれなゐの感想レビュー(ライトノベル)…
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遊郭都市……