アカイロ/ロマンス〈4〉 白日ひそかに、忘却の

stars 大丈夫です、きっと。枯葉が折れてしまうようなことがあっても、俺と灰原がきっと立ち直らせてみせる。

白州高校の理事でもある分家・ひじりの当主、砂姫からもたらされた情報により、枯葉たちは守勢から攻勢へと転じる決断を下す。調査のため訪れたのは秋津依紗子の住まい。そこで知るのは、依紗子の抱える底の見えない狂気だった。霞がかる枯葉の記憶、景介の枯葉への想い、封じ込めていた型羽の過去、通夜子の言葉に迷い続ける棗。戦いの中、けして避けては通れない問題を皆が抱え、物語は核心へと進んでいく。

[tegaki]枯葉はいてない疑惑![/tegaki]

……それはそれとして、割とコメディな展開が中盤まで続いた後にヘヴィな流れになるとそのギャップに押しつぶされそうになりますね。今回もそんな流れです。

鈴鹿の一族が抱えていた闇が前巻あたりで語られたかと思ったら、今回は彼女たちの持つ蔵物にまつわる忌まわしい事実の一端が明かされたようですね。その全貌は未だ把握はできないけれど、景介の抱いた得体の知れないおぞましさと不安というものがこちらまで伝わってくるかのようでした。そして、全ての蔵物がそうなのだとしたら、一族にとっての秘宝、枯葉の手にしていた「つうれん」とて例外ではなく、その特性上、出自と正体がこの上なく呪わしいものであるように思えてきますね。

景介が戦うために手にした力は、まっとうな戦力ではなく、それこそ人間が人外を駆逐するために用いたこざかしい知恵に裏打ちされたもので、前回に引き続き、今回もそのおかげで窮地を脱することができました。が、蔵物の自由な発想による扱いという事実を、依紗子に見せたのは失敗だったのかも? 彼女が再び景介たちの前に現れたときの脅威度が増したような気も……。

そんな先の心配をする前の、枯葉を打ちのめす蘇った過去の記憶。呪われたというに相応しい鈴鹿の一族の内情ですが、彼女にとって近しい肉親たちの間に起きていた真実が、これまた残酷で、きっとあの場に景介が居なかったら彼女はどうにかなっていたのかもしれませんね。そんな枯葉の弱さを知り、また強さも知っているからこそ、彼女を支え、より近づくことを決めた景介の覚悟はいかほどのものか。流されるでなく、立ち向かう決意をもって、枯葉の気持ちに応えた彼の行動は、そのまま彼女の希望に繋がっているように思えます。

全6巻予定ということで物語はあと2巻。今回の引きも、一族内のバランス、ひいては人間との関係にも致命的な亀裂を入れかねない、供子の甘い毒のような誘惑。壊れ、戻らない、滅び行く運命しか見えないような呪われた一族の未来を、それでも信じる枯葉の思いが、どうか報われますように……。

hReview by ゆーいち , 2009/07/11

アカイロ/ロマンス 4

アカイロ/ロマンス 4 (電撃文庫 ふ 7-19)
藤原 祐
アスキー・メディアワークス 2009-07-10
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