ボクは、噂長様に生んでもらえてよかったよ。今日までずっと楽しかった。でも最後に悲しみがわかってよかった。悲しみを知らないまま、ボク消えちゃったら、それが一番悲しかったと思うから。
地伝を生み出してきた噂長の呪いを解き、これにて一件落着? と思いきや、もとの世界に変えるための出入り口となっていたプチ神隠しのスクリーンが妃唯によって奪われた! 異世界があの世に到着するまで、残り時間は24時間。無邪気に鬼ごっこを続ける妃唯と、必死に彼女を追いかける春男たち。その結末や如何に!?
[tegaki]ついに迎えた大団円![/tegaki]
いやぁ、前巻のシリーズの雰囲気を思いっきりぶち壊すようなホラー風味の展開と風雲急を告げる引きでどうなるかと思ったら、これまでの物語を踏まえて集大成ともいえる流れできれいにまとまってくれましたね。
前巻の噂長が特定の感情を肥大化させてしまった存在だとしたら、今回登場した最後の地伝は特定の感情を欠落させてしまった存在。どちらも描かれ方は恐怖でしかないですが、笑顔でそら恐ろしいことをなんの疑念もなくなってのける後者の方が、静かなくせに戦慄の度合いは上だったような。
そんな最期の地伝を解決するために集結したのがこれまで解決してきた地伝たちというのは粋な展開でしたね。どうしようもなく壊れてしまったいたように思えた噂長でさえも、地伝を産み落とす存在であった彼女でさえも、地伝の犠牲になってしまっていたという切なさがピリと利いてます。
そして、噂長が望まない状態で不幸になってしまった春男の友人たち、そして春男自身も、この事件を解決する中で、過去と向き合い、精算し、笑顔を取り戻すという流れがなんとも素敵ですね。本来なら誰も不幸になどしないはずだった噂長の思惑から外れ、想定外に産み落とされてしまった不幸の解決、これをもって最後の地伝の解決としたのはまさに正解なんだと思いますね。
通してみるとギャルゴと蔑まれ嫌われていたはずの春男が、最終巻ではどれだけの友人を得たものか。人外の異性に好かれまくるという祖母の予言は見事に外れ、人外どころかクラスメイトの女子にさえも行為をもたれまくることになった春男。本命であるはずのコトリさんとの仲の進展はなかったりしたけれど、これからさらに白熱していきそうな争奪戦が見物だったのにと思いますが、それが短編集とかで描かれることはあるのかなあ?
相変わらずエピローグの文量が少なめで余韻を残すには物足りない感じもするのですが、ともあれ気持ちの良い大団円でした。
hReview by ゆーいち , 2009/07/26
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