さあ、桃原。開戦を告げるゴングは鳴った。正々堂々、騙し合いといこう。
冥府に忍び寄る陰謀の気配を感じながらも、誓護は決断を下す。最愛の妹・祈祝を拉致されたままの誓護は、彼女を取り戻すために千秋たちの軍門に下ること。秘密裏に練り上げた祈祝奪還のための秘策。しかし、それは心を読み取る異能を持つ鈴蘭と対決するには、あまりに頼りなく不確かなもの。たったひとりで彼らと対峙することになった誓護は、果たして祈祝を救い出すことができるのか……?
異能全開の人外バトルよりも、こういった張り詰めた緊張感漂う心理戦の方が好みかも。この辺、前シリーズの雰囲気でしたね。幻想譚になって、明確な敵と、明確な目的が出てきて、そのために力を求め、戦いを余儀なく、そして戦うことを受け入れてきた誓護とは別人のような戦い方。
まぁ、それも彼にとって最優先で守るべき妹の祈祝の安否がかかっているわけだから、この必死さも理解できようというもの。心を読む能力を持つ鈴蘭と、誓護のことをハナから信用せず相対してくる彼女のもとに付いた千秋刀真との、騙し騙される心理戦。そして、その心理戦、頭脳戦こそが本骨頂、切れ味抜群の誓護の策が、数々のピンチをくぐり抜けて見事に決まった場面はなかなかのもの。心を読む相手に対する作戦としては、確かにそういう方法しか対抗策はないんだろうなあ。デスノートだったりコードギアスだったりでおなじみの手段ではありますが、そこで自らに起こるであろう精神的なぶれや焦りまでも計算に入れてのお見事な作戦でした。
そんな綱渡りの作戦の果てに、ようやく奪還した最愛の妹。これで後顧の憂いなく、アコニットに協力できるかと思いきや、またなんだか、きな臭い存在が姿を見せてきましたね。アコニット側の戦力も整いつつあるのに、それでも不安をかき立てるような引き。物語の背後では世界全体を巻き込んだような大きなうねりが起きる予感もはらませ、そろそろ物語の終わりが見えてくる地点でしょうか?
hReview by ゆーいち , 2009/08/23
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