されど罪人は竜と踊る〈7〉~Go to Kill the Love Story~

stars 過去は分からない。変えられない。そしてたぶん償えない。誰も他人を許せないから。だけど、あなたはなりたい自分を選ぶことができる。許されずとも、許しを請うことだけはできる。守られ愛される少女になることも、他になにかになることもできる。

〈長命竜〉と咒式士たちに追われる謎の少女アナピヤを救ったガユスとギギナ。さらに咒式違反を追う武装査問官たちに狙われるなか、一行は少女の故郷を探す旅に出る。凶悪無比な賞金首の攻性咒式士たちとの追いつ追われつの逃避行は、謎が絡まりあい、辺境を焦土にする激闘へと発展していく。竜と咒式士に追われる、アナピヤに隠された秘密とは一体……?

前シリーズの最終地点ともいうべき物語がついに再演される!

あああああ……いよいよアナピヤ編が始まるのですね。そして、角川スニーカー版と、ガガガ文庫版の関係までもが物語の設定に組み込まれているとは。これ、ガガガ版から入ったひとには逆に分かりづらい気もするなあ。ヱヴァ劇場版がちょうどそんな感じがする構成だけれど、あちらがハッピーエンドに向けて展開しているのに対し、本作については誰が何をしようとも、大きな運命の流れを変えることなどできないという確定事項が、諦観にも似た賢者の語らいによって告げられるのですが。

……ということは、シリーズ史上最悪の展開といっても過言でもない、後半のエピソードも大枠は変わらないってことなのかな。愛されることを望んだ、身内のない純粋さを結晶化したようなアナピヤの身に起こる事態に、今から心が沈んでいくようです。

再読してみると、そんな後半へ向けた伏線がわりとはっきりと張られていますね。最初からベギンレイムの計画の実行と、その挫折を明言し、そして作中でガユスとギギナが出会うことになるアナピヤが、周囲の人間のある意味以上ともいえるような献身と愛情でもって生かされてきたこと、そして彼女がガユスの事務所に転がり込んできたあたりから広がっていく、彼とジヴの心の距離と亀裂。決定的な破局へ向かって転がり落ちていくふたりの関係は、本シリーズではウォルロットのエピソードが加えられたことで、さらに回避と修復が不可能になってしまったかのようですね。割れて欠けて、もはや戻らないかのようなふたりの心は、賢者の予言を覆し、再び距離を縮めることがあるのでしょうか?

バトル方面はまだまだ前哨戦の域を出ないですね。ギギナと同じドラッケンであるユラヴィカの脅威や、変態バモーゾ、謎に満ちたアインフュンフ、外道なメルツァール、そして未だ姿を見せない6人目の刺客。脅威自体はこれまでの古き巨人やら禍つ式、竜や翼将に比べて劣る印象ですが、逆にだからこそ、手段を選ばずどんなことをしても目的を果たすという、人間そのものの恐ろしさが牙を剥くことになるのでしょう。

痛いやらグロイやら救われないやらで鬱々真っ盛りな絶望の後編、繰り返される悲劇は回避できるのかできないのか。そこが最も気がかりなところですね。

hReview by ゆーいち , 2009/08/24

されど罪人は竜と踊る 7

されど罪人は竜と踊る 7 (ガガガ文庫)
浅井 ラボ
小学館 2009-08-18
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