聖剣の刀鍛冶 #7 Unrivaled

stars セシリーの仲間が、ハンニバルのおっちゃんたちがきっと戦っている。足掻いている。さあどうするのセシリー。あなたは今、何をするの。何をするべきなの。何度でも言うよ。あなたが言う地獄とか絶望とかそういうものと今も戦っている人たちがいる。だったらあなたは何をするの?

聖剣の刀鍛冶 #7 Unrivaled(書影大)

刹那、セシリーの目に飛び込んできた光景は、悪魔の群に蹂躙される独立交易都市ハウスマンだった!! 剣となったアリアを提げ、都市内へと突貫するセシリーを待ち受けるのは――!? 一方、都市の中にいたリサは突然の帝国軍の襲撃に遭い、ゼノビアと二人きりで人外の跋扈する都市内を逃げまどっていた。愉悦の笑みを浮かべて蛮行に耽るシーグフリードの深謀は果たして……?

[tegaki font=”mincho.ttf”]すべてを救う――その誓いのために![/tegaki]

いやぁ、前巻のあのとんでもない引きからどう逆転してみせるかと思ったら、これはすごい展開でしたね。絶望に倒れようとしていたセシリーは傍観者で、それを立ち直らせたのは彼女の相棒のアリアで、そして、アリアが言うように、あの場所で諦め、死を受け入れようとしていた住人たちなどいなかった、皆が皆、なすべき事をなし戦っていた、まさに総力を結集した攻防にひたすら胸を打たれます。

もともと、主人公であるセシリーは、その身の丈に合っていないような「すべてを救う」なんていう無茶な夢と信念を掲げ、これまで傷つきながら戦ってきたわけですが、その願い、セシリーの思い描いていた形とは違う、むしろそれ以上のより良き形で実現されつつあることに感動を覚えますね。騎士という使命を自らに課し、すべてを守るために戦うことを覚悟していた彼女ですが、この街で暮らすひとびとが、同じように自らを守るため、そして近しい誰かを守るため、立ち上がり立ち向かうことができたというのはまさに理想的な展開だったのではないでしょうか。

それを知ってからのセシリーの活躍もさることながら、もう一人の主人公・ルークも倒れたままではいられない。彼女の声を、活躍を、想いを受け、立ち上がれないなんて格好の悪いところを見せていられない、そんな意地にも似た対抗心がなんとも彼らしいですが、その根っこで、ルークはセシリーを、そしてセシリーはルークのことを何よりも信じ、誰よりもその力を認めているからこその共闘だったんじゃないかなあ。戦いの熱に浮かされたかのような「私の男」「俺の女」発言も、単なる男女間の恋愛感情だけでなく、これまでともに戦ってきたからこそ生まれた戦友的な熱くて泥臭い感情も含まれていそう。

そんな街一丸となった皆の活躍でなんとか陥落を免れた独立交易都市。それでも世界は否応なしに変革していくし、黒幕たるシーグフリードはその目的実現のため着実に駒を進めているよう。彼の身の異質さと、彼の目的の狂気さと、それを打倒するためにはただひたすらに強くあらねばならぬ。その強さを得るために、正しく強くなっていくために、最強を目指すというセシリーたちの純粋な想いはきっとこれから結実していくのでしょう。

ようやく訪れたひとときの安息に、ぎこちなくいちゃつくセシリーとルークの姿がほほえましくて、ああ、皆が守り抜いたのはその平穏なんだなと改めて実感させられる幕引きでした。

hReview by ゆーいち , 2009/11/15

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)〈7〉

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)〈7〉 (MF文庫J)

三浦 勇雄

メディアファクトリー 2009-09-25
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