蜜は、たくさん迷っちゃいましたよ。ほんとに全然わからなくて天秤かけまくっちゃいましたよ。誰に恋をしたんだと思いますか? 男の先輩にですか? 女の先輩にですか? どこにも存在しない架空の先輩にってことですか?
雪国と舞姫の入れ替わり生活がスタートして、はや半年。青美女学院では、次期生徒会長を決める選挙の時期に。その後に控えるのは校内舞踏会! ダンスに蜜を誘いたい一心の雪国だったが、思わぬライバルが現れて……。
[tegaki font=”crbouquet.ttf” color=”white” strokesize1=”6″ strokecolor1=”HotPink” strokesize2=”4″ strokecolor2=”LightPink”]あなたのなまえをよびたくて……[/tegaki]
お話的にはいよいよクライマックス!
混乱しまくりの入れ替わり生活も、雪国と舞姫の卒業を過ぎれば自然消滅。もともと雪国の、蜜への恋ごころが発端で始まったこの入れ替わりも、いつまでも引き延ばしてはいられない。迫るタイムリミットを前に、次期生徒会長選挙の後にある校内舞踏会を最後のチャンスとして、なけなしの勇気を振り絞って、もう一度告白に臨む!
……ここで望みは叶ってハッピーエンドで大団円、だったらどんなに良かったことか。ここにきて舞姫の男まえっぷりと気の利かせっぷりと、そして過剰気味の弟への愛情がついに空回り。彼女のおかげで雪国と蜜の間の空気が少しずつ重くなっていくわ、ここにさらに輪をかけて、蜜の心を悩ませる難問が降りかかってくるわ。簡単にふたりの恋は終わらせも、始まらせもしてもらえません。
ああ、それにしても、状況を把握している読者の視点でさえ混乱しがちだというのに、淡谷姉弟の入れ替わりを知らされた蜜のこんがらがり具合はどれほどのものか。彼女がほんとうに自分の心について悩み、大好きなひとへの想いに苦しんでいたところにダメ押しのようなネタ晴らし。蜜が自分の気持ちに自信がなくなるのも、不安に背中を押されて無茶なテストに臨もうとするのも、ただただ自分の好きなひとの名前をちゃんと呼んであげたいなんて、あたりまえだけれど切実な気持ちからだったっていうのが、もうね。
淡い恋ごころがきっかけで、ほんの軽い気持ちで始まった入れ替わりと告白の執着地点がこんな場所だというのは誰も報われていませんね。誰も彼も相手のことを思って行動して、けれど些細なすれ違いが積もり積もってたどり着いてしまった場所。ラストチャンス化に思えた舞踏会での告白に失敗してしまった両者が、もう一度チャンスを与えられる場はどんな舞台になるというのでしょうね。
そして、雪国へと想いを寄せる鳥子さんのなけなしの勇気が発揮されるのは、あまりに残酷なシチュエーション。みんなが無傷で幸せを得られるなんて、甘甘な恋物語じゃなくて、誰かが誰かを選んで、そして誰かが涙を流す、そんな展開が容易に予想されるだけに、時間が待ち遠しくも、切ないです。
hReview by ゆーいち , 2009/11/23
- SH@PPLE―しゃっぷる―(7) (富士見ファンタジア文庫)
- 竹岡 葉月
- 富士見書房 2009-11-20
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