ソードアート・オンライン〈4〉 フェアリィ・ダンス

stars 飛べ――行け――行け、どこまでも! 巨樹を貫き、空を翔けて、世界の核心まで――

SAOから未だ帰還しないアスナを救うため、疑惑のVRMMO≪アルヴヘイム・オンライン≫にログインしたキリト。
その次世代飛行系ゲーム≪ALO≫は、≪魔法≫という概念、プレイヤーの反応力と判断力が勝敗を決めるアクション要素、そして≪妖精≫となって空を駆け巡る≪飛翔システム≫と、≪SAO≫に勝るとも劣らない高スペックで数多のプレイヤーを魅了していた。≪妖精≫スプリガンとなったキリトは、アスナの幽閉先──全プレイヤーの最終目的地≪世界樹≫目指し突き進む……!
道中、妖精種族≪サラマンダー≫のプレイヤーたちの策略により、絶体絶命の危機に陥るキリトだったが、≪シルフ≫の少女・リーファの助力、ナビゲートピクシー・ユイのバックアップを受け、どうにか九死に一生を得る。
そしてついにキリトは≪世界樹≫の根元までたどり着く。しかしそのとき、リーファとキリトは互いの≪秘密≫を知ってしまい……。

[tegaki font=”dfgot_p.ttc” color=”LightSeaGreen” strokecolor1=”white” strokesize1=”2″ strokecolor2=”MediumTurquoise” strokesize2=”4″]最高のエピローグを手に入れろ![/tegaki]

あー、これで4巻にわたって繰り広げられてきたキリトと『ソードアート・オンライン』というゲームの因縁に決着が付いたということなのかな。そして、それは、さらに現実世界とは別に、広がりつつあるもう一つの世界・仮想世界が、現実と同等の意味を持ち始める時代の幕開けでもあるのかと。ぼんやりと感じていた、別シリーズ『アクセル・ワールド』との世界観が地続きであるという印象も、あながち間違いじゃないのかなあとか思えてきますね。作中の未来、あるいは最後の段階とかで、そういったリンクが描かれたりするとたまりませんね!

さて、理不尽に囚われ、幽閉されてしまった想い人のアスナを救うため、『アルヴヘイム・オンライン』の中をひたすらに世界樹目指し突き進むキリト。ゲーム内で出会ったリーファが実は妹の直葉であることをいきなり突きつけられたり、現実と仮想の間で生まれた人間関係の難しさに苦悩するのはお互い様。むしろ、どちらかというと二重の意味で恋を散らせることになってしまった直葉の方がダメージは大きいですよね。キリト=和人の方は、ただただアスナを救うという使命、天命に突き動かされ、他の娘から向けられる好意にはとんと無頓着。主人公らしい鈍感スキルというよりも、もはやふたりの間に入り込む隙がないくらいの相思相愛ぶりなだけに、うっかりと彼に惹かれてしまった女の子たちは辛い思いをしてそうですね。その辺りの疼くような痛みを前面に出して描いてはいないけれど、それは物語の舞台の大半が、現実ではない別の世界であり、自分ではなく別の誰かを演じていたからこそ、なのかもしれません。

けれど、本編内のキリトが感じたように、ゲームの中での繋がりだって偽物なんかじゃない。その出会いには理由があるし、お互いを人間として接していたからこそ生まれた力、起こせた奇跡だってある。和人と直葉の、キリトとリーファの出会いから生まれた『アルヴヘイム・オンライン』最大の難関を突破する共同戦線こそ、その象徴なんでしょう。

そうしてたくさんの想いに背を押され、羽ばたき、手を伸ばした先にいたアスナ。立ちはだかる最後の敵・オベイロン。『SAO』のラスボスであったヒースクリフとは正反対の小悪党じみた仇敵ではありますが、だからこそまとわりつくようないやらしさが、情状酌量の余地なく討ち倒してよしと断言できるに足る人物でしたね。

そして、文字通りゲーム内において創造主の如き力をふるうオベイロンの、破滅の呼び水となったのは、やはり茅場というもう一人の『ソードアート・オンライン』の創造主である辺りは、前巻で感じた印象通りというか。明らかに役者としての格の違いを見せつけ、哀れな最期を遂げたオベイロンも、リアル世界の須郷も、その末路に少しの感慨も抱けないという根っからの小悪人でしたね。

そうして念願の再会を果たした和人と明日奈。1巻のラストで再会を誓ってから、ずいぶんと遠回りをした後の再会でしたね。そこから始まる現実世界での物語と、終わりを告げる『ソードアート・オンライン』での物語。これは、文句なしのハッピーエンドだ、と思ったらさらにエピローグで素敵なプレゼントが用意されていましたね。

かつて仮想世界内でキリトと絆を結んだひとたち。その繋がりは途切れず、今の和人と明日奈のそばにも変わらずにあって、そして始まるのは新しい物語。ただただ絶望と死から逃れるために戦っていた日々ではなく、純粋にゲームとして挑むことができるようになった前人未踏の浮遊城・アインクラッド。誰かと競い、あるいは手を携え、そこに挑むキリトは、かつてビーターなどと呼ばれた彼とはまったく違うよう。ひとりではなく、みんなで攻略のために戦うことを選べたキリト。過去に起きた事件のせいで受けてしまった心の傷さえも乗り越えて、もう一度、「みんなと一緒」にゲームをプレーできるようになったその先に、本当の意味で『ソードアート・オンライン』クリアがあると思いました。

世界に広がる様々な種子。そうして芽吹く新たな世界。予告を見るとそんな世界でキリトの冒険はまだまだ続くようで、これから先も楽しみですね。迷走、暴走って言葉が気になりますが(笑)

hReview by ゆーいち , 2010/04/10

ソードアート・オンライン〈4〉 フェアリィ・ダンス

ソードアート・オンライン 4 (電撃文庫 か 16-8)
川原 礫
アスキー・メディアワークス 2010-04-10
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