花×華

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stars あたしは、大切なひとの――夕くんの人生に、かがやきたい! 夕くんの映像の中に、いまを刻み込みたい! だって、一瞬しかないの。わかってる。大切な“いま”は、いつだって一瞬しかないんだから――!!

“もう一度、あなたに撮られたい”
高校二年の春休み、園端夕の許に届いた心揺さぶるラブレター。だがその手紙に記された“はな”という女の子の心当たりは二人いた。一人は身長も低く、周囲に“華さま”と慕われている愛らしいミニチュア人形のようなお嬢様、東雲華。もう一人は元気で運動神経もよく、どこか俊敏な小動物を思わせるポップでキュートな成宮花。
その二人ともが同じクラスになって、席替えでも強引に隣にやってきて、さらに夕と同じ映像研に入ってくるほど猛烈なアピールを繰り返してくる。手紙の主が気になる夕は、彼女たちをヒロインにして一緒に映画を撮り始めるのだが…。
“だぶるはな”で贈る学園ラブコメ登場。

[tegaki font=”crbouquet.ttf” color=”Violet”]二度とない“いま”をかがやかせるために[/tegaki]

いやぁ、これは良い青春もの。ラブコメとかいいながらも、そちらへの描写よりも、主人公たちが作成することになる映像作品のイメージやら、夕が見た、彼が追い続ける憧れでもある父親が作り上げた作品の描写やらに力が入っていますね。同じ作者の作品でいうと、雰囲気はともかくとして『月の盾』のような、芸術へと向かい合う、崇高さ、もしかしたらたったひとりでそれと対峙しなければならないという孤高さ、孤独さを感じたりしました。

突然受け取ったラブレター。呼び出された場所に現れたふたりの女の子から――同じ“はな”という名を持つ――告白されて大きく変わっていく夕の生活。片時も離れたがらない二人の娘から言い寄られつつ、ふたりが夕の何に惹かれたかといえば、彼が切り取った映像の中、かがやいている自分の姿を見たから。そんな言葉をきっかけに、くすぶっていた映像作品を作り上げるという自分の夢へと、再び向かっていく夕の姿もまた恋の行方と同時に見るべき点だというのは間違いないと思いますね。むしろ、個人的には、彼が切り取る世界の美しさを、様々なかたちで見せてくれる描写に魅力を感じたりしますので、そういう部分をもっともっと見てみたいなあと思ったりもしました。

一人の男の子を巡って恋のさや当てをそこかしこで繰り広げる、花と華。時々、息がぴったり合うような奇妙な連携を見せたりと、名前が共通する以上に、どこか似通っているところがあるなあと思ったら、案の定……。ちょっと、簡単には片付けられないようなヘヴィな過去でつながっているふたり。その過去と、夕自身も無関係ではなかったりと、なにやらこの辺も因縁めいていますが、この人間関係は過去の事実を知って、それを踏まえて三人がどういう選択を採るのかを描こうとしているように思えますね。

夕がどちらの少女を選ぶのか、その答えはまだ見えないけれど、かがやく次官を手に入れた三人が、後悔もなく、きらきらとかがやく一瞬を積み上げて、大切なものを手に入れられることを願ってやみません。物語が、まだ、続くといいなあ。

hReview by ゆーいち , 2010/04/19

花×華

花×華 (電撃文庫)
岩田 洋季
アスキーメディアワークス 2010-03
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