緋弾のアリア〈6〉 絶対半径2051

stars もう、私は――いいのです。自分に、初めて、想いを生じさせた人……あなたと共に、食事をした。あなたと共に旅をし、服を買ってもらった。僅かな時間でしたが、その間も……私は、表現することはできなかったけれど……あれも、きっと感情……私は……嬉しかったのです……あなたと過ごした最後の2週間は、良い、日々だったのです……。

東京武偵高校、そこは武力を行使する探偵――通称『武偵』を育成する特殊な学校。強襲科の超エリートでSランクの最強武偵・アリアのパートナーに選ばれてしまった(普段は)ただの一般人・遠山キンジに、Sランクの天才狙撃手・レキが勝負を挑んできた。圧倒的な力の差を見せつけてキンジを打ち負かしたレキは、キンジと一緒に暮らすことを強引に決めてしまう。一方、パートナーを取られたアリアとキンジの間には壁が生じてしまい……。そしてチーム編成を決めるための『修学旅行Ⅰ(キャラバン・ワン)』が始まる。はたしてレキの真意は――!? 大スケールアクション&ラブコメディー第6弾!!

[tegaki font="mincho.ttf"]新たなるパートナー? そして、新たなる敵!?[/tegaki]

本格的に第2章の始まり? 前巻ラストのレキからの衝撃的な口づけから一転、その情熱は殺意にも似て。キンジを手に入れるためには、狙撃銃による実力行使も辞さないという、アリアにも負けず劣らずなアグレッシブさは、これまでの寡黙にして沈着と思えたレキのイメージを一変させてくれました。私の射程は2051mまであるぞ!

とはいえ、彼女が何をもってキンジをパートナーに、もとい、自分の「所有者」として定めたのかが終わってみてもちんぷんかんぷん。彼女が聞く風の声とやらの正体もはっきりとはつかめず、ただただ、彼女の出自と育った環境、家族・一族・血縁の特殊性などなどが断片的に語られて、レキという少女の不可思議さをさらに際立たせていたような思います。

望まぬままレキとの共同生活を強いられたキンジもフラストレーションたまってる感じがするなあ。そのがんじがらめの状態から脱出するためにも、レキと親密にならなければならないとはいえ、つかみ所のない彼女の対応にむしろ振り回されうんざりしているような場面もちらほら。それは、単に、レキという少女との関係が彼にとって予期せず、強引に築かれたものだけというわけでもなく、彼の元から去っていこうとするアリアとの間のわだかまりが、心の底に凝っているからでもあるように思いますね。唐突に現れた襲撃者・ココのインパクトよりも、キンジとアリア、レキの三角関係のこじれの方にはらはらさせられたり。

それでも、キンジの作戦は、ゆっくりながらも奏功して、無表情・無感情だったレキの心にも、なにがしかのものを生み出していたよう。それは、未だ形の定まらない愛情未満の気持ちかもしれないし、あるいはレキがキンジに語ってみせた、彼自身が持つカリスマ性によるものかもしれませんね。やはり、ここはロマンと夢を追いかけて、前者をプッシュしたいところですが、その未来をつかむためにも、まずは生きて明日を迎えなければいけませんな。

狙撃戦という描写的には忍耐が要求されるような地味な戦いなせいか、敵のすごさがこれまでの派手な戦闘とは違って、伝わりにくい部分はありましたが、これまでの強敵の強さを兼ね備えたかのような存在であるココが登場したことで、これからの戦いの方向性が見えてきたような気がしますね。超能力がものを言ったこれまでの戦いから、人間としての強さが局面を変えうる戦いへと変わる予感。それは、前巻でシャーロックが語った緋弾の特性によるものなのか、あるいは運命という大きなうねりが巻き起こす世界の変化なのか。

レキの身の上もそうだけれど、ココのご先祖のこととかも考えると、これからの舞台がお隣の大陸に移りそうな雰囲気。果たして……?

hReview by ゆーいち , 2010/05/02

緋弾のアリアVI 絶対半径2051

緋弾のアリアVI 絶対半径(キリングレンジ)2051 (MF文庫J)
赤松中学
メディアファクトリー 2010-04-21