迷い猫オーバーラン!〈8〉I’ll let you adopt me!

2010年5月5日

starsどうにもならないことがあるとね。人間は、考えるのをやめちゃうの。希望を持つと、つらいでしょう? 思い通りにならないってわかってるのに頑張るの、大変だもん。今、この国はそんなふうになっているの。『助ける』っていうのは、たぶんそういうのとは、違うんだ。気がついてしまったら、そのまま放っておくことはできないの。

新入部員に十和野心と柴田仁を加え、更なる飛躍を目指す迷い猫同好会は、子猫を拾ったり、コミケに向けて同人誌を作ったりと意気あがる日々を送っていた。そんな中、いつものように人助けに出かけた乙女が、突然行方不明になってしまう。しかもそこは本物の紛争地帯だったのだ。心配で仕方ない巧は、ついにある決断をする。しかし、それは更なる事件への序曲となるのだった。中東の小国を舞台に、巧は、千世は、乙女は奇跡を起こせるのか?文乃たちの気持ちは届くのか?風雲急を告げるハイテンションラブコメ、激動の第八巻。

絆は、つながっている

夏休みの様々なイベントで盛り上がろうとテンションを上げているさなか、迷い猫同好会に衝撃走る! 乙女さんが紛争地帯の某国で行方不明に。かつてない状況に、巧は姉を捜すため、海を渡る!

作者曰く『劇場版』だそうで、確かに本編とは微妙にノリの違うオールスターによる壮大なストーリー。だいたいなんで今回の表紙がクリスなのかといったら一応彼にも見せ場があったりと、いや、お話の都合的な部分もあるのかなあと思いつつ、こういう展開は嫌いじゃないですよ。

とはいえ、さすがに乙女さんの活躍の仕方はもはや個人レベルを超越してるなあ。ここまでくると現実味云々以前に、笑いがこみ上げてきますね。彼女の使命感の根底にあるのは本当の意味で困っている誰かを助けたいという純粋な善意からなんだろうけれど、やっぱり、自分にとって一番大事な家族にこれだけ不安と心配を抱かせるというのは、年長者としては怒られてもしかたないような。彼女弟である巧の成長が、巧自身が思っている以上にめざましいからこその、無言の信頼の証なんでしょうけれど。

女の子たちは、そんな成長した巧にそれぞれの形で想いを預けて送り出す。どれだけ言っても足りないくらいに彼のことを心配しているのに、彼のことをよく知っている自分たちだからこそ、止めるわけにはいかない、止めることなどできない、それを十分以上に確信してしまってるから、もうね、あの文乃さえもしおらしくなってしまうじゃないですか。

そして、そんな中で予想外の行動力を見せた千世の活躍は、彼女なくしては成功がなかっただろうくらいに大きなものでしたが。今までは同好会の長として、メンバーを好きに使っていた彼女ですが、今回は自ら、巧のために、自分の意志で行動を起こす。作中でメイドさんたちが言っていたように、1年という時間で一番精神的に成長したのは、もしかしたら千世なのかもしれませんね。自分に与えられた能力と資質を如才なく発揮して大きな役割を果たしました。巧の役に立ちたいという一心、それだけでは片付けられないくらいに良い仕事をしてくれましたね。基本的にはいつも通りの彼女なんですが、ふたりっきりの道中といつも以上の近い距離にテンパって赤面しまくりな様もかわいかったですしね。そして、危険な道を行くことになった巧にかけたおまじない。ずるいくらいの不意打ちですが、これが千世の精一杯の背伸びだったんでしょうね。

そんな騒動の結末は、やっぱりこの作品らしい、ひとびとの繋がりから生み出される奇跡という、この規模の事件の収束のさせ方としては、非常に都合が良すぎるんですが、基本的にこのお話は、こういう道理がどうとか云々の前に、家族の繋がり、ひととひととの繋がりは、諦めなければ奇跡だって起こしてみせるっていう強い想いで作られてる感じがするんで、らしいといえばらしいんでしょうね。

一歩遅れていた千世も今回の旅で巧との距離を、文乃や希と同じくらいまで縮めて、これでようやくみんな同条件の恋愛バトル。でも、心だって巧への気持ちを我慢することはなさそうだし、もしかしたらさらにこんがらがるのかも。イケメン部員の柴田も過去に巧や文乃と縁があったようだし、四角関係どころか五角、六角関係に発展していっても不思議じゃないですね。

hReview by ゆーいち , 2010/05/05