でも、俺は別に嫌じゃない。俺は一般人で、お前らは変だけど、俺は別にお前らが怖かったりお前らに苛々したりお前らのせいで苦しんだりしない。
浩介の目の前でいきなりスカートの裾をぎりぎりまで捲り上げる、ちょっと不思議な女の子・
水瀬葉月が贈るフェチ系美少女学園ストーリー、第2弾。
[tegaki font=”crbouquet.ttf” color=”Magenta” size=”32″]ギリギリのカ・イ・カ・ン!?[/tegaki]
ちょっとアレなフェティシズムを満たしたい衝動に駆られる連中を、治療しちゃうぞ! な医術部に居着いてしまった浩介の非日常第2弾。今回は、入院していた部員・終が登場して、さらにハーレム化が進んだような……? 前巻で浩介を気に入ったっぽい伊万里さんや素敵に加えて、今回は空も浩介との接触回数は多めですねえ。空と呼吸を重ねるシーンとかはぇちくて大変うはうはでございます。というか、この作品、日常シーンは割とそういうサービス的なシーンが多いですよね。伊万里さんも、自分の性癖を全開にしているところとか色っぽいったらありゃあしないですよ!
そして、終にしても、限界ギリギリを攻めるのがお好きな性分とか、男にとっちゃあ生殺しもいいところな感じで、チラリズムを駆使して悦に入ってる、これまた難儀な性癖の持ち主。何かにつけてきゅーぷるぷるする小動物的なかわいさはあるけれども、これは確かに、周囲の人間は気が気ではないでしょうな!?
そんな終と、彼女の親友として登場する仁央を中心に、回転する物語。仁央の症候群の治療を行っていく過程で、予期していなかった別の感染者が現れて……。相変わらず、コメディな場面と、そこから反転して転げ落ちていくブラックな場面とのギャップの差が激しいですね。日常を、症候群という異能をはらんでいたとしても、罹患者たちはそれを意識せずに、あるいはそれさえもポジティブに捉えて過ごしているのに、ある一線を越えてしまうと、もう戻れないくらいの陰惨さでもって、その本質でもって牙を剥いてくるという二面性。
素敵をはじめとして、医術部の面々は、それを知っているからこそ、症候群を放置することなく、文字通りに身を削る素敵の治療に望みを託しているのですよね。一般人にして、素敵を救う可能性を唯一持っている浩介も、それを重々承知させられたのに、今回も彼は大事な場面で伸ばした手が届かなかったような。終と仁央という正反対な印象を持つふたりが、どうして親友となり得たのか、その真相が明かされるくだりは、ああ、もう、趣味が悪いなあとか思いつつも、これがこの物語の本質であるのだろうなとも思ったり。症候群に罹ってしまった者が、まっとうな人間関係を築くのがどれだけ難しいのか、それは終が仁央に依存してしまった構図から見ても容易に想像できるし、だからこそ二人の関係の結末は後味が悪くて、浩介ならずとも心を痛めてしまうのでしょうね。
それでも、浩介は素敵のような感染者を治療する能力なんてなくて。ただただ、彼はその、当たり前に感じる自分の気持ちのままに、彼女たちの心に触れていきます。見た目の傷はきれいに癒えて消えたとしても、心には消えない傷が残される。それを癒すことは簡単ではなくて、それでも、浩介は血を流している傷口に触れてくる。損得勘定抜きで、自分が、触れる相手と、友人になりたいと思う、その一心で。そんな後先考えない無鉄砲さは、ことの重大性を理解しきっていないからなのか、それとも、それを知ってなお、普通であり続けようという彼の本質によるものなのか。なんら特殊な能力なんてないけれど、普通でなくなってしまった医術部の面々にとって、だからこそ普通の塊でありそうな浩介は、貴重な存在となりつつあるのかもしれませんね。
エピローグでは、浩介もようやく素敵たちと馴染み始めたのかなあなんて、ほのぼのなシーンが展開して、それまでの鬱々とした重さを軽く消し飛ばしてくれましたね。素敵自身の身を蝕んでいる症候群は、少しずつその事態の深刻さを現し始めているけれど、一方の浩介もまだ名状できない気持ちが、その内側に生まれ始めているみたい。それが一時の気の迷いか、重篤な症状をはらんだ病気へと発展するのか、どっちに転ぶかは目に見えていますが、彼を診る素敵は、浩介の症状を何と判断するのでしょうね?
hReview by ゆーいち , 2010/09/23
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