生徒会の九重―碧陽学園生徒会議事録〈9〉

stars そう、お前は特別だぜ。なんせ……ぐったりと本気で落ち込んだ人間に対して、なんの良心の呵責もなく素直に『殴りたい』と思えるのは、お前が相手の時だけだからな

ようこそ、私立碧陽学園生徒会室へ! 美少女役員四人+おまけ一人、生徒諸君のため――突然ですが、ここで中継を繋ぎます!
第801回ヘキヨウカップ、各馬一斉にスタート。先頭はヒンニューステータスとネッケツタロー。ヒンニューは常に本命視されながらやる気に欠ける状態、ネッケツはここに来て急躍進、新たな本命馬と名高いです! 様子を窺うように二頭の後に続くのはドエスノホマレ。実力はNo.1と言われながらここ一番に弱い! 最後に大きく遅れてビーエルラバー。以前他を圧倒する力を見せて以降、不振が続いています! 最後まで目が離せない展開になってきました! おっと、ここで飛び出したのは――中を読んでご確認ください。

まだ卒業式が始まらないという、引き延ばし戦略に見事にハマっているような気もしますが第9巻。10巻で終わらせるための引き延ばしだったら残念だなあとそんな気もしてしまいますね。

さすがにネタ的には息切れが深刻になってきたのか、本編(?)でも生徒会室以外を舞台にして外伝とあんまり変わらないんじゃね的なエピソードもあったりしましたが、エクストラエピソードのバレンタイン話は乙女ちっく成分が過剰摂取できそうなくらいに甘々なお話で砂を吐きかけましたよ。くそう、爆発してしまえばいいのに。

というか、今回の本作のあらすじって、このエピソードのことしか言ってないんじゃあ……? 個人的には深夏がヒロインヒロインしていて鍵との距離が一番近いんじゃないかなと思っていたんですが、ここにきて、再び影の薄かった(笑)妹キャラの真冬もベッタベタだけれど、だからこそ威力のあるイベントを起こして好感度急上昇? いや、主人公の中では誰も彼も等しく愛すなんて大言壮語しちゃってるだけに、鍵の側からの態度が変わることはなんだろうけれど、ヒロインたちの信条としては、やっぱり誰が一番、鍵の近くにいることができるかってのは意外に重要なんじゃないのかなあ?

考えてみれば、卒業式の先には、鍵と、生徒会の女の子たちとの物理的な距離は一気に離れてしまうわけで。そうすると、今まさに必死に学園に向かって疾走している彼の心の中で、最後の別れをどんな形で乗り越えていこうというか、その具体的な方法が気になってきますね。誰も不幸にさせないなんて夢物語を実現しようとしてるくらいの大馬鹿主人公気質の彼ですから、トンデモで、だけれど、このお話ならではの笑える結末を見せてくれると思えますが。

あと、くりむの過去話は、ちょっとした泣ける話で終わるかと思ったら、とんでもなくひどい話だったよ!? これまでのヒロインたちの過去話の中でも群を抜いてひどいと思います。主に友達に裏切られたくりむ的に(笑) あの、悲しくも辛い出来事を経て、培われた彼女のある意味変なパーソナリティが、この生徒会という空間でいかんなく花開き、笑顔を振りまく結果につながったというのは、なんというか結果オーライではありますが、だからこそ、このお話の締めもまた、そんな結果オーライで終わってくれると、ゆるい希望的観測を抱くこともできるのです。

さてさて、ラストエピソードの卒業式、どんな泣き笑いの絵を描いてくれるのか、期待して待ちたいです。

hReview by ゆーいち , 2010/11/07