この胸の震えは、まだ止まらなくて、泣けと身体に叫んでいる。でも、どうしてもわからない……どうやって泣けばいいのか。
[tegaki size=”36″]奪われた魂を取りもどせ![/tegaki]
前作、ロゥド・オブ・デュラハンが、ダークファンタジーとしてかなり救いのない展開をしていたのに比べると、本作は比較的明るい、というか文字通りライトな展開の物語でしたね。さすがに、2作続けてどうしようもなく気が重くなるお話持ってこられるときつい部分はありますので、紫藤ケイという作者がどんな作風をしているのか、お手並み拝見といった第2弾でしょうか。来月発売の第3弾はさらにノリが軽くなるようで。レーベル的には受けた作品を土台にして今後の展開を見据えていこうという思惑でしょうか? まぁ、そういう方針と、作者が書きたいものがかみ合わないと悲しいことにもなりかねないので、我が道を行ってほしいところでもありますが。
さて、本作。前作に比べると薄い。ページ数が足りなくてもしっかりと話を広げてくれれば良い感じなんですが、前作でも感じた物語終盤でやや展開が駆け足になるという印象を今回も感じましたね。ページ数が少ない分、キャラクターを掘り下げていくスペースは限られているのですが、この物語では主人公であるクオンの物語と、〈権能兵〉であるクアディカの物語が交わっていく構成なだけに特に最終章の第3章に入ってから、話の展開が性急だなあと感じるのと同時に、没入しきれなかった感があります。
クオンの性格とかが微妙に合わなかったというのが原因かなあと思うんですが、また同時にクアディカが無感情なキャラというのが難儀ですよね。彼女にまったく感情移入できないわけですから、他者が彼女を見て抱く感情経由でいろいろ感じなければいけないのでハードル高いです。多分、作中に登場する〈権能兵〉を見る一般市民とかも同じような気持ちなんだろうなと思いつつ読んでいたわけで。
クアディカの生い立ちとか境遇とか、ここに至るまでに経てきた出来事とか、さすがにヘヴィな所はあるんですが、その辺をかなりあっさりと流してくれてるんで、終盤、彼女が〈権能兵〉という呪いから解放されるという感動的なはずのシーンも割と普通に受け入れられてしまったり。挿絵が良い仕事してるだけに、彼女のキャラクターをもう少し読者に共感できるようなシーンがほしかったなあなんてわがままを言いたくなってしまいます。
まぁ、設定とか世界観の部分が手堅すぎて目新しさがなかったり、敵方でオニチクショウのように言われていた帝国の高位の人たちも話が意外に分かる人だったりと、残酷な世界のはずなのに、そういう空気があまりなくて、のめり込めず残念。まだまだ話は広げられそうな感じですが、続きあったりするのかな?
hReview by ゆーいち , 2012/11/07
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