あなたのことは、怖くないわ。不思議ね……世界最強の吸血鬼のくせに。
そんな古城の前に、欧州の真祖 “忘却の戦王” の使者ディミトリエ・ヴァトラーと、彼の監視役・煌坂紗矢華が現れる。
なぜか古城に異様な興味を示すヴァトラーと、そして親友の雪菜を守るためにと古城の命をつけ狙う紗矢華。しかし彼らの到来は、絃神島の存亡をかけた巨大な陰謀の前触れに過ぎなかった──。
世界最強の吸血鬼が、常夏の人工島で繰り広げる学園アクションファンタジー、待望の第二弾!
[tegaki size=”36″ color=”OrangeRed”]つまりは、そういうことで[/tegaki]
“第四真祖”古城の覚醒とともに、きな臭さを増す絃神島。前巻でもテロリストのおかげで島全体が壊滅しそうな目に遭ったというのに、またしてもテロリストの標的にされる魔族特区、なんてかわいそうな!
時代の変わり目に登場するのが第四真祖だというけれど、これはもう、その存在自体があらゆる均衡を崩してしまうからこそ、あらゆる勢力がその力を手に入れようと、あるいは滅ぼそうとしてやってくる、はた迷惑なトラブルの種ってことですね。今回登場したヴァトラーは、第四真祖の力そのものへの歪んだ愛情と、その周囲に巻き起こる戦いをこそ楽しもうというバトルマニアの本能のみで動いているのが厄介なところ。性別なんて関係ないとばかりに古城を「食おう」とするのもアレな感じだけど、彼は彼でその表向きのふざけた理由とは別の理由を隠して動いていたっぽい? テロリストの残党が、ヴァトラーを利用していたつもりで、実はヴァトラーの方が自分の目的のためにあらゆる状況を誘導していたっぽいのを見ると、戦い一辺倒でない厄介な側面も持っているのがうかがえますね。なし崩し的に絃神島に居座るようになったけれど、この先もいろいろなトラブルに首を突っ込んできそうな人物ですね……。
とはいえ、彼の来訪と同時に新たなヒロインも登場ってことで、そっちの方が重要かも? 雪菜と同じく獅子王機関の戦う巫女さん、“舞威媛”・煌坂紗矢華。古城を憎しみマックスの態度で接する彼女は雪菜に並々ならぬ愛情を注いでいて……ってそっちの気があるのかと思ったらそういうわけでもなく、単に免疫がないから身近な雪菜を大切に想っていたとかそんな感じ? 獅子王機関って、若い女の子しかいないとかそういう場所なのかね。お偉いさんたち、趣味に走っているなあ……吸血鬼に可愛い女の子をあてがうとか悪趣味ではあるけど、それもまた古城を中心に張り巡らされている思惑の一端にしか過ぎないんですよね。
で、その紗矢華さん。雪菜以上にちょろい感じががが。なんというか、免疫がないとか、男性を怖がっていたとかそんなのをひっくるめても、彼女男性への抵抗力が全然なくないですか? 古城にしてみたら普通のつもりで発した言葉に思いっきり揺れちゃって、可愛いったらもうね。雪菜の方を大事にしていたのに、いつのまにかそれと同じくらいの重さで自分の中に居ついてしまった古城という存在に対して、どう接すればいいのか迷っている姿は、もう恋する乙女にしか見えませんねー。分かりやすいツンデレタイプというか、すでにデレッデレな感じではありますが、古城に籠絡された女の子その2って感じでこれまた雪菜の頭を悩ませる存在になりそうですねー。
そして、前巻では損な役回りで苦戦続きだった浅葱さんも、今回は恋にバトルに大活躍。戦闘という意味では最前線に立つことはできないけれど、こと情報戦では並ぶものなしな無双状態。古城の周囲の人たちって、まともな一般人いないなあ……親友の矢瀬も普通じゃない能力を見せてくれたしね。そんな矢瀬にあることないこと吹き込まれながらも、なんとか古城にアプローチしようとしてる浅葱もかわいいですね。見知らぬライバルたちに気圧されてばかりだったのは、やっぱり彼女らしくなかったのか。今回の騒動を契機に、彼女もこの大きな流れに巻き込まれてしまった感がありますね。覚悟を決めて、いろいろな意味で古城と向き合うことを決意した彼女のエピローグでの宣戦布告は、見ていて気持ちがよかったですね。血を吸われているという部分で、まだ後塵を拝している浅葱ですが、これは次のターゲットは彼女だったりるのかな?
一気にいろんな嫁候補が登場して、押されっぱなしなのは雪菜さん。古城が他の女の子と一緒にいたりするだけで、拗ねてしまう慎ましいながらもしっかりと嫉妬して独占欲を見せてくれるのが可愛い。普段は割と落ち着いているのに、こういうことになるとわたわたしてテンパるところも可愛い。紗矢華と古城が一緒に戦っているところに割り込んで、この戦いは古城と自分のものだとさりげなく主張するところも可愛い。自分を可愛いって言ってくれたことを嬉しく思っていて、他の女の子の血を吸ったことを知って怒るところも可愛い。浅葱の宣戦布告の後、興奮して思わず鼻血を吹き上げてしまった古城を見て拗ねて「ばか」と言うのも可愛い。ってことで、彼女の古城絡みの態度が可愛くて生きているのが辛い(笑) いやぁ、餌としてあてがわれている生け贄扱いですけど、幸せになってほしいですよ、彼女には。
舞台に役者が続々と上がり、どんどんお話の規模が大きくなっていくけれど、第四真祖を巡る人間側と魔族側の綱の引っ張り合いはまだまだ静かなものなのかな。これが表だって動き始めるとそれこそ世界規模の騒乱になりそうだけれど、個人的にはそれはそれとして、このラブコメ時空も同時に楽しみたいなんて欲張りなことを思ってしまうのでした。
hReview by ゆーいち , 2012/11/29
- ストライク・ザ・ブラッド 2 戦王の使者 (電撃文庫 み 3-31)
- 三雲 岳斗 マニャ子
- アスキー・メディアワークス 2011-09-10
コメント