オレを二つ名で呼ばないで! 〈2〉

stars あきらめる? 冗談言うな。オレたちは最後まで諦めないぜ。

オレを二つ名で呼ばないで! 〈2〉 書影大

黄金杯での活躍から、様々な部活動に勧誘された新たちだが、しっくりくる部活動がなかったため、二つ名研究会“ツナ研”を作ることに。
部室を欲するツナ研のメンバーたちは〈部活動対抗戦クラブ・スクランブル〉という団体戦の大会に出場することになるのだが、その大会前に、剣術使いによるバトル大会〈斬雨杯〉に参加予定の女剣士・静華がなぜか沈みがちになり……。
第3回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞の学園異能力アクション第2弾登場!

前巻で微妙な二つ名に加えて、余りに不名誉な二つ名も授かり晴れて(?)《二つ星セカンド》となった主人公・新。学園生活も順風満帆で、自分に与えられた特殊能力《噛ませ犬》で他者の能力を開花させるアラタ道場なんてのも開いてみたり。

この主人公、根っからの善人だなあと思わされてしまいますね。他人からの依頼は基本的にほいほい受けて、そのせいで本来なら起こさなくても良いはずの能力中毒なんてのにもかかってしまうし。けれど、それを気にした風もなく、大事な場面になれば後先考えずに無理を通してしまうし。こりゃあ、周りの人間が気にかけてしまうのも仕方がないといったものです。

そのおかげか、彼を中心に発足した二つ名研究部=“ツナ研”には、彼を慕うメンバーが続々と集まってくるんでしょうね。正妻の座にすでに納まってそうな瑞帆や、何気にフラグ立ちまくりの美美や静華、他の生徒も巻き込んで、なんとも楽しげな部活じゃあないですか。

ラブコメにありがちな新ハーレム結成か? なんて思っていたらしっかりと男友達も巻き込むし、当の新本人が恋愛ごとよりも他のことを優先するような性格のせいかラブな雰囲気があんまりないのが、この作品の珍しいところかも。学園を舞台にしたお話なのに、そういういちゃいちゃよりも手を変え品を変え次々に巻き起こるイベントバトルをどうやって攻略していくか、そっちの方に重きが置かれているような印象を受けますね。まぁ、バトルの方も能力を活用しまくった頭脳バトルというよりも、必殺技の打ち合いに近いところがあるので、頭を悩ませずいろいろな能力が炸裂する様を気楽に楽しめます。その分、手に汗握るぎりぎりの戦いというのとは毛色が違う風ではありますが、そもそも命をかけた戦いでもないわけで、部活動の練習試合然としたところがあるのも、ある意味では当然なのかも知れませんね。

前半は、新と静華の剣術バトルに花が咲いたかと思えば、後半は部活対抗の超次元サッカー(笑) 気が付いたらイナズマイレブンだとかキャプ翼だとか、そんな超人サッカーの世界に足を踏み入れていた、何が何だか分からない(ry いや、パロディなのはわかるんですが、そのまんまな必殺シュートとかどうなんでしょうか。でも、ツインシュートとか通じない人もいるのか……? まぁ、そんないい年した人間には苦笑してしまうシーンはともかく、前巻で悪役として描かれてた郷田や玉田にもしっかり見せ場を用意してくれるのは、キャラを大事にしてるなあと思いますね。新自信が、男子も女子も、かつての敵も味方も変わらず友人になろうと手を伸ばすような好漢だというのがよく分かる展開。彼の長所は能力を活かす場面をしっかりと用意して、成長させてくれるというのと同時に、誰とでも友人になれるような、気持ちの良い性格をしているということなんですよね。

その微妙な二つ名を持ってるが故に、愛されるいじられキャラとしての立場を確固たるものとしつつある主人公ですが、その順風たる学園生活の舞台裏では何やらきな臭い動きが? 同じように二つ名システムを採用している学校との合同イベントの予兆。生徒会長にして、前巻でも敵か味方か微妙な立ち位置で新の前に現れた生徒会長も、決して全面的に信用できる人物ではなさそうだということを再確認。もっとも、この特殊すぎる能力を扱う場所が用意されている時点で何らかの思惑が働いているんでしょうけれど、それを肯定的に受け止めるか、疑ってかかるか、その性格が顕著に出ている描かれ方ですよね。

決して万能ではなく、けれど、ある意味では誰もが主人公になれるような能力を授けてくれる二つ名システム。唐突に設定が増えた気がしますが、それがどんな風に物語に関わってくるのか、あんまりシリアスに走りすぎない程度に、深みを増していくと寄り楽しくなりそうな感じですね。

hReview by ゆーいち , 2013/01/19