じゃあ、じゃあさ……。あんたは、あたしがそれを為し得たら……そしたら、あたしの信者になる?
加藤の髪型チェンジにより、混乱するサークルの面々。だがその裏で英梨々が引き抜き!? 秘めた想いを胸に、
[tegaki font=”crbouquet.ttf” size=”36″ color=”LightCoral”]面倒な幼なじみとの仲直りかた[/tegaki]
あー、こりゃ面倒な娘だわ。英梨々さん。
前巻での衝撃的な一夜を超えて、サークルがどうなるかは気になるところでしたが、男女関係のもつれから空中分解の危機を迎えるかと思いきや、問題になるのは加藤さんの髪型チェンジの方だったとは。いや、いいじゃないですか、ヒロインが途中で髪型変えるイベント。かの名作でもメインヒロインが髪型を変えたときのインパクトと言ったらもうね浩之ちゃーん。この辺のネタを拾ってくるあたり、さすが丸戸! 狙っている年代が明らかにラノベの主要年代層から大幅に上にずれている!
そんな感じでドタバタで始まる第3巻。夏コミ直前で、ゲーム制作はどうなるかと思ったらターゲットは冬コミだったのね。夏コミでは英梨々が自前のサークルで参加したり、いきなり表紙を飾った新キャラ=後輩の出海ちゃんとのエピソードがあったりと、別の意味でディープな感じの一冊でしたね。あとがきでも書かれていましたが、島中サークルで参加した経験があったりすると、この辺の描写だったりサークル参加者の心情だったりがリアルすぎて突き刺さってくるんですががが! 自分よりずっと上の実力を持つ人を羨んだりねたんだり、逆の自分の力のなさに嘆いたり絶望したり苦しんだり。前巻でもそうでしたがものをつくるという、それにかけるエネルギーは本気になればなるほど中途半端ではすまされないってことがよく分かりますね。個人的にも共感できるような内容なだけに痛いわ切ないわ、そして数少ないファンとの交流を大切に感じたりするキャラクターの心情にほんわかするわで、本編の進行とは別の場所で妙に琴線を揺さぶられることしきりです。実際にイベント参加したりしてる歴戦の作家が書くと、酸いも甘いもかみ分けた描写が冴え渡って痛気持ちいい!?
まぁ、それはそれとして、今回は英梨々ルートですね。まだ共通ルートのままですが、必須イベントをいくつかこなしたようですよ? 自信満々の実力者として振る舞っていた彼女ですが、その実、かなりの努力型だったんですね。そして、主人公の倫也との過去のエピソードもついに明らかに。って、すげー長い年月引きずってるし、思えば些細なきっかけで疎遠になったように思えますが、それを7年引きずるとは、倫也にとっても英梨々にとっても決して軽々しい思い出ではないってことなんですよね。そして、それが自分たちの根幹に関わる部分だっただけに、おいそれと自分から折れるわけにはいかない。お互いがお互いを必要として、欲しているのに自分からは謝ってやらないなんて子供の頃の気持ちをそのまま持ち続けて今になったんだなあ。幼なじみという関係は、そんな過去の苦い思い出も共有してしまうだけに、こじれると積み重ねた時間の重みの分、リカバリーが大変だわ。そして、英梨々、お前さんも倫也のだだ甘えの状態じゃないか。そりゃあ、自分が一番評価をしてほしい相手が、ふらふらと黒髪美少女先輩な作家さんに流れたり、いきなり登場して再開した後輩幼なじみの才能に惚れ込んだりしたら気が気じゃないでしょうね。この依存しっぷりはかなり危ういようにも思えますが、自分がどれだけ実績を積み重ねてきても、たった一人、倫也の評価が得られないために悶々としてたと思うと、彼女も報われてないなあ。
そして、倫也は今回も容赦ない。創作者としてのスキルはなくてもプロデューサースキルが唸りを上げる。容赦ないダメ出しと突き放し。もう、終盤の仲直りのために用意した場面が子供のケンカにしか見えない件について。その儀式が二人の時間の埋め合わせの第一歩で必要だったのだとしても、これから先、本当の和解への道行きはまだまだ険しそうだなあ。実力はありながらも、超一流にはなりきれていない英梨々。そんな彼女に何とかして一番になってみせろとは、倫也も無茶をいうものですが、それを伏して涙するのではなく、不敵に笑い勝負を挑むのはなるほど、彼女らしい宣言の仕方ですね。雨降って地固まる展開のお約束ではありますが、なあなあで付き合ってきたサークル発足時からようやく、ふたりの間のわだかまりも少し薄れたような感じですね。
新キャラで登場した兄妹はこれからライバル的なポジションに就くのかな。後輩キャラの出海ちゃんは倫也を慕う典型的なキャラ付けかと思ったら、他の女の子にはライバル心を燃やす意外な一面も。それこそ創作というフィールドに立つ英梨々の宣戦布告に、歯ぎしりして見せたりとけっこう好戦的? 再登場時には性格変わってたりしないでしょうね……? そして、兄の伊織はこれまた妙に生々しいキャラ立てが。同人ゴロのエッセンスを煮詰めたかのような好きで創作活動をしている側からしたらご遠慮願いたいタイプのキャラ? 冬コミでの対決を狙ってたりする超大手代表の座にある彼が、果たして正攻法で来るのかそれとも搦め手から来るのか気になるところ。でもなんだかんだで倫也の頼みを聞いたりして、親友設定も残ってそうなところがある、意外にいい奴なポジションにあるのかも?
メインヒロインの加藤さん、なんだか刺々しい発言が見られましたが、この異空間に慣れてきた証拠なんでしょうか。倫也と恋仲になる気配を感じさせないようでいて、時々、あれ? みたいな反応を見せて、そういうキャラ立てなんだーとか思ってきましたが果たして。でも、恋人でもない男の家に当たり前のようにお泊まりセット持参で、風呂までいただくとか、別の方向でキャラ立っていると思いますけどね(笑)
サークル名も決まり、目指すは冬コミ、ゲーム制作。次巻以降修羅場は加速する!?
hReview by ゆーいち , 2013/03/19
- 冴えない彼女の育てかた 3 (富士見ファンタジア文庫)
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冴えない彼女の育てかた 3巻 レビュー
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