デート・ア・ライブ〈3〉 狂三キラー

stars ――でも悪いが、もう決めた。おまえは、俺が救う。何をしようと、絶体に。

デート・ア・ライブ〈3〉 狂三キラー 書影大

六月五日。士道の通う高校に災厄は突然やって来た。
「わたくし、精霊ですのよ」
転校生の少女、狂三の衝撃的な自己紹介。校内を案内することになった士道に、少女は微笑を浮かべささやく。
「士道さんにお願いがありますの。……聞いてくださいまして?」
世界を殺す災厄を体現するかのように己の意思と、明確な殺意で、愉悦を感じながら、人を殺す最悪の精霊。
「精霊が現れやがったんです。ならぶっ殺す以外にすることはねーです」
そして、その精霊を殺す少女、真那。人を殺す少女と精霊を殺す少女。悪夢を断ち切るため、デートして、デレさせろ!?

精霊は何も知らず破壊をまき散らしている存在。そう思っていた時期が私にもありました。

いや、考えてしかるべき事項でしょうね、これは。「明確に人間と敵対し、殺戮を楽しむ精霊が存在する」ということは。

士道は、そもそも最初にデレさせた精霊が十香だったためか、彼女を精霊との対話のモデルケースとして設定しているフシはありますね。〈ラタトスク〉のサポートがあるとはいえ、対象は女の子。一般的な設定の範囲から大きく逸脱したキャラ設定の対象を攻略するのは、まだ先になると考えていたんでしょうか。練習用のゲームには、ヤンデレキャラは入っていなかったのかが今さらながらに気になります。

そんなわけで登場した第3の精霊・狂三。「くるみ」とは知っていなきゃなかなか読めません。どうしても「きょうぞう」になってしまいます。先生! 名は体を表すという言葉の通りに、士道たちからしてみたら狂っているような価値観の元に人間を害しまくる最悪の精霊。自分の意志で人間を殺す、その理由はまだ分からないけれど、今回、登場した理由は彼女の口からも明らかに。士道を美味しくいただくため!? 静的な意味じゃないのが残念です。

士道の、一般の人間とはかけ離れた能力を持っているし、彼の中には十香や四糸乃の力も蓄えられているせいで、精霊から見ても特異な存在であるのは確かですが、それを狙って学校に転入してくるとか作中でも語られてますが余りに社会的な後ろ盾が揃いすぎている感じ。精霊をバックアップする(ただし、その目的は平和的な感じじゃない?)人間側の組織があるのか、それとも、精霊の知的レベルは個体ごとに大きく変わるのか。まぁ、十香はいつの間にかけっこうなおバカキャラな属性も獲得していますが世間知らずというレベルで、人間社会にここまで自然に食い込めるというのはやはり異常なのではないかなと。

前巻から登場した、士道の実妹・真那も加わり、士道を巡る精霊やら妹やら同級生やらの対立がスゴいことになってきてますが、ここにきて義妹な琴里の株がぐんぐん私の中で上がってきてますよ!? うっかり口を滑らせて「実妹じゃ結婚できない」とかそんな血迷ったことを言う、真那とのやりとりのシーンはにやにやが止まりませんねえ。お兄ちゃん大好きっ子なのは表も裏も同じ感じだとは思っていましたが、司令官モードのドSさをだんだん維持できなくなってきてる感じが少しだけ年相応に見えて可愛いなあと。

まぁ、そんな長い前振りを経て、そして今までにないくらいに血なまぐさいシリアスシーンを経て、それでも士道は悪意ある敵である狂三を倒すことよりも救うことを選択する。自分の身を案じて逃げるという弱さを見せつつも、彼によって確かに救われた十香や四糸乃の存在が、少しだけ彼に自信を与えているのでしょうか。あれだけ自分の命が危険にさらされても、デレさせる! とかギャグに思えてきますが、この作品にとっては肝心要、彼が降りたらもう星黎を救う手はない、ただ人間とどちらかが倒れるまで殺し合う殺伐として世界になってしまいますからね。

でも、そうは問屋が卸さない。狂三の中にある狂気と凶気は想像を越えたもので。自分の身を人質にした決死の方法で光明が見いだせたかと思ったら、それは単に絶望へとつながる道だったという。明かされた狂三の能力はなんとも恐ろしく、そして厄介。十全な力を発揮できない十香たちの助力では、太刀打ちできない絶望感半端ない。というか、この辺ですでに次巻にお話続くんだと分かり、どういうオチが付くかと思いきや。

うえええ、そうなんですかー(棒 立て続けに登場した第4の精霊。焔を操り戦斧を振るうのは、士道の妹・琴里。五河の家族はみんなどこか超常的な能力持ち。っていうか精霊てどういうことやら。ん、焔と鳶一さんの反応、そういえばそんな過去もあったような。次巻は混戦必至!? いったい誰をデレさせればいいの!?

hReview by ゆーいち , 2013/03/30