いや、素晴らしい。新人作家のデビュー作にしてこの完成度。完成度が高いだけに、今後、このシリーズの続編を続けようとすると苦労しそうだけれど。終盤の展開が非常に好みで涙腺がやばかったです。ああ、もう、分かっててもああいう展開は琴線揺さぶりまくりなんだようっ。
「名詠式」という「名前」を「詠む」ことで召喚を行うというアイデアがナイス。作中で描写される名詠式の讃来歌の詩篇のどれもが美しい。このためにわざわざ言語体系を造語してしまうあたり、なみなみならぬ思い入れが感じられます。まぁ、発音できないので、その言葉のリズムや音を感じられないのは残念。
情景描写も負けず劣らず、巧みで色彩溢れる描写。こういうテキストが好きで好きで……。
竹岡美穂の透明感の感じられるイラストも、この作品世界の構築に一役買っていますね。ベストマッチですわ。
過去と現在の二組の少年少女の、名詠式を通して築かれた関係の対比もまた素敵ですね。約束を縁に、切ない再会を果たしたカインツとイブマリー。互いに手を取り合って歩んで行くであろうネイトとクルーエル。それぞれ女性側からローブをプレゼントして想いを遠回しに告げてみせたりと小粋。
切なくも美しい描写が光る良作。優しくて、ほろ苦い思い出と、希望を予感させる夜明けの色が映え映えとする作品でした。
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