静かに静かに訪れた 哀しくて 少しだけ救われた結末
水籐と決別した純と綾佳のもとに届いた戸塚結からの報せ。かつて水籐の運命を大きく狂わせることになった原因である仙谷が、再び京都で何かを企んでいるという。袂を分かった七倉や、水籐も訪れている、そしてかつて出会った少女・真里が住まう京都に、純と綾佳も向かう。そんな綾佳の身体にも、決して小さくない異変が現れていて……。
完結の第4巻。最後の最後まで淡々とした物語でした。その中で描かれている、望まずに人ならざるものに変えられてしまった純たちの、どうしようもない諦観とか悲しみとか、そういったものだけは嫌でも伝わってくるというのが切ないですね。
作中で一番変わってしまった水籐にしても、彼が彼であろうともがいた結果として、人の道から外れ、孤独とともに生きるという、誰とも交わらぬ道程を歩みつつも、結局は同胞である純や綾佳を見捨てることなく、彼らを行かすことを選択しました。そして純も。
誰もが大きな傷跡を受け、再び得がたいであろう大切な何かを失い、帰還した日常はけれど変わらずに流れていて。様々な思いを背負い、幸せになろうとようやく顔を上げ、歩き出すことができたという結末。皆が幸せになれるなどという優しい結末ではないけれど、皆が望んで、それをしかと受け止め背負った、たった一人の歩みは、確かな形で見ることができたと思います。
切ないながらも、美しいラストでした。
hReview by ゆーいち , 2007/07/27
- 哀しみキメラ 4 (4) (電撃文庫 ら 4-4)
- 来楽 零
- メディアワークス 2007-06
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[来楽零] 哀しみキメラⅣ…
純は人とキメラの間をさまよい、綾佳もまた体に異変を感じていたとき、京都で飛行機事故が発生した。修学旅行生が亡くなったことで話題になったが、そのせいか「モノ」が溢れている…