時間を操る道具を巡る 人間の少年と天使の少女の出会いの物語
主人公・遥海慧は自らを天使と名乗る少女・真里亜と出会う。彼女が手にした注射器のような器具はクロノグラフという時間を操る道具の一つで、リザレクターというらしい。指定した時間を巻き戻す現象を体験し、散逸してしまった残りの6つのクロノグラフ捜索のため、真理亜に協力することを決意した慧。そんな中、見つけたはずのリザレクターが何者かに盗まれるという事件まで発生して……。
不可思議な道具と人外な少女に出会ってしまった少年のお話。序盤の真理亜の癇癪具合には正直参ったなあという感じなのですが、慧や彼の友人の武臣や夕凪との交流の中で、少しずつ「人間」としての感情を得て行く過程はなかなかに微笑ましいものが。相対する形で登場したもうひとりの天使とのギャップを見ると、そこから離れ、人間に成り下がっていくという事実に対する真理亜の不安もあるだろうに、それでも手にした絆を愛おしそうにする終盤の彼女の姿は大変に美しいかなと。
タイトル通り、作品はミステリ仕立ての展開を見せますが、超常の道具が登場しながらも、それが事件のトリックに使われていないというのが意外といえば意外。
本来なら叶わぬ願望を実現しうる道具を見つけたことが事件の動機で、その動機もかなりどす黒い感じがして、人間の醜悪さを強烈に見せつけてはいますが、トンデモな謎仕掛けには走らないのかな。
今回は導入部分ということで、主立ったキャラたちの顔見せや世界観の解説が多くを占めていたように感じますが、今後は残る6つのクロノグラフ捜索に向けて、本格的に動いていくので期待できそう。
主人公も表に出さないけれども、その内面になにやら大きな黒いものを抱えているようで、それと向き合ったときにどういう行動を取るのかなどにも興味が向きますね。
hReview by ゆーいち , 2007/09/04

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(書評)ミステリクロノ
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