遠子先輩と過ごした夏の日 それは特別で忘れられない思い出のひとかけら
遠子先輩からの助けを求める電報(しかもなぜか押し花電報)を受け取った心葉は、彼女が囚われているという姫倉の別荘を訪れる。心葉を出迎える遠子先輩と、彼女を拉致監禁した諸悪の根源の麻貴先輩。そして、なぜか心葉の来訪に驚き、怯える別荘の使用人たち。かつて80年前に起きた惨劇と、妖怪の言い伝えが残る地で、今また舞台と役者が揃い踏み、再び事件の幕が上がろうとしてた。
第2巻と第3巻の間に起きた、夏休みの物語。そして、そこで心葉と遠子先輩の間に芽生えた何かは、確実にふたりの未来に影響を与えていて。
相も変わらず、透明感の溢れた文章で綴られる、もの悲しい物語。表層をなぞるだけ、そしてきっと人づてに顛末を聞いただけなら、非道く救われないと感じてしまう、それだけの物語。それを“文学少女”たる遠子先輩の想像を通し、新たな光を当てることで浮かび上がる別の真実。あくまで想像に過ぎず、けれど、きっとそうであったろうと思うに足るだけの、幸福な物語。
そして、遠子先輩の核心ともいうべき何かに、確実に近付いているという確信。作中、エピローグで未来の視点から語られた、この日々の回想は、懐かしくて暖かくて無二のもので、そしてもはやどうしようもなく取り戻すことのできない失われてしまった何かをひたすらにかき抱くかのような錯覚すらします。
着実に訪れる遠子先輩の卒業の日。前巻と今巻で遠子先輩という存在への疑問が一層深まってしまいましたが。その旅立ちと別れの日を前に、彼らに訪れるであろう最後の物語は優しいものか、悲しいものか。あるいは、その両方なのか。
hReview by ゆーいち , 2007/12/28
- “文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)
- 野村 美月 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2007-12-25
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“文学少女”と月花を孕く水妖 野村美月
文学少女シリーズも早6巻。
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【あらすじ】
『悪い人にさらわれました。着替えと宿題を持