ディスパレイト! 過去編 なんだかやたらと鬱屈した雰囲気の物語の始まり
存在するだけで世界の法則を乱れさせる異界の生物・ディスパレイト。ディスパレイトの兵器としての運用に着目したアルメダ連邦陸軍は、数多の非人道的な実験の果てに実用化させつつあった。ディスパレイトを御するための道具として運用される軍用基準性能調整児童の一人、彼らで組織された亡霊大隊に所属していたトルクは戦場での負傷を気に転属を命じられ、その先で少女テレスと出会う。
雑誌連載の物語の過去譚ということで、そっちの話を知らないからなんとも言えないですが、序盤も序盤、これからトルクとテレスの物語が動き出そうというところで続いてしまいました。説明部分が多くて、登場人物が一通り出そろったところで終わってしまったので、これから彼らの物語がどう転がっていくのか、気になりますね。
幼い頃から兵器として育てられてきたトルクの希薄な人間性が、テレスとの出会いで少しずつ変化していきます。同じ境遇の誰かに対しても感慨など抱くことがなかったのに、後半ではふとした弾みで付けてしまった傷を心配したりと、気遣いを見せてくれます。そういう微妙な変化が、作中で語られてきたトルクの過去の境遇を思うと、嬉しく思えてしまいますね。彼の変容は決して組織の中では歓迎されるものではないとはいえ、テレスが与えてくれた形ないものは、決してやすくはないものでしょうし。
そんなテレスも囚われてからの境遇は惨憺たるもので、彼女の味わった絶望の大きさは、これから癒されることがあるのかと思えるほどのもので。心を閉ざしてしまった彼女に、その原因となったトルクの心が届くのか、それも気がかりな点です。
さてさて、読むのが遅くなってしまって、調べてみたら続刊と、本編の第1巻も発売の模様。序盤を読んだところでは様子見しようと思ってしまったけど、後半の展開で先が気になってしようがなくなってしまったので、そちらも手を出してみよう。
hReview by ゆーいち , 2008/01/19
- ディスパレイト!コンプ 1 (1) (富士見ファンタジア文庫 88-35)
- 榊 一郎
- 富士見書房 2007-07
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[榊一郎] ディスパレイト!コンプ 01 昔日の双銀
人体実験を繰り返し、アルメダ連邦陸軍は、「あちら」の世界の生物、ディスパレイトの制御に成功しつつあった。そんなディスパレイトの制御に長けた人材軍用基準性能調整児童の一員…