『貴方』に問いたい。もし『それ』が真実でなかったら、『私』はどうすれば良い?
世間を騒がす猟奇殺人事件に、僕はかつての事件を思い出していた。今回の事件と同じ異常性、同じ悪夢のようなその事件の犯人は、しかし、あのとき死んだはずだった。大阪の町へ戻り、そして再会した彼女と迎えた初めての事件。再び僕たちに追いついてきたその事件から、忘れられない記憶から、逃げず向き合わなければならない。僕たちの未来を共に歩むものにするために。
物語も佳境。ついに、僕と志乃ちゃんの最後のエピソードが始まったようです。
過去から逃げ、かつて暮らした大阪の町へ逃げるようにやってきた僕が再会したのは一時でも兄妹のように生活したことのある志乃ちゃんで。そこから時間を積み重ね、少しずつお互いの距離を縮めつつあるかと思っていた矢先に起きた事件。再会してまもなく巻き込まれた事件と酷似したそれが、ふたりの生活に小さな影を落としてきます。
無関心な態度の志乃ちゃんとは逆に、今回の事件に積極的に首を突っ込んでいくような感じの僕。彼の周囲にいる、鴻池先輩や、さらにプレッシャーをかけてくる公安とか、望むと望まざるとに関わらずに、ふたりはこの事件から逃れることができなさそうな雰囲気。
今回は事件の起こりと過去の語られが大部分だったのか、ふたりの関係が大きく変わるような展開ではなかったのですが、終盤は彼らの与り知らぬところで自体が風雲急を告げていますね。一体どうなってしまうのやら。生死不明で途切れてしまった部分が、次巻でどんな風に語られるのか、怖くもあり、それ以上に気になりますね。
なんというか、これまで僕と志乃ちゃんが経てきた事件と時間を積み重ねた果てに、起こるべくして起こったかのようなこの事件。ふたりが迎える未来は、この事件を乗り越えた先にあるはずですが、それがどんな未来なのか見当が付かないですねえ。まだ十分に語られていない僕と志乃ちゃんが最初に経験した事件、そこで何かが起こっているのは確実で、そして、それが現在進行形で牙を剥いてきてる、そんな印象です。いよいよ次は完結編……? 楽しみですね。
hReview by ゆーいち , 2009/01/10
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