空ろの箱と零のマリア

2013年1月28日

stars どんな願いだって構わない。それがすべての人間を不幸にするものでも私は干渉しない。私はただ君が、君たちが、どんな願い事をするのか見たいだけなんだ。

3月2日が繰り返されている。翌日の誰かの死によって再び振り出しに戻される日常に気づいているのは僕と彼女だけだった。気が遠くなるような回数繰り返され続ける一日。彼女――音無彩矢がさがして続けている望みを叶える箱とは一体何なのか? そして、この無限に続く今日という日から抜け出すことはできるのだろうか?

ループものですね。ラノベでもよく見かけるようになってきてるテーマですが、これは面白かったですね。時系列シャッフルしつつも、その中で少しずつ劣化していく感情だったり、それでも消えない感情だったりが断片的に語られて、それが最後のシーンで見事に活きてきてますね。

個人的には『3days』な雰囲気を感じたんですが、まぁ、分かる人には分かってくれと。いや、別に誰かがひたすら惨殺されるとか……あるんだけど、あそこまでひどいわけではないですよ?

にしても、このミスリードさせまくる構成にはしてやられましたねー。誰かがループの原因となっているのは分かっていて、さらにその容疑者はかなり絞られているのに、種明かしがされるまで見事に裏切られ続けましたね。こういうのは、騙された者勝ちな部分もあると思うので、回答編ではうならせられたなあ。

そして、どう見てもバッドエンドな終わり方をしたところから続いたエピローグが思いの外のハッピーエンドで、これまた安心させられましたね。もちろん、抱えた罪と、罰の証である傷は消えないのだけれど、それでも歪められてしまった心が望ましい形でよみがえったのを見るのは、なんともほっとするものです。

新しく構築された日常に彩矢が加わり、様変わりしたような感じさえもする僕の周囲。望みを叶えるという箱とそれを望むものに渡す謎の人物、彩矢の果たされなかった目的と、物語自体はまだまだ続く余地がありますが、帯にある新シリーズの文字通りにこのお話の先があるなら、また驚きを期待して待ちたいですね。

hReview by ゆーいち , 2009/02/27

空ろの箱と零(ゼロ)のマリア

空ろの箱と零(ゼロ)のマリア (電撃文庫)
御影 瑛路
アスキーメディアワークス 2009-01-07