選ぶのは美鈴川、お前の自由だ。今までの自分でいくのか、それとも今からの自分をここで決めるのか。だけどこれだけは覚えておいてくれ。どっちを選んだって、ボクは美鈴川の傍に居るし、怖がったりもしないからな。
人見知りの激しい金髪少女、美鈴川エステルとお淑やかで誰にでも優しい女の子、黒瀬さくら。さくらが気になるクラスメイトの遼平は、ひょんなことからふたりがいつも一緒にいる理由を知ってしまう。けれど、それは遼平が遼平でなくなってしまう大事件に巻き込まれる発端でもあって……。
[tegaki]仮免魔女、応援します![/tegaki]
突然、気になる女の子自身に自分がなってしまうという美味しいトラブルに巻き込まれて、ウハウハライフを満喫できると思いきや、そうは問屋が卸さない!
いきなり魔法とかワケの分からん世界に首を(自業自得的に)突っ込んでしまった主人公・小林遼平が知ったのは、気になるあの子の一面と、そして彼女が大切にする少女の悩みだったり。
そんな魔女の卵・エステルはコンプレックスの固まり。自分に自信がなくて、やることなすこと他人の目を気にして、そのおかげで本来なら誰もがうらやむはずの自分の特徴も、譲り受けた才能も、ネガティブに捉えてしまっている難儀な娘。彼女の使い魔として、そんなエステルを見続けてきたさくらにとっては、幸か不幸か遼平が巻き込まれてしまったことは、少なくともマイナスではないと考えていたのでしょうか。
まぁ、この物語の流れのように、遼平がエステルにとって、さくらと同じようにかけがえのない存在になるまでとは想像していなかったでしょうが。この遼平、本命のさくらにはけんもほろろでまともなアタックらしいアタックしてないくせに、気のない相手のエステルには必要以上に親身になってるあたりが、本当に良いやつ。下心もあるし、この状況にうつつを抜かしたりもしていても、手の届くところで、苦しんでいる、悲しんでいる、助けを求めている誰かが居るなら助けずにはいられない。主人公体質に溢れたヤツですね。
終盤、心の折れまくったエステルに対しての遼平の接し方は、そういう意味では非常に彼のキャラクターを良く表しているよう。手をさしのべるけれど、その手を掴むか掴まないかは、相手に選ばせる。自分の善意と好意の押しつけはせず、けれど、返してくれた意志に対しては最大限の誠意で応える。当のエステルにとっては、突きつけられた選択はどちらを選んでも苦しくて、押しつぶされそうな何かを捨てることはできないのだけれど、そこに一緒になって支えてくれるという遼平の言葉があるだけで、彼女はこんなにも強くなれる。魔法少女もののお約束的なラストバトルの盛り上がりと相まって、ここの展開は熱くなりましたねえ。
そして、感動的なエピローグ……と思いきや、おい!? なんにも物語片付いてないじゃないかああ。いやいや、これはどうするんだ遼平、エステル。遼平的にはこれからさくらにアタックしやすくなった? 待て、今の身体じゃあ百合路線まっしぐらだ、だがそれも良い、てか、エステルの無茶な行動で、状況は混沌したままじゃないですか。これは是非とも続きを読みたいところ、ちゃんとした結末が付くまで続けてほしい作品ですね。
hReview by ゆーいち , 2009/05/24
- とぅ うぃっち せる! (電撃文庫)
- 一色 銀河
- アスキーメディアワークス 2009-05-10
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とぅ うぃっち せる!の感想レビュー(ライトノベル)
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