シャギードッグIII 人形の鎮魂歌~in the dark~

stars おれは……誰かの身代わりじゃない、おれ自身を、あの人に認めてもらいたいんです。死にたくはないけど……どうしてももう一度、あの人と闘っておきたいんです。

カイに挑み、惨敗した大介。気がついた場所は病院で、なぜ自分があの窮地を免れたのか理解できないでいた。そこへ届く、カイからの伝言。一ヶ月後の再戦の約束。重傷を負い、今や自分の中で刻一刻と力を増し続けるもう一つの人格データ――幽霊の存在に意識を喰らい尽くされようとする大介。そして、その事件を知った異局の亜夜は、単身、カイに挑む。まりんの間に生まれた確執、沙織の背後で蠢く影、そして何かを待つオズ、大介に残された時間は少ない。

前巻から2年くらい待たされたような。一時は発売されないんじゃないかって思ってましたが、なんとか無事に発売。……だがしかし!

[tegaki]また続いてるよ~~~!![/tegaki]

もう、内容も随分と忘れてしまってました。2巻のあの絶体絶命な状況から大介が見逃され、時間を与えられた件までの事情を理解するには、少々難儀してしまいましたね。そして、大介を中心とした物語ながら、彼の周囲の人物、オズをはじめとしてマリンや亜夜さんらの物語も同時に語られているので、その入り組んだ関係をゆっくりと咀嚼しながら読んでいきました。今回は亜夜さんの見せ場もあったりして、バトル成分はかなり豊富だったかなあ。

もっとも、大介自身は、重傷のおかげでほぼ全編、活躍の場がなかったような気もしますが。逆に、彼の中にあった恐ろしいはずの亡父の在りし日の姿だったり、大介を乗っ取ろうと、散々苦しめ続けていた亡霊との対決のあっさりとした決着だったりと、大介と、彼が彼である以前に確かに存在した過去が、自身が恐れるほどの呪われただけのものではなかったということが語られた事実の方に驚かされましたね。

まさに、オズが大介の亡霊を見て言った言葉が的を射ていたわけですね。他人に無関心だったオズが大介やまりんに関心を寄せるようになっている、その変化が語られていたり、誰もが変わっていく流れ。オズについては冒頭のバトルだったり、大介とカイの間への不介入を貫こうとするなど、その真意が掴みづらいキャラなのは変わらないけれど、1巻とかで見せていた非人間的な無感動さはずいぶんと薄まってるように思いますね。なかなか大本のストーリーに絡んできてる感じがしないんですが、そろそろ見せ場もありそう……?

まりんの方も、大介において行かれた感じからか感情をぶつけ合ってお互いにぎくしゃく。ふたりにとっての後輩である沙織も含めて、どちらかというと陽の当たる学園での平和的な人物たちと思っていましたが、やっぱり2巻の設定は引きずってるよなあ……。〈青い遺伝子改変者〉である沙織を背後からじっと監察し続ける視線の描かれ方とか見てると、次巻では大介とカイの決着の他に、沙織の物語にもなにがしかの結論が与えられるような気がします。まりんと沙織の間に生まれた友情が、なんだか嫌なフラグに思えてしまうんですが、そういう容赦ない展開になるんでしょうかね……。

生きて帰ることを決意した矢先に届くカイからの連絡、いよいよふたりの最後の戦いの幕が上がりますね。次はホントに早く出してほしいですよ、この引きは。

hReview by ゆーいち , 2009/06/20

シャギードッグIII 人形の鎮魂歌~in the dark~ (GA文庫)

シャギードッグIII 人形の鎮魂歌~in the dark~ (GA文庫)
七尾 あきら
ソフトバンククリエイティブ 2009-06-15
Amazon | bk1