……救われなきゃいけないのは俺なんかじゃない……俺たちなんかじゃない、ローレシアンなんだっ……あいつが一番救われなきゃいけないんだっ! なのに、そいつが一番の犠牲を払うって腐ってるだろうがッ!!
異能の力を手に入れた武実はローレシアンと運命を結んだ。しかし、彼の毎日は黎子に下僕としてこき使われ、ローレシアンには冷笑されるばかり。そんな中、武実の友人たちがあやしげな宗教団体の虜となっていく。誰であろうと望みの人物に会わせてくれるという、その胡散臭げな団体に異能者の影を感じた黎子の命で、武実たちはその正体を探ることになるのだが……。
あらすじよりも帯に書いてある文章の方が的を射ていたような……?
学園異能ものとして展開するかと思ったらそっちよりもラブコメ分の方が圧倒的に多かったのは正しいような気がしますが、終盤に取って付けたように入ってくるバトル要素が正直要らなかったかも。というか、前巻もそうでしたが、敵方として登場するキャラがどうにも脅威として描かれてなくて、大ピンチ! のはずなのにあっさりと解決してしまってるのが盛り上がりに欠ける理由なのかもしれません。
というか、今回はさらに輪をかけて主人公であるはずの武実の見せ場がないことないこと。ロリ疑惑にBL疑惑とあらぬ疑いをかけられ、さらには主人(?)の黎子にボロ雑巾のように扱われ、想い人に告白することもできず、そして運命共同体のはずのローレシアンの気持ちには気付かない主人公スキルのおかげで、一番近いフラグすら叩き折ってみせるなど、不幸で前が見えません。
前巻の内容を随分と忘れていてローレシアンがかつて置かれていた境遇が割と容赦ない状況だったなあと人ごとのように感じつつ、それでも現状の武実との生活をまんざらでもなく楽しんでいるように見えるのは、彼女が救われつつあることの証なのかな。他人に興味もなかったような聖女としての道具であった彼女から、自分の大切なひとを救うための献身を見せる彼女への変化というのは、ときおりローレシアンが武実に示した嫉妬の気持ちと相まって、ようやくヒロインぽくなったのかなあとか思ったり。そんな彼女の見せ場も、新登場のオリガに半分くらい持っていかれた感もありますが。
ラストバトルを経て真相が明かされて、そしてまたラブコメ路線に戻ってくるあたりがさすがな気もしますが、エピローグのなんとも平和な日常への帰還具合といい、やっぱりそっち路線のお話で続きを読んでみたい気がしますね。
hReview by ゆーいち , 2009/07/04

- 白銀のローレシアン〈2〉 (一迅社文庫)
- 上原 りょう
- 一迅社 2009-06-20
- Amazon | bk1
コメント