出逢って、いろんな思い出を共有して、別れて、たまにあいつ何やってんのかなーって思い出したりして――それって、現実の世界と物語の世界で何が違うの?
留学生のリアが加わり、さらに賑やかになったラノベ部。メンバーは増えても、やることは変わらず、相変わらずの雑談に読書に花咲かせる毎日。そんなある日、文香は龍之介と二人きりになった部室で、自分が抱いている気持ちの名前と意味を知る。そして……。
ここでシリーズ完結とは予想外でしたね。だらだらといつまでも続けられそうなネタなのに、ここであえて物語に幕を引くという意味は、あとがきにも書かれていますが、納得できる理由でもあります。
ラノベを中心としたいわゆるサブカルの今をネタにした作品だけに、この作品を1年後、2年後に読むというのはネタ的な部分ではやっぱり苦しいんでしょう。けれど、この物語の中でキャラクターたちが語って、思って、伝えあった物語というものに対する気持ちというものは、新鮮さを優先したネタのチョイスと相反するようにある種普遍的な価値観を持っているのではないでしょうか? ラノベ部という、理想的な空間と、理想的な部員たちに囲まれた、楽園のような優しい時間。ああ、こんな時間を誰かと共有できていればなんて夢想をしてしまうくらいに現実はままならないものですが、優しい物語で心が癒やされるなら、きっと明日も生きていけるのですよ、なんてね。
1巻でも文香に対する暦の気持ちという形でほのめかされていましたが、2巻の龍之介と美咲の恋バナあたりから、恋愛ネタの方面でも割と大きな展開を見せてくれたのが意外といえば意外。そして、そこに一定の決着を見せず、想像に委ねる感じで未来へ繋げてくれたのが爽やか。といっても、個々人のやりとりを見ていると、ラノベ部の中で唯一恋人として成立しそうなのは、やっぱり龍之介と美咲のふたりなんですよね。なんだかんだ、恋人と見れないといいながらも何かにつけて彼のことを考える美咲、ふたりの後輩に告白されつつも、美咲への想いを捨てきれず抱えたままの龍之介。ちょっとしたハプニングと、どちらかの踏み込む勇気さえあれば、それこそラブコメのようなハッピーエンドが迎えられるんじゃないかなとか思うんですががが。まぁ、その前に立ちはだかる障壁、文香とリアは黒化するとかなりの難敵となりそうではありますが。
楽しくラノベを読むという、そんな当たり前のことを当たり前に伝えるためのお話。たまにやってくる読まなきゃという義務感や強迫観念に満ちた暗い気持ちになったときなど、改めて読み直して、物語を読む楽しさというのを再確認するというのもアリかもしれません。
hReview by ゆーいち , 2009/07/26
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ラノベ部3巻の感想レビュー(ライトノベル)…
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表紙はラノベ部メンバー勢揃いショット。
なんだか最終巻みたい……