あなたはこうして、いまあたしのために泣いてくれてるじゃない。もう、それだけで十分……。もう、泣かないで。神様だから、世界を守るんじゃ、ないでしょ。
部内のいざこざで分裂し立ち上がった第二文芸部。そこに集った部員は中二病全開の美少女3人と、唯一の男子部員・近藤寛二だった。そんなある日、部内の創作活動の一環として始めたオリジナルの神話世界が、本当に生まれてしまったことを部長の須弥伊緒から告げられる。創造された世界の名は“神創領域クラフティア”。あらゆる神話がごった煮になったおかげで様々な神がやってくることになったその世界に訪れる危機。伊緒は寛二たちに神様としてクラフティアを守ってくれと言ってきて……。
あれ? 触手なシーンが一番盛り上がった?
邪眼ノートなる妄想を書き綴ったノートの上に構築された新世界クラフティア。あらゆる神話を取り込み、オリジナルの神話を作り上げようとしたら、その世界が実際に生まれ、さらには創作者である第二文芸部の4人が神となって他の神々と戦うハメになって……、とこれは素敵な中二病小説。僕の考えた素敵な神様たちをとにかく活躍させてみよう! なノリかと思いきや、割とシリアス目に展開していった印象。
所々の設定の甘さを、創作した主人公たちの詰めの甘さに転化して、さらにはその設定の隙を付いたバトルが展開したりとお話の流れは面白いんですが、逆に何でもありな感じになってしまったのでクラフティアの世界観がかなり残念なことになってますね。
それでも神話世界内での命を賭けたやりとりとか、死の神ヘルのアレさ加減とか、ヒロイン(?)なアマヨリと寛二のやりとりとか終盤の盛り上がりは良かったですね。その後のエピローグでの再会とか、なるほど、こういう形できれいにまとめるか、と。
逆に現実世界の第二文芸部内の人間関係はあんまり変化してないのかな。3人の性格に難ありな美少女が何気に寛二に好意を抱いるようですが、伊緒のヤキモチとアマヨリの献身で引っ張りだこな寛二の受難をまた見てみたいかなとも思いました。
物語的にはまだまだ出せるネタはごまんとあるし、未回収な伏線も残されてるし、続刊の可能性アリかな? まぁ、そのときはもうちょっと校正をしっかりして、誰でも気付くような誤字脱字は減らしてほしいものですが。そっちが気になってしまうってのは出版物としてどうよ、と。
hReview by ゆーいち , 2009/07/26
- 文芸部発マイソロジー (一迅社文庫)
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コメント
コメント一覧 (1件)
文芸部発マイソロジー…
「寛二くん、いまの君の心の呟きに答えるとするならば、嗜好と人間性は極めて別問題だ。わたしの持論では変態という名の紳士は実在する」
約三ヶ月二週間の積み。MF文庫Jで『悠久展望台のカイ』と『死神ナッツと絶好デイズ』を出したきり行方が判らなくなっていた早矢塚さんが一迅社文庫に登場です。ほんと、一迅社はレーベルの垣根を意識しないな。