みにくいあひるの恋

stars だけどね、……知ってる? この現実ではね――ハッピーエンドのあとにはね、地獄がつづいているのよ。

「あんたのことが嫌いだから」優等生で知られる少女・あひるに、白鳥陀衣はそう告げられた。男らしくないというコンプレックスを持つ陀衣に、歯に衣着せぬ物言いで接してくるあひる。そんな彼女なら、自分が男らしくなるための助言をしてくれるのではないかと思った陀衣は、嫌いというあひるに対して積極的に関わっていこうとして……。

恋の病は死の病。

恋愛感情が死へと繋がる病が存在する世界を舞台に、それでも恋をしていこうとする少年と少女の物語。

冒頭口絵の「そして医学は敗北し、『恋愛』は病名になった」なんてキャプションにどんな物語か期待させられましたが、割と普通の恋物語だった……かな? 死へと至る恋の病という世界観を維持するために設定された、人類がそれでも種としての存続を維持するための方策「きょうだいとして育てられた血の繋がらない者同士による家族愛に基づく婚姻」なんてのは、使いようによってはどこまでもドロドロした方向へ突っ走れる感じがしますが、この物語においては、陀衣とあひるという、そんなこの世界においての普通の恋愛から外れた禁忌たる恋愛を演出するための土台として使われてるだけのような感じがして、残念至極。

いや、そういう禁じられた恋、みたいなシチュエーションはむしろ望むところなのですが、ふたりの関係は割と最初っから相思相愛な空気が感じられていて、心を告げたくてもなかなか告げられないというその葛藤にこそやきもきさせられましたね。あひるの身を案じる彼女の姉や、陀衣にとって最も身近で最も愛しい「妹」な茜子の嫉妬とか、壁はあれどその恋を阻むことは叶わなくて。その先に待っているのが避けようのない悲劇であったとしても、それでも好きになってしまうのは、それが恋だから、なんでしょうかね。

そうして、あひるにとっての恋は、これまで諦めていたものから、今度は手を伸ばして掴むものへと変わっていって。これでようやくスタートラインに立てたというのに、障害は満点、お相手は超がつくほどの鈍感、そして何よりも婚約者付きというなんとも道行き不安な恋。死が付きまとう悲しくて切ない恋かもしれないけれど、その結末が訪れる瞬間まで、ふたりの心が救われているのなら、幸いがあるのなら、それは決して悲劇なんかじゃないんだと、そんな風に思わされるのですね。

ところで、この作品、シリーズ展開するようですがどう行くのかなあ? なんだが普通の恋愛小説に落とし込まれてしまいそうな気がしなくもないですが、そのあたりの物語の展開にも期待したいところですね。

hReview by ゆーいち , 2009/09/12

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みにくいあひるの恋 (MF文庫J)
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