――遠慮とかしないでいろんなことを俺にぶつけてきてくれていいんだ。おまえが俺の隣にいてくれると言ってくれたように、俺もおまえの隣にいるから。
キョウの妹分で死神見習いのココロが現れてから、恭也の日常はますます賑やかになる一方。しかし、乗り合わせたバスで偶然にも発生したバスジャック事件において、恭也は死神の本分を否応なしに見せつけられる。キョウとの関係に生まれるしこり、姿を消す命、そして不穏な行動を密かに起こすココロ。死神たちの間に生まれた波紋はやがて恭也を巻き込み、彼に隠された秘密をも暴いていく。
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もはやどこに出しても恥ずかしくないバカップルと化した恭也とキョウ。他人の目を気にして普段は澄ましてスキも見せないくせに、ふたりきりの時間が生まれるとその緊張感もどこへやら。恋する女の子な雰囲気と気持ち全開でいるものだから、別の意味でお互いに緊張しているような。ああくそ、なんだこの初々しさは!?
そして、物語の流れは、やっぱり中盤以降の急加速。前巻の終わりで見せた、ココロの笑みというには邪すぎる表情の意味が分かるのは最後の最後。そして、彼女のキョウへの執着は予想の遙か斜め上の、もはや狂的な信仰と妄執だったという病んだ展開に。
いやぁ、ここまでヘヴィな荷を、キョウに背負わせるかと思ってしまいますが、翻ってみれば、当のキョウ自身が、すでに恭也を助けたという咎と罪の証をその身に刻んでいるわけで。日常のラブコメ然としたやりとりにうつつを抜かしているかと思いきや、そんなことはなくてキョウも、ミコトも死神という人間と相容れることのない役目を果たす存在と、隣人としての自身という両極の狭間で苦しみを得ていたわけですね。
一方、そんな悩みとは無縁の、ある意味で純粋な死神であるココロはそんなふたりの気持ちを理解することができず、今回の行動に至ってしまいます。価値観の相違で片付けることができるほど簡単な問題でもなく、逆にココロたちの側――一般的につとめを果たす死神たちからすれば異端なのはむしろキョウたちなのかもしれない。そんな断絶を隔てて対峙した姉妹のようなふたりの決着と決別はやるせなさ過ぎますね。
いつかは自身の手でケリを付けなければならないとはいえ、その強さを得るには至らない弱さと脆さを抱え恭也にすがるキョウ。ふたりの関係が深まるにつれ、一方が一方を守り支えるというという片道通行な想いから、お互いを大切にしあう恋人らしい関係に変わっていってるようにも見えますね。まだ自分一人では様々な事実に立ち向かうには心許ないふたりだけれど、キョウの気持ち対して恭也も自分の答えを返し、対等の関係としてこれからも試練に立ち向かっていけそうですね。
……恭也の身に起きたアレについては微妙にどこかで見たような気がしないでもないですが、重大な伏線ぽいものがこのような形で語られたってことは、今後はバトル分多めの展開になっていったりするんでしょうか。うん、少年漫画的展開万歳! でも、私はもっとラブコメないちゃいちゃも見たいんです。ぜひとも両立してくださいませー。
hReview by ゆーいち , 2009/11/07
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