“文学少女”と慟哭の巡礼者

2007年8月31日

stars 美羽と心葉の物語は結末へ向けて動き出す

少しずつ距離を縮めていく心葉とななせ。そんな中、突然のななせの入院。見舞いに行こうとする心葉を頑なに拒む彼女。偶然か必然か、心葉はそこで出会う。全ての始まりとなった事件の当事者で、片時も忘れることのなかった──できなかった、美羽という少女に。

物語を読み終えて、うまく語る言葉が浮かばないというのはこういう状況なのかも。透明すぎる心葉を通して自分を見たせいで壊れてしまった少女の物語。そんな少女の気持ちに気付かずに、純粋で幼い恋心をただひたすら与え続けてしまった少年の物語。彼と彼女に出会い、何かを思い、何かに間違い、けれど離れることもできずにいるしかなかった彼らの物語。

これまで語られてきた物語の登場人物が集い、心葉の原罪ともいえる美羽に対して犯してしまった過ちが明かされ、語られ、そして解き放たれる物語。
傷つけられ続けた彼女の心の闇はあまりに深くて、その慟哭は想像するに余りあって、彼女の綴る物語を、語る言葉を受け止めるには心葉はあまりに幼すぎて、そんな彼らを見守る方も、事実の重みが胸に迫ります。

巧みに構成され、計算されたかのような伏線の数々といい、これまでの集大成ともいえるお話でした。心葉と美羽という、この物語の最深部を構成するふたりの、過去と現在にひとまずの決着が付いたいま、彼らが望むこうありたいと願う姿へどのように歩んでいくのか。
それはきっと語られることのないかもしれない物語。

このお話は、少し寂しそうに微笑む遠子先輩の卒業を持って幕を下ろしそう。謎すぎる彼女が抱えているもの、そもそも彼女の存在自体が最大の謎といってもいいようなものだけに、どのような結末が用意されているのか非常に楽しみです。

hReview by ゆーいち , 2007/08/31

“文学少女”と慟哭の巡礼者

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5)
野村 美月 竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-08-30