コミック感想:ぼくたちは勉強ができない(15) 迫る試練と選択の時、そして……/ネタバレあり

あらすじ

迎えたセンター試験当日。だが理珠や文乃、あすみが待つ会場に成幸は一向に現れない!! 試験開始が迫り不安が募る中、うるかは成幸を捜しに出るが!?

一足先にアニメ版が完結して原作を追い越してしまったようですが、原作は原作で楽しんでいきますよ、と。個人的にはそれはそれで良しと思っているのですが、原作側との意思疎通が不十分でああいう形になったとしたら残念かも。でもまあ、OADで全員花嫁姿にするならエンディングはぼかしとけよ! だよ。

第1関門センター試験迫る!

ぼくたちは勉強ができない(15) センター前ってこんなですよね
センター前ってこんなですよね

リアル世界ではセンター試験も姿を消そうとしておりますが、本編ではいよいよ1月を迎えセンター試験戦に突入! すったもんだがあるかと思いきや、2話であっさりと解決したエピソード。

15巻は通して見ると、うるかを中心に大きな話は進んでいますが、1話完結ではヒロイン同士の関係とかその辺のフォローがあったりと距離感の変化、すなわち時間の経過による個々人の思いの変化が強く伝わるような構成になっていましたね。

ヒロインたちの変化:緒方理珠さん

ぼくたちは勉強ができない(15) 緒方さんの表情の変化必見!
緒方さんの表情の変化必見!

前巻がちょうど緒方さんのエピソードがあったせいか、今巻でも冒頭から彼女の快進撃(?)は続きます、っていうか誰コレな変化に驚きですよねえ。香水とか化粧にも気を遣い始めたりとオンナノコし始めて成幸もドキドキですわ。そして無意識のスキンシップから、距離を縮めるための意識的なスキンシップへステップアップした彼女のアプローチは、これまでのマスコット扱いに否やを唱えるべくついに参戦といった風情です。

ぼくたちは勉強ができない(15) ああ、もう、いろいろズルいその表情
ああ、もう、いろいろズルいその表情

そしてこの表情ですよ! 気になる……というより恋愛対象として自覚的な存在となった成幸に対して、自分を女の子として見てほしいとアプローチをかけて、一定の成果を上げてしまう策士さん。恋して幸せに頬染める表情というのはホント魅力的ですよ、緒方さん!

おまけページの関城さんも平常運転で安心しました。見た瞬間100%正解ですかそうですか。

ヒロインたちの変化:小美浪あすみ先輩

ぼくたちは勉強ができない(15) 運を貯めるモードのあすみ先輩
運を貯めるモードのあすみ先輩

大なり小なり受験生ならずとも大事な場面の前では意識をしてしまう『運』。できるだけ運を遣わずに受験に備えたいというその意気や良し!

でも、こういうときに限って、むしろ逆に良いことが起きてしまうのが世の常そしてお約束。

ぼくたちは勉強ができない(15) 音を立てて減少していく運気メーター
音を立てて減少していく運気メーター

成幸と出会っただけで微減してしまう時点でその運ゲージ別のゲージじゃね? とか思ってしまうところではありますが、ことあるごとにゲージの増減に一喜一憂している先輩の姿は、普段の小悪魔然とした先輩の姿とのギャップが可愛らしく感じられて良いですね。攻められると弱いところがボロボロ漏れ出ていて大変よろしゅうございます。

ぼくたちは勉強ができない(15) 成幸の天然ジゴロ発言でダメージが!
成幸の天然ジゴロ発言でダメージが!
ぼくたちは勉強ができない(15) ほら、不意打ちのデコチューで大変な事に
ほら、不意打ちのデコチューで大変な事に

あすみ先輩は自宅での防御力が特に弱いですよね。それだけ自宅で一緒にいる相手には心を許しているということなんでしょうけれど、忘れてはいけない! 父親がいつもどこかで見ているぞ(いた)。

学園長の過去と今

ぼくたちは勉強ができない(15) 謝れる大人の姿
謝れる大人の姿
ぼくたちは勉強ができない(15) 学園長、最初はイロモノかと思っていましたよ
学園長、最初はイロモノかと思っていましたよ

ここに来て学園長の背景も語られて、なんと成幸の父親と同僚だったという事実が。父親に成幸のことを頼まれたこともあり、教育係という無理難題にも近しい仕事を与えたということなら、それは遡ってみるなら父親の教育方針が結実し、その背を追うまでになったという。

ぼくたちは勉強ができない(15) 蛙の子は蛙、な視点で見守る学園長
蛙の子は蛙、な視点で見守る学園長

このエピソードを見ると、12巻で学園長に対して成幸がワガママを言ったことすらも、学園長の中ではあの父親の息子ならこういうことを言い出すのかも、なんていう想定はあったのかも知れないですね。

ぼくたちは勉強ができない(15) 成幸の「好き」を聞いて気もそぞろなヒロインズ
成幸の「好き」を聞いて気もそぞろなヒロインズ

ところで、ヒロインの皆さん、その好きはまだ「LOVE」じゃないぞ、気が早いぞ!

成幸を襲う試練

そしてセンター試験当日の朝を積雪で迎え、嫌な予感しかしないわけで。

ぼくたちは勉強ができない(15) ズルッって……ええぇ
ズルッって……ええぇ
ぼくたちは勉強ができない(15) この構図はヤバすぎるでしょう
この構図はヤバすぎるでしょう

試験の日に滑って転んで縁起が悪いなんてレベルじゃない不運に襲われる成幸。コミック的にこのエピソードで次に続いていたらホントにやきもきしてしまうことになりかねなかったのですが、幸いにして次話も当然収録されているので続きが読めて人心地。

ここからうるかのターン!

ぼくたちは勉強ができない(15) それでも尚、成幸を支えるものは
それでも尚、成幸を支えるものは
ぼくたちは勉強ができない(15) 「成幸、見つけた!」
「成幸、見つけた!」

唯一、センター試験を受けない受験形態のため、行動に移せたうるかが成幸を発見。様々な偶然が重なりつつも拾ったチャンスは無駄にしないのが彼女の強さ。

ぼくたちは勉強ができない(15) 心折れかける成幸
心折れかける成幸
ぼくたちは勉強ができない(15) 「あたしがついてる!」
「あたしがついてる!」

成幸のネガティブが久々に炸裂しそうになるその時、またも支えてくれたのがうるかだというのは、ある意味運命的なのかも知れませんね。かつて父親を亡くして、自分の勉強が上手くいかないときに、うるかの姿を見て勇気をもらったように、今回もまた、うるかが成幸の心が完全に折れてしまうのをすんでの所ですくい上げてくれる。

こういう、一方的に与えたり、与えられたりするだけの関係でなく、そのひとの強さが他のひとを支えてくれるというそんな素敵な関係がここにあります。

ぼくたちは勉強ができない(15) こういうとき頼りになるこの先生
こういうとき頼りになるこの先生

そして、この先生である。マンガならではのフォローではありますが、先生モードの真冬先生のこれで勝てる感はハンパない。しかしどうすれば残り10分切ったあのタイミングで、センター会場の試験室まで送り届けられたのか。雪道の急加速ヤバすぎ注意です。

長年のわだかまりを抜けて新しい関係へ

そんな感じでなんとかセンター試験を終えて、いよいよ残すところは2次試験と合格発表。ラストスパートの主人公たちですが、ここから細かいエピソードでヒロインたちの関係の変化が描かれていきます。

かつての教育係との和解

和解というほどギスギスしていた関係ではすでにないとは思いますが、緒方さん、文乃さんと真冬先生の間には未だに断絶が横たわっているような状態が、ここでようやく修復に至ります。

ぼくたちは勉強ができない(15) なんでこんな状況に……
なんでこんな状況に……

その場所が風呂場なのはどういうことなのかは置いておいて、おそらく、ことここに至らない限り、生徒と先生の間に生まれていたお互いへの感情は昇華しきれなかったのだと思います。

ぼくたちは勉強ができない(15) 先生への感謝の言葉
先生への感謝の言葉
ぼくたちは勉強ができない(15) 教え子たちが夢を形にする希望を見せてくれたから
教え子たちが夢を形にする希望を見せてくれたから

成幸との関わりを持つようになり、変わり始めた生徒たちと先生。先生からかけられた言葉はすぐに赦せるほど易しいものではなかったし、先生が抱えた絶望の記憶はたとえ生徒の気持ちを裏切ったとしても才能を活かすべきと道を叫んでいました。

変更線だったその両者を成幸の行動がゆっくりと近づけ、そして交わらせるに至った。それは、教師志す前から成幸が続けてきた努力の結果であり、それに彼女たちが答えてくれた結果でもあります。

ぼくたちは勉強ができない(15)  そりゃ、だばーっとなります
そりゃ、だばーっとなります

そして新たに生まれる対抗意識(笑)

ぼくたちは勉強ができない(15) 文乃さん、気付いてしまわれたか
文乃さん、気付いてしまわれたか
ぼくたちは勉強ができない(15) 女の戦いを男は理解していない
女の戦いを男は理解していない

そういえば、文乃さんは先生の部屋を訪れたのがこのエピソードが始めてでしたか。緒方さんが来たときはそれはそれで大変なことになっていましたが、今回もまた地獄のような有様に(笑)

メシマズキャラの料理合戦とか、誰も勝利者になれないその戦いの結果は……。

ぼくたちは勉強ができない(15)  両者敗北っ!
両者敗北っ!

どうしてこのひとたちは物語のレールを少し外れると一気にポンコツさを発揮してくるのか。ラブコメかくあるべしという展開で大変笑えるのですが、もっとやれ!

関城さんはここでも通常運転です

ぼくたちは勉強ができない(15) こいつ、今まで誰も言おうとしなかったことをズバリと……っ!
こいつ、今まで誰も言おうとしなかったことをズバリと……っ!

この3人が一堂に会するとどうしようもなくラブコメ時空が広がりますね(笑) 自身の欲望に素直すぎるのに、下品すぎないのは全力過ぎる関城さんの人徳ゆえでしょうか。何気に彼女もハイスペックでオールラウンダーな所あるのですが、いろいろと残念なところが強調されて、それはもう残念です。

ぼくたちは勉強ができない(15)  世界観違う描写じゃね?
世界観違う描写じゃね?

珍しい組み合わせでも親交が

ぼくたちは勉強ができない(15)  どっかのボケが取り結んだ縁ですね
どっかのボケが取り結んだ縁ですね

緒方さんとあすみ先輩の取り合わせは珍しいですね。これもまた成幸を中心に繋がれた縁の形。そしてお互いが感じた変化も誰かさんのおかげ。こういう主人公不在での関係性の変化の描写が、本番試験が迫る直前でありながら穏やかに挿入される、和みますね。

そして……迫る別れの時

ぼくたちは勉強ができない(15) 留学への覚悟を決めているうるか
留学への覚悟を決めているうるか
ぼくたちは勉強ができない(15) ずっと見続けていた笑顔が遠くなる予感
ずっと見続けていた笑顔が遠くなる予感

うるかもうるかで成長が感じられるエピソードが最後のエピソードで描かれていましたね。英語だけで話すエピソードとかありましたねえ。そのときの外人再登場してるし。あの、英語を解する犬たちはどこに居るんでしょうね?

うるか自身はすでに距離が空くことを寂しいながらもある程度は受け入れている雰囲気。逆に、成幸は今になって、彼女との距離が遠くなるかも知れないことを実感し始めてきたのでしょうか。ラブコメ時空によく陥るふたりですが、お互い知りあっての時間は、他のヒロインに比べても圧倒的に長く、それだけ喪失感も大きくなるはず。それを乗り越えられるのか、唯一無二のアドバンテージとして関係の発展に使うのかは、これからの展開次第になりそうですね。

ドタバタを挟みつつ、ようやくこの時間が戻らないものであることを受け止め始める成幸。いくら色恋沙汰に鈍くても、その喪失感の意味をはき違えるようなことはないと思いたいですね。

ぼくたちは勉強ができない(15) 寂しさに気付く成幸
寂しさに気付く成幸

寂しげなモノローグで終わる15巻。春が近づき、物語の終着点がいよいよ見えてきそうです。受験の行方と恋の行方、それぞれの未来への旅立ちのそのときまであと少し。