ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる

2013年4月18日

ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる読了。

加納新太独自の解釈が加えられつつも、これはやはり『ほしのこえ』であるという内容に安心。映像ではSF色が強かったり、それこそはじめに絵ありきで登場人物の内面の描写がおざなりだったりしたけれど、その空白を見事に埋めてくれています。

本作は、ミカコサイドの『あいのことば』とノボルサイドの『ほしをこえる』の2本の物語で構成され、「宇宙と地上に引き裂かれる恋人」という作品のテーマを良く表現していると思います。ほぼ全編が、ミカコとノボルの一人称で語られていくので、時間の経過と共に、メール送信にかかる日数が増えると共に、変化していく互いへの想いの移ろいがやけにリアルです。同時進行していながら、想う相手は8年という時間と距離を隔てているという終盤はやはり文章でも切なさが際だちます。

本編の再解釈ということで、『雲のむこう、約束の場所』のようなエピローグの追加も期待しましたが、それは先のノベライズである意味結末も語られているので、あえて追加しなかったのかな。

映像作品では駆け足気味で過ぎていったストーリーを、このようにじっくりと再読できたのは良いことでした。SF要素はそこまで濃くもないので、遠距離恋愛の切なさとか、そういった恋愛要素を楽しむだけでも、なかなかの良作でしょう。