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中村 恵里加 Tag Archive
ダブルブリッド―Drop Blood
だから、死ぬまで生きていこう。死にたい死にたいって思いながら、生きていこう。
優樹が失われた世界。その世界で、太一朗と未知は渋谷の六課を目指し道を行く。決して分かりあうことのできない思い、許すことのできない罪、そして埋めることのできない溝を感じながら、それでも彼らは生きていく。それは片倉優樹にまつわるひとびとの「かつて」と「これから」の物語。
これを読んでも多くを語ることもないかなあ、な短編集。というか、もう、言葉が出てこないよなあ。
本編の後日談「続いた世界のある顛末」が本命ではありますが、それ以外の短編で描かれる、ひとびとの日常が、優樹が失われた後に語られることで、そのときに感じていただろう穏やかさよりも、それがもう取り返しの付かないことであるということに気づかされることの切なさが先に立って、やっぱり悲しさを覚えてしまいますね。
大田の傍観者気取りの長台詞も、虎司と安藤さんのちょっと普通からずれたお付き合いも、夏純の未成熟なひととしての感情も、そして優樹が過ごした子ども時代も、優樹の物語が幕を下ろしてから語られるなんて、ねえ。
そして、彼女がいない世界で、続いていくそれぞれの物語。優樹が最後に望んだ夢のような世界が、そこにあるわけでは当然なくて、彼女の喪失によって、皆が皆、これまでのようにはいられない。憎しみ哀しみ、あるいは気遣い、無関心を装い。決して小さくない、そんな変化を受け入れながら、これからも生きていくことを背負わされる。
それぞれの生も死も、そのひとだけのものだ、そういう大田の言葉通り、それぞれの命は、これからも続いていく、死ぬまで生きていく。その言葉の重さが、実感されるようなお話でしたね。
hReview by ゆーいち , 2008/11/29
- ダブルブリッド―Drop Blood (電撃文庫)
- 中村 恵里加
- アスキーメディアワークス 2008-11-10
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ダブルブリッド〈10〉
ありがとう、いってきます。
兇人・太一朗が二重雑種・優樹と対峙する。これが、太一朗にとって、そして優樹にとっての最後の戦い。かつての友人同士、人間だった者と人間でもアヤカシでもない者、今や互いを互いと認識できない者同士の最後の戦いが始まる。そして、物語は終わる。優樹と太一朗の、ちとにくとほねの、ものがたりが。けれど、世界は続いていく、これまでのように、これからもずっと。
あー、見事に完結してくれましたね。
“主”が絡んだΩサーキットや、クロスブリードといった勢力の結末自体も、物語の本筋である優樹の物語に組み込まれ、それぞれの風呂敷の畳み方自体は割とあっさり目な印象を受けましたが、伏線が一気に収束して完結してますね。これはすごいなあ。
そして、これまでさんざんな道を歩んできた優樹の物語も、ここで終幕。終盤の太一朗との会話は、ほんとうに懐かしく思えるくらいの待ちに待った場面でしたね。実際には、一気に読んだのでリアルタイムに待たされたひとに比べれば、圧倒的に短い時間なのに、そこに至るまでの流れがあまりに厳しすぎて、そんな風に思ってしまいますね。
物語の終わり方としては、ほんとうに綺麗。残された者たちは、また、様々な思いや罪を抱えて生きていって、逝った者たちは、それぞれがそれぞれの満足を胸に抱いて逝って、と多くの登場人物たちにちゃんとした結末を与えてくれてますから。
ああ、でも、やっぱり優樹と太一朗の再会は短すぎて悲しくなります。そこで交わされた言葉も、思いも、まさに万感が込められたものでしたが、願わくは束の間の幸せだとしても、それがもうちょっと続いていくのを見てみたかったなあなどとあり得ぬ夢を望んでしまいます。それでも、あの一瞬に等しいくらいの時間、互いにふれ合い、交わし合い、贈り合ったということ、それが、彼らがずっと望んでいた結末だということだけは感じられそうです。
毎度毎度、最後の挿絵には心揺さぶられましたが、今回のはその中でも最上ですね。あの表情を見たら、優樹が不幸だった、なんて私には言えないかなあ。
痛くて苦しくて悲しくて切なくて、けれど、優しくて気高くて美しい、そんな彼女の物語、堪能させてもらいました。
hReview by ゆーいち , 2008/11/26
- ダブルブリッド (10) (電撃文庫 (1588))
- 中村 恵里加
- アスキー・メディアワークス 2008-05-10
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ダブルブリッド〈9〉
さて、前に進もう。僕は僕の為したいことをしに行こう。
安藤を手にかけ、喰らおうとした寸前、虎司は太一朗の襲撃を受け、そのまま戦いへと発展する。あと一体、童子斬りでアヤカシを殺せば太一朗も死ぬ。しかし、太一朗は童子斬りの力を使わず、拳でもって虎司を圧倒する。想像だにしなかった虎司の正体を知り、そして人外同士の戦いの中で、傷ついていく彼の姿を見ることしかできない安藤は……。
なんだ、あの最後の挿絵の凶悪さは。そして、そうか、こんなところで4年以上も待たされたら、どれだけもどかしいことか。そんなことを思いつつもついに、対峙を果たした優樹と太一朗、激突の直前で次巻へ続く、っておい!
前半は虎司と安藤さんの物語に一応の決着が見られました。人間とアヤカシという本来なら共存することが難しい異種族同士、けれど、互いに好き合っているふたり。これまでの物語の中で、「好き」という関係を築いたふたりが、どれもこれも報われない別れを経験している中で、彼らの関係は非常に希望を抱かせるものですね。虎司の何気なく、そして言葉以上の他意のない台詞に、妄想が暴走してしまう安藤さんの様子は、この殺伐としたお話の中のひとときの安らぎでした。虎司にとってはかなりの苦行となりそうですが、ひとまずはこのふたりの幸せな決着に拍手を。
そして、これが最後の戦いになるのか? 優樹と太一朗、お互いを認識することなく、かつて同じ時間を過ごした3ヶ月がまぼろしだったかのように殺し合うことしか道の残されていないふたり。ここに割り込んできた大田の一括が、ふたりの心にどんな波を起こしたのか、現時点ではそれさえも絶望にしか繋がらないような雰囲気なんですが、ここからどんな結末へ至ろうというのか。
あと1冊、なんだかまだまだ残された伏線がたくさんあるんですが、その決着はどうなる? 背後で蠢いていた思惑がいろいろあった気がしますが、本当、優樹と太一朗の物語だけは救いがもたらされてほしいと切に願います。
hReview by ゆーいち , 2008/11/26
- ダブルブリッド〈9〉 (電撃文庫)
- 中村 恵里加
- メディアワークス 2003-12
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ダブルブリッド〈8〉
何だ、結局喰うこと考えてるじゃねえか、俺は。
兇人と成り果てた太一朗の手により、八牧は殺された。その事実を知った元捜査六課の面々は、それぞれの方法で太一朗への復讐を誓う。そんな中、虎司は飢餓を覚える。人間が喰いたい、その衝動は彼に最も近いクラスメイト・安藤へ向けられる。喰いたいけれど、殺したくない、その狭間で苦しむ虎司は、安藤への態度を変え、そして彼女はその変化に気付いていて……。
終わりへ向けて加速していく物語。その先には断崖絶壁が待っていて先などないように思いながらも一縷の希望を捨てきれないのは甘いんでしょうかね。
八牧の死は、元捜査六課のアヤカシたちに大きな衝撃を与え、彼らを復讐へと駆り立てます。傍観者としての立場を堅持し、乞われなければ積極的に干渉することもなかった大田さえも、その立ち位置を変えざるを得ないほどに。
そして、壊れていく優樹の身体と心。浦木によって継ぎ足された手が禍々しいし、だんだんと思い出せなくなっていく過去の記憶が、どうしようもない結末を予想させて切なくなりますね。彼女が仇を討つべき相手の名、それを知ってもさしたる感慨を抱くことができず、そして薄れつつある記憶の中をよぎる誰かが、同一人物だと分かることもできず。彼女がそれを悲しいと思うことさえできないこと、それがひたすら悲しく思えます。
一方、虎司と安藤さんの関係も、また破滅的な方向へ向かいそうな雰囲気。これまで忌避してきた人間を喰うという衝動が、ここにきて彼女へ向けられたというのは、彼の本性と人間としての生活を楽しみたいという彼の願いが、両立し得ないことを突きつけたようで、これまたふたりにとっての試練ですね。危機的な状況でも、なんだか恋する乙女な安藤さんのぽややんさに脱力しつつも、とんでもなくヤバいところで次巻へ続くとか、鬼ですか。見ていて微笑ましいふたりだけに、その関係が続いていくことを願いたいですね。
さてさて、この破滅的なお話、完結まで後2冊。果たしてどんな結末が用意されているのやら。序章があまりにひどい展開過ぎて、これがどこで描かれるかというのが戦々恐々なんですががが。
hReview by ゆーいち , 2008/11/26
- ダブルブリッド〈8〉 (電撃文庫)
- 中村 恵里加
- メディアワークス 2003-04
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ダブルブリッド〈7〉
山の神に敬意を。そして、俺の敵の目覚めに歓喜を。
元捜査六課のアヤカシ・八牧は、仲間を傷つけ害そうとする存在を排除するために行動することを決めた。あらゆる手段を用い、自身が死ぬことすら想定し。一方、童子斬りをその身に宿し、次第に浸食されていく太一朗は、己の意識が失われる前に童子斬りを手放すために、限りなく小さな希望を探すため、ひとり東京の街を彷徨う。全てのアヤカシの敵となった人間外の人間・兇人と化しつつある太一朗。彼が、童子斬りが、次に狙うのは……。
何もかもが壊れ、失われていく第7巻。
もはや手遅れと分かりつつも、どこかに救いを探そうとして、けれどこの展開のどこにもそんな光明など見えなくて。
優樹と太一朗、ともに残された時間の少なさが、ふたりの身体の異変となって顕在化してきているようです。優樹は肉体の不調として、太一朗は自身の意識の変容として。お互いに少なからず大切に思っていたはずの、相手の名前も姿も思い出せなくなっていく、その過程の救われなさ加減に切なくなってしまいます。
そして、優樹の拠り所としていた第六課も、失われつつあるような。八牧の、自らの命を賭けた最後の戦いも、彼の作戦の部品として拾ってこられたはずの少女・未知とのやり取りも、彼の大切な仲間たちと過ごした、最後の食事のシーンも、それがこれから失われると分かっていて、それでもその時間だけは平穏であると、そんな風に描かれているだけに、物語の締めの数ページの痛みがどうしようもなく大きくなってしまいますね。
ああ、もう、痛い痛い。すれ違い続け、望んでいないのに敵対するしか道が残されていないふたり。こんな調子で話が進んでいくと、誰も彼も死んでしまって、どん底のバッドエンドが待っているのではないかと思ってしまいます。
hReview by ゆーいち , 2008/11/25
- ダブルブリッド〈7〉 (電撃文庫)
- 中村 恵里加
- メディアワークス 2002-01
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