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岩井恭平 Tag Archive
ムシウタbug 8th.夢架ける銀蝶
私たちが叶えたい夢は、きっと――逃げずに戦ったその先にあるわ。
“虫憑き”が生まれない世界を作るため、その源である始まりの三匹のうちの一体“大喰い”を倒すため、かっこう、ハルキヨ、亜梨子をはじめとした強力な虫憑きたちが手を組んだ。しかし、夢を喰らうため出現した“大喰い”との戦闘の最中、摩理が現れ、亜梨子と摩理のどちらが生き残るのかの選択を迫る。
本編に姿を見せない亜梨子の、その最後の姿を目に焼き付けろ!
いや、きっと本編のラストバトルでは、歴戦の戦士たちの姿に混じり、彼女の姿も見られるという王道的な全力全開バトルが描かれると信じていますががが。むしろ、そうでないと、きっとまたしても勝つことはかなわないかもしれません。
本編においてさえ、揃うことがないかもしれないくらいの戦力でもって臨んだ“大喰い”との戦い。けれど、あれだけの力が揃って、協力して戦ってさえ勝利をつかむことができなかった原因はなんなのか。“大喰い”の能力の反則さ、そして彼女を決して倒すことができない理由となる不死の虫憑きの存在、亜梨子と摩理が不完全な状態でしか戦闘に参加できなかった、理由を考えればきっとまだまだあげられるんだろうけれど、やっぱり過去にあって、現在にない、決定的な打倒のためのピースが欠けているんでしょうか。
それは、あるいは詩歌の存在かもしれないし、あるいは別の要素かもしれないし。しかし、それは逆にいえば、過去にあって現代にない要素もあるわけで。だからこそ、この物語の締めくくりとなるであろう、戦いには、あらゆる力の結集を期待したいところなのですが。
大助にとっての亜梨子の存在というものは、きっと彼にとっての詩歌の存在とは、別の位置づけでありながら、きっと同じくらいに彼を支える根底に根付いているように思います。大助にとって、果たすことのできなかった約束があり、けれど、その約束を果たすべき相手は決してこの世から消えてしまったわけではなくて。だからこそ、戦いを繰り返し、ボロボロになっても、大助は自分の夢を手放さない。手放すわけにはいかないんでしょう。
さて、これで語られるべき過去の物語は完結しました。悲しい運命を背負わされる虫憑きが生まれない世界を作るという夢は、まだ道半ば。その夢が叶うかどうかは、現在、そして未来の物語となる本編へと受け継がれていきます。今は深い眠りについて、その未来を夢見ているかもしれない彼女のためにも、絶望を振り払い、実現するための戦いを、今度こそ勝利で飾ってほしいと願います。
hReview by ゆーいち , 2009/02/06
- ムシウタbug 8th.夢架ける銀蝶 (角川スニーカー文庫)
- 岩井 恭平
- 角川グループパブリッシング 2009-01-01
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ムシウタbug 7th.夢高まる鳴動
想像してみて。誰よりも強いあなたたちが戦うんじゃなくて、手を取り合うことがあれば……特環とかそんなもの、ちっぽけだと思わない?
亜梨子の身体を蝕んでいく摩理の“虫”銀色のモルフォルチョウ。残された時間が少ないことを悟りながらも、亜梨子は一号指定の虫憑きたちを一堂に会させることに成功する。対立し、戦うことしかできなかった“かっこう”・リナ・ハルキヨたち。亜梨子の願いは三人の手を繋がせることができるのか……。
過去の物語を紡ぐ『ムシウタbug』もいよいよ終局へ向けて加速が始まった印象。本編においてその存在感を失くしてしまっている亜梨子が、過去において“かっこう”やリナ、ハルキヨたちと何を語り、何を目指したのか。このシリーズの最後で語られる物語こそが、本編において変わってしまった彼らの原因となっているのでしょうか。
そして、亜梨子と摩理の求める答えはどうなるのか。生きたいという夢を残しながらも、親友を思い続けている摩理の心と、それを知ってしまった亜梨子の心。提示された答えはふたつ。あるいは別の選択でもって、新しい答えに至ることができるのか。
書き下ろし中編「夢抗う語り手」にて示された、摩理と“先生”のエピソードを見ると、摩理の願いも純粋で儚く切実なもので、そしてイレギュラーによって生まれてしまった彼女だからこそ、ある種の不幸と、また別の未来を手にする可能性を併せ持ってしまったんですかね。
物語の収束点が見えてきました。ゴールはあと少し。答えまであと少し。
hReview by ゆーいち , 2008/06/09
- ムシウタbug 7th.夢高まる鳴動 (角川スニーカー文庫 163-57)
- 岩井 恭平
- 角川グループパブリッシング 2008-06-01
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ムシウタbug 6th.夢恋する咎人
ハルキヨメインの書き下ろしストーリーも収録 って、この表紙誰?
本編とのクロスオーバー具合が良い感じに増してきた過去編『ムシウタbug.』。先の『ムシウタ09』でも活躍した綾瀬川七那が再登場したりとここ最近の巻のリンクぶりはスゴいですね。
ストーリーも佳境のさしかかっている感じ。その存在を疑われる今は亡き“ハンター”花城摩理と、彼女の真意が掴めず五里霧中な亜梨子。摩理の足跡を辿り、彼女が探していた“三匹目”を探す過程で、ハルキヨとの接触を決意し、彼を追うのが主な展開。それぞれの短編ごとに、様々なタイプの虫憑きが登場し、“不死”の虫憑き一玖皇嵩も大きく関わってきます。虫憑きを憎悪する彼が、特環の本部長である以上、虫憑きに対する非道な対応もむべなるかな。自身もその憎悪の対象に含めていそうな彼と、虫憑きを好きだと声高に叫ぶ亜梨子の対比が本巻の名シーンのひとつになるかと。
そして、書き下ろしのハルキヨの物語。生い立ちから虫憑きになるまでの過程が描かれ、彼の特異なまでの強運さと、生き残ったゆえに獲得した強さ。虫憑きとなることでどうしようもなく強くなってしまった彼の絶望と、彼に比肩しうる強さを持っていると思われた摩理への恋慕にも似た焦がれる想い。それが叶えられないと知った、その先で、ハルキヨが亜梨子に何を望むのか、亜梨子がハルキヨに何を望むのか。屋上でようやく彼に辿り着いた亜梨子は、そこで何を知り何を得て、あるいは、何をなくすのか。
決められた結末に向かって加速していく物語。けれど、その最後はまだ誰も知らず、失われたままのミッシングリンクが明かされたとき、二つの物語はどのような形に姿を変えるのか?
ところで、表紙の子、ねねさんですか。From 岩井恭平 消閑の挑戦者・ムシウタスレ @ ウィキ。ここで彼女を出すという意味は!? キャラが増えすぎてイラストと対応し切れてません。もう、読本が必要なレベルじゃないかと(笑)
hReview by ゆーいち , 2008/01/12
- ムシウタbug 6th. (6) (角川スニーカー文庫 163-56)
- 岩井 恭平
- 角川書店 2008-01-01
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ムシウタ 00.夢の始まり
大助、詩歌、利菜 それぞれの夢の始まりの物語
初めての実戦任務に参加した“かっこう”は、“ふゆほたる”と出会う。物語の始まりを告げるエピソード。それは白い雪に染め上げられた中の、ほんの短い邂逅の物語。
そして、死してなお、多くの人の心の中に息づく、利菜という少女が、遠く叶わぬ夢を抱くきっかけとなった生誕の物語。
“虫”という存在が、本編ほどに認知されていない過去。身近な人間が、自分と同じものから、虫憑きという異形へと変貌してしまうことで生まれる、強烈な拒絶と縮まることのない隔絶。ささやかな夢を抱きつつも、それを叶えることはおろか、持ち続けることすら否定されてしまうかのような、弾圧の強さが描かれた2編のエピソードでした。
『夢の始まり』では、“かっこう”と“ふゆほたる”の最初の出会いと別れ。ほんのひととき、心を通わせあったかのような幼い二人の夢の交換。野心に燃える土師と大助の利用し利用される利害関係に基づいたかのような奇妙な友情。そして、今は“むしばね”に属している“なみえ”に降りかかった理不尽な出来事。暗い。暗すぎる。けれども、まだ、そこには確かに未来への希望が感じられているのです。本編では誰も彼も傷付いて満身創痍なのがなおのこと痛々しいのですが。
そして、『夢の黄昏』では“むしばね”のカリスマとしてチームをまとめていた利菜の始まりの物語。特殊な家庭に生まれ、両親からの歪な期待と、薄幸な愛情に育てられた幼い人格が、どのように“むしばね”結成へと傾いていったかの片鱗が語られます。幼くして、人心を束ね、また、誰かを救わずにはいられないという難儀な性格ゆえに、彼女に初めて救われた三人の虫憑きとの奇妙な関係も、また彼女の数奇な運命に綴られる1つのエピソードだったということでしょうか。仄かに抱いていた、幸せになりたいという夢すら心の奥底に封じ込め、別の夢で蓋をした彼女の顛末をすでに知っているだけに、しんみりとせざるを得ない過去談でしたね。
9巻に登場した秘書は、多分彼女なんだろうなあ。こういう複雑に絡み合った人間関係に、後になって気付かされるというのも、奥深さを感じますね。
hReview by ゆーいち , 2007/10/24
- ムシウタ 00.夢の始まり (角川スニーカー文庫 163-30)
- 岩井 恭平
- 角川書店 2007-08-31
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ムシウタ〈09〉 夢贖う魔法使い
始まりの虫憑き・αを巡る戦い 全ては金で決まるのか?
虫憑きの力をビジネスに利用しようとする赤瀬川七那は、“むしばね”のリーダーとなった詩歌の元を訪れる。現スポンサーである宗像の失踪と、かつて発生した虫憑き発生の転機となった“エンクロージャー”“バブル”“パラダイムシフト”という隠匿された経済現象。そしてそれらの最奥に潜む“始原の虫憑き”αの存在を巡り、七那は途方もない金額が舞うオークションに臨む。
今回は“むしばね”サイドのお話。リーダーとして心許ない詩歌を必死にサポートする周囲の人間と、そこに新たな変革をもたらした七那により、ようやく新生したといえる状態になったのではないでしょうか。天然で空気読めない詩歌も、リーダーらしい自覚が少しは芽生え、戦うための覚悟らしいものも決め、新しい理想の実現に向けて邁進していくのか。
物語の中核にあった、始まりの三匹の、さらに裏にあるとされる、“始原の虫憑き”αを巡っての争いは、これまでの虫憑き同士の戦いから、顔の見えない相手とのオークションによるマネーゲーム。他人を信じず、金にのみ愛された七那の、頂点を極め、けれどそれゆえ他人を信じられなかったことによる転落の軌跡の物語。二転三転したオークションの結末と、それに絡む人々の“金”を巡る信念の違い、知謀知略を尽くした心理戦と、これまでにない種類の熱い戦いを感じました。
大助も前巻でかなりボロボロになりつつも、戦線復帰した模様。全力を出せない、最強の伝説のみが一人歩きをしつつある孤独な虫憑きである彼と、詩歌の(一方的な)再会はなんとも切ない感じです。それぞれが信じて歩む道が、それほど遠くない未来に交わるとき、信念の実現のために戦うということを決意したふたりがどのように相対するのか、一筋縄でもいかなさそうな雰囲気ですね。
ただ、外伝のbugとのリンクがどんどん密接になってきているので、本編だけを追っている人は厳しそう。結局リリースされた順に読んで行けっていうことなのかなー。
あと、登場人物の関係がどんどんワケわからなくなっていくので、やはり前巻は手元に置いておいて、さらっと読み直してから読まないと結構辛いですね。
物語が大きな音を立てて動き始めたことを感じさせるエピローグ。詩歌とαの出会いが何を生み、世界を変えていくのかが、とても楽しみです。
hReview by ゆーいち , 2007/10/24
- ムシウタ9(9) 夢贖う魔法使い
- 岩井 恭平
- 角川書店 2007-07-01
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