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御堂彰彦 Tag Archive

付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います

stars ねぇ、もしわたしが一緒にここに残りましょうと言ったら、あなたはどうする?

付喪堂骨董店のオーナー・都和子が新たなアンティークを仕入れてきた。『災厄の壺』と呼ばれるそれには、世界のありとあらゆる悪意が封じられているらしい。決してその蓋を開けてはならないと刻也と咲に言い含め、壺の調査を始める都和子。しかし、翌日、刻也は都和子はおろか、咲までいなくなった、無人の店内に愕然とする。脳裏をよぎる、蓋の開いた壺のヴィジョン、そして、壺の置かれた机の上には、現状を端的に示す「この壺の真実に近づいた者に災厄が訪れる――」と記された文献があって……。

幸運

幸運を呼び込むバングルを巡るお話。アンティークによって引き起こされるトラブルよりも、むしろ、それを回収しようと登場した新キャラクター・駿と、彼の連れる少女の存在が気になるところ。

付喪堂骨董店の姉妹店の彼女とは、また違った目的でアンティークに関わっているようだけれど、まずは悪意が感じられてなんとも。今後どういった形で刻也たちと関係してくるのやら、血を見そうな展開の予感が、そこはかとなくするんですが……。

このエピソードも、前巻の第1章と同じく、仕掛けが利いてて、またしてもやられましたねー。幸運にまつわるお話でしたが、結局みんな最終的には不運な終わり方というか、それまでの反動を見事に受けてますね。それでも懲りずに幸運のアイテムを探し求める彼女の姿には呆れるやら何やら……。前巻にもそんな懲りないお嬢さんがいましたね。

あと、何気に刻也の交友関係を気にしてツッコミを入れる咲の姿が大変微笑ましいですね。

希望

続く第3章「言葉」とあわせてのエピソード。

あらゆる悪意が詰め込まれた壺の中に、隠されていた真実は……、というお話。

真実を目指す刻也と平行して真実が語られる構成になっているので、ちょっとややこしい感じですね。

壺の中に詰め込まれた悪意の正体は、実際には非常にもの悲しい由来があったりして感傷的になりますが、でもよく考えてみると、このシステムを作り上げた、その小さな社会そのものがすでに悪意に染まっていたんじゃないかという皮肉さが。次の章を見ても、やっぱりこの時点で救われてたわけじゃないってのがなあ。

言葉

咲が抱える何かが、彼女を躊躇わせる、そんなエピソード。

現実への帰還よりも、過去の干渉することもできない幻の中に残ることをともすれば選びそうになった、彼女の苦悩は深くて、そしてそれはまだ刻也にも垣間見ることができないですね。

母を慕う子の想いが鍵になっていたように思えますが、それは付喪堂骨董店にひとり住まう現在の咲の境遇と、何かしら関連があるのやら? 彼女の背景はまだまだ語られていない部分があるので、いくらでも深読みができますが、少しずつ彼女の内面に、物語が食い込んできているような印象を受けます。

刻也のことを愛しいと思いつつも、彼の優しさが逆に彼女を傷つけてしまったり。真にふたりが通じ合うには、まだ、少しばかり時間が必要なのでしょうか。

本音

そして、咲のターン!

まぁ、これまでのエピソードが重くて重くてどうなるかと思ったんですが、やっぱりこの咲視点でのお話は甘いし悶えてしまいますね。

お互いに服を選んでプレゼントするとか、もう、思いっきり恋人同士のデートにしか見えませんが、嫌がらせのように刻也の悪友たちがちょっかいかけてくることで事態が混乱、見てる方としては彼女の困惑ぶりと、内心のツッコミの切れ味に笑わせてもらえるんですが、いい加減彼女を意識した行動を取ってくれない刻也にはやきもきさせられるなあ。

そんな風に思っていたら、何ですかこのオチは!? ああああ、もう、コンチクショウ。上手いことこれまでのお話を使ってくれやがりましたね。たったひとつの想いを、望んだ相手に伝える、ただそれだけの力を持つアンティーク「コトノハ」を、こんな風に使ってみせるとは。

それを受け取った咲の対応もにやけてしまうなあ。もちろん、咲自身が、その言葉を誰よりも大切にし、それこそ過去のカイリのような何度も何度も繰り返し抱きしめるように味わうことに疑いはないのですが、一緒に贈られた服よりも何よりも、咲にとっては大切なものになりそうですね。

意地悪げに微笑む彼女の表情は新鮮で、素敵で、そしてそんな咲が贈りたいと思う言葉は、いつか形として刻也に贈られるんでしょうかね。小粋な演出が憎いお話でしたね。

hReview by ゆーいち , 2009/01/12

付喪堂骨董店〈5〉
付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
御堂 彰彦
アスキーメディアワークス 2009-01-07
Amazon | bk1

付喪堂骨董店〈4〉―“不思議”取り扱います

stars 人は矛盾を抱える者。でもあなたのそれは人より少し強いみたいね。それはあなたの望みを叶えるもの。けれどあなたの望みを叶えないものでもあるわ。

不思議な力が宿ったアンティーク。それは使う者によってその身を助けも、破滅もさせる道具。ある者は自分の影の薄さに悩み、消えてしまいたいとまで望み、ある者は答えの存在しない人間の心に、正解を求め、そして、ある者は愛しい少女の笑顔のためにキューピッド役を自らに課した。そんな望みに導かれ、手の中に収まったアンティーク。その力によってもたらされる結末は……。

あー、上手くしてやられた。気持ちよく騙されてしまいました。

影が薄い、そんな言葉をそのまま体現するアンティークと、その対極にあるアンティーク。それぞれを手にしたのは……。

いや、なんか、こういう話は切なくなりますね。自分にとって大切にしたいひとを、自分だけのものにしたかったから取ってしまった行動が、手遅れになる直前に挽回しようとしても遅すぎて。けれど、当人にとってみれば、その結末に後悔など抱かないで済んだ、それだけが救いだったのかも。

ああ、でも、もうちょっと自分の周りを穏やかに見渡すことができたのなら、アンティークに頼って自分の望みを叶えようなんて、そんな方向に向かわなかったのかなあ。むしろ、これは残された者にとって、苦みを残したお話だったのかもしれません。

ギャンブル

いやぁ、この手に汗握る展開。やはりギャンブルは燃える。まぁ、そこの描写が卓越してるというほどではないのかもしれませんが、やはり、賭け品が咲となると、負けられないのが刻也というもの。

なし崩し的にポーカー勝負をすることになった刻也と、アンティーク・心声によって心を読むことで無敗を誇る相手。そこに気付くまでの手のひらで踊らされるような弄ばれ方と、逆転の策を思いついてからのたたみかけるような攻め方が、刻也の性格を見事に現しているというか。

自分の死を予見する自らのアンティーク・ヴィジョンの使い方といい、この逆境でこそ輝きを増す主人公属性め!

なんか、勝負のさなかかっこつけて言った台詞、どう聞いても告白にしか聞こえないんですが、ああ、もう、その言葉を聞いたときに、咲がどう思ったか、それこそ心声で教えてほしいものですな!

小指

いやぁ、こういう黒い話好きですよ。

相手の幸せを願い、相手のために行動しているのは、その実自分が幸せになりたいから。それが報われないと知ったときに、彼が取った行動は……。

彼女が自分のものにならないなら、誰のものにもならないでほしい、そんな呪いのような願いを向けられてしまった彼女は、それに気付かずに今後も報われない恋に焦がれていくのか。そして、誰にも知られることもなく、彼女を不幸にしてしまった彼は、彼女にどうやって報いていくのか。4話を見る限り、完全に終わってしまっている訳ではないようですが、このラストはなんというか、愛憎の感情の紙一重さをいやというほど思い知らされますね。

秘密

キタキタキター!

やはりこのシリーズは、締めのエピソードに咲視点のものを持ってくるからたまらない! もはや咲のデレっぷりだけで1冊作っても文句言わないですよ、それくらいも悶え具合でございます。

赤糸を手にしてしまった咲は、その力を使えば自分の運命が誰に繋がっているかを知ることができる、けれど、それを知るのは怖くて、そしてそれが刻也でなかったらどうしよう、なんて臆病さまで見せてくれちゃって。

そんな咲の胸の内など知らない刻也の、指輪を気にした行動もまた空回りしていてなんとも微笑ましい。

4巻のお話は運命だったり、人の心だったり、見えない人間観の繋がりにまつわるお話で構成されていたような感じですが、もう、咲と刻也のふたりに関しては、心だけでなく運命だってこれでもかと固結びされてるじゃん!! と絶叫したくなるくらいの相思相愛っぷり。ねぇ、なんでお前ら付き合ってないのよ?

この恋人未満なのに、恋人以上に繋がっているふたりの甘甘な関係、やっぱり見ていてにやにやしてしまって困るのですよ。

hReview by ゆーいち , 2009/01/11

付喪堂骨董店〈4〉―“不思議”取り扱います
付喪堂骨董店〈4〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
御堂 彰彦
アスキーメディアワークス 2008-07-10
Amazon | bk1

付喪堂骨董店 3―“不思議”取り扱います

stars 世にも奇妙で不思議な物語第3幕 でも真の見所は咲の恋する乙女っぷり!

不思議な道具『アンティーク』が集う店・付喪堂骨董店。今日も客足はさっぱりだけれど、不思議な事件は望むと望まざるに関わらず起きてしまいます。
付かず離れずな刻也と咲の関係も、そんな事件を通して少しずつ変わっていくようで、未だ告げることのできない互いの気持ちが、伝わる日がやってくるのか?

うあああああああああ!! 咲、かわいいよ、咲。表紙を飾るクールさ面持ちとは打って変わった、そのオトメ振りに悶える悶える悶える。は、3回言ってしまった。

そんなこんなでアンティーク絡みの不思議な物語の第3巻。今回も、アンティークによって引き起こされた人間の、選択一つで生まれてくる幸と不幸の物語。前巻に比べると、今回の事件を引き起こした人たちの根底にある感情が、形は違えど愛というものだったので、報われない終幕だけでなく、納得のいく場所に落ち着いたというのは良い感じです。

そんな話のせいか、刻也は咲の大切さを遅刻一歩手前で気付かされるし、咲は咲で刻也への意識がどんどん加速して行っている感じ。毎度、咲の一人称で語られる最後のお話は、そんな彼女のかわいらしさがいかんなく発揮されているし、今回は、今回は。うはあああああ。と、もうね、毛色変わっても良いからこのままラブコメに突入しちゃいなよ、アンタらとツッコみたくなるくらいの展開。お互い強情なところと不器用なところがあるから、告白とか夢のまた夢だけど、でも、今回のメモの応酬は、あるいみ遠回りに告白しちゃってるだろ。あとは機を見てたたみかけるように、その恋を成就させてほしいところ。

巻を追うごとに、ラブ寄せが進んでいくけど、これはこれで大変よろしい。お決まりの展開になっているけれど、咲の可愛さはどんどん増していって、続きがとても楽しみになってしまいますね。

hReview by ゆーいち , 2007/11/03

付喪堂骨董店 2―“不思議”取り扱います

stars 世にも奇妙な骨董品を巡るお話 シリアス風味増量中

今回も不思議な効果を持った骨董品・アンティークを巡る4編のお話を収録。前巻に引き続いて、主人公・刻也の視点から事件を見つめる3編と、咲の視点からちょっとコミカルに物語を見つめる1編の構成。今後もシリーズが続くなら、こういう構成で行くってことなのかな?

刻也視点の3編は、どれも苦みのある結末で、結局人間、欲に溺れてしまうとろくな事にならないというお話。咲についても何やらヘヴィな過去がまたほのめかされたりで、彼女の身の上にものっぴきならない事情があるようで。刻也との関係も微妙なままで、さりげない好意が透けて見えているのですが、肝心の刻也へその気持ちが伝わらないので如何とも……。

そんな女の子感情に溢れた4編目の「化粧」は、これまたなんとも乙女チックなお話。せめて一言、と刻也に褒められることを夢見て、空回り気味の努力をする咲がおかしいやら可愛いやら。ふたりのディスコミュニケーションによる変な歯車のかみ合いが、最後まで続くのはかなりギャグ風味ですね。
他人の視点から見るとツンと澄まして泰然自若な咲も、心の裡ではあれこれ気を揉んだりしている、そういう二面性が感じられて楽しいお話でした。

hReview by ゆーいち , 2007/06/24

付喪堂骨董店 2―“不思議”取り扱います
付喪堂骨董店 2―“不思議”取り扱います (2)
御堂 彰彦
メディアワークス 2007-06

付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います

付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います

読了。

世にも奇妙な物語アウターゾーンを彷彿とさせるストーリーの4編の短編集。短いながらも起承転結がしっかりしている良作です。

どのストーリーも、『アンティーク』と呼ばれる奇妙な超常の力を持った道具と、それに関わった人間の顛末を描いていて、4編目の「プレゼント」を除いて、どの物語もその結末は自業自得だったり、どうしようもなかったり、ただの誤解だったりと原因は異なりつつも切ないものになっています。『アンティーク』というガジェットの設定には目新しいものはないものの、物語に絡めて上手い使い方をするなぁと感じます。主人公が持っているとある『アンティーク』の由来とかは明らかになってないけど、この儲かりそうもない付喪堂骨董店でバイトを続ける理由と関係があったりするのかしら?

3編目まで、ヒロインの咲がいまいちぱっとしないキャラだなぁと思っていたら、最後のお話でしっかりと魅力的に描いてくれてますね。憎からず思っている相手からのプレゼントに一喜一憂したり、雑誌の煽り文句に動揺したりとしっかりオンナノコしている彼女の描写が素晴らしい。物語の締めの数行の文章だけで、しっかりと幸せを感じさせて貰えました。てか、フラグ立ちまくりじゃねーか。進行させろよ!

続編出るならまたチェックしたい一作ですね。

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