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迷い猫オーバーラン!〈2〉 拾わせてあげてもいいわよ!?

stars 俺たちはあそこで、迷わず安心して暮らすことを覚えた。だから、大切なんだ。

学園長の孫にして梅ノ森学園の実質的な最高権力者・梅ノ森千世は苛立っていた。彼女が作ったサークルが、他の参加者にないがしろにされていることに。特に、都築巧が、『ストレイキャッツ』の手伝いを優先して、自分を構ってくれないことに。自分を最優先してほしい、そんな子どもじみたわがままが、夏祭りを控え賑やかさを増していく商店街に、とんでもない事態を引き起こしていって……。

新たな迷い猫がやって来た!?

こう、お金持ちのお嬢さまの、何もかもに不自由しない傲慢さゆえの勘違いと残酷さというのは、ときとして堪えるものがありますね。

今回、物語の中心となった千世は、まさにそんなお嬢さまで、あらゆるわがままを許されてきたから、巧たちの気持ちに気付かない、そして、自分の気持ちをどう「仲間」に伝えてやればいいのかも分からない。そんな難儀な女の子です。

そこに、さらに千世の友人で、さらに純粋培養な竹馬園夏帆嬢が要らぬお世話を焼いたおかげで、事態がさらにこんがらがって大変なことに。この夏帆嬢、なんとも自然に、彼女より下層なひとたちを見下して、自分の善意が何の疑問もなく受け入れられるものだと確信して行動しているからタチが悪い。一方で、千世を助けるふりをして、彼女が悩んでいる様を見ることを喜んでいるようなフシもあって、実は黒いんじゃないかとか思ってしまうキャラですね。最後のアレも、巧に対しては最上級の嫌がらせになったし、そんな他人の混乱ぶりを眺めるのを心の底で楽しんでいるんじゃないかって……恐ろしい娘っ!

そんなセレブな価値観を振り回し、上位者である傲慢さでほどこしを与えるがごとく巧や文乃、希に接してくる千世は、中盤まで正直うざいと思ってしまうのですが、彼女には彼女なりの価値観と正義でもって動いていて、彼女が心の中で思い描いていた楽しい未来は、それが叶わぬものとすぐに分かってしまうようなものだけに、だんだんとかわいそうに思えてしまったり。

巧が言ったように、今回の物語のトラブルは、本当にささいなすれ違いが巻き起こしてしまったもので、巧がストレイキャッツを大切に思っているように、千世にとっても、彼女と、彼女の仲間を含めたサークルは大切なものだったわけで。それを、お互いにちゃんとわかり合えず、お互いの大切なものを軽んじてしまったことで起きてしまった騒動でしたね。

千世が求めていたのは、容れ物としてのサークルなんかじゃなくて、彼女と仲間にとっての共有できる大切な何かだったという、そんなお話。傲慢で高飛車で傍若無人なお嬢さまも、迷い迷ってストレイキャッツに居着いて、ますます賑やかになるお店の未来は果たしてどうなることやら。

そんな風に、巧の周囲がだんだんとハーレム化していく中で、一番心穏やかでないのは、やっぱり文乃。彼女の前巻での告白を、巧自身もしっかりと受け止められていないというかなんというか、自分の気持ちを素直に表現できない、これまた難儀な文乃が、巧からの行動を待っているっていうことに、気付けない鈍感主人公はこれからも彼女に殴られ蹴られしていくんでしょうね。けれど、何もかもを正反対に表現する文乃が、そんな暴力を振るってくるってことは、本当は何をしてほしいか、長い付き合いの彼に分からないわけないんじゃないんでしょうかね? そんな気まぐれな猫さんを、ちゃんと家に迎え入れ、新しい家族の関係を築けるようになるには、まだまだ険しい道のりのようですね。

hReview by ゆーいち , 2009/01/01

迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!!

stars 迷惑は、かけてもいいんだ。家族には。そして、友達にも。

都築巧の姉・乙女がまた面倒事に首を突っ込んだ。そんなことばかりしているから、経営する洋菓子店『ストレイキャッツ』が危機的な状況にあるというのに。幼なじみで凶悪な口の悪さと全く素直じゃない性格の芹沢文乃も、ぼやきながらも手伝いをしてくれるけれど、今度ばかりはどうなるか分からない。だって、今回、乙女が拾ってきたのは、捨て猫どころじゃない、謎の少女だったんだから!

世間では実名でニュースサイトが登場するとか、そんな理由であちこちで取り上げられてますが、そんな大騒ぎするようなことかと思ってしまうひねくれた見方をしてしまいます。別にそこが物語に大きく関わってきてるわけでもないですし。まぁ、安易に実名で大手のサイトとコラボ(笑)すれば、話題作になってウハウハみたいなつもりで今後も続いてくるようだとウボァとなってしまいそうですが。

で、表紙と冒頭の展開で、文乃のツンデレを楽しむドタバタなラブコメかと思いきや、なんだか家族計画になっていた本作。読み終わってみたら悪くない感じでしたね。逆境にめげずに、身を寄せ合って、けれど、卑屈にならず明るく日常を送っている姿に和みます。

姉が拾ってきた少女・希の登場で、巧と文乃の関係が微妙に揺らいでくるあたりから本格的にお話が動き出します。文乃の性格が、どこまでも徹底した本音を言わない嘘つきなもので、だからこそ、長い付き合いの巧は、彼女の本音をよく分かって御してみせたり。

そんな「家族」の中に、拾われ放り込まれた希は、言葉少なで心をなかなか明かそうとしないけれど、少しずつなじんでいく過程が良い感じ。学校へ行ったり、ストレイキャッツの手伝いをしてみたり、友人たちと言葉を交わしてみたり、と彼女がどんどんと巧の日常になじんでいって離れがたくなったときに起きる最後の事件。巧や文乃の抱えていた事情というのは、容易に想像ができるたんですが、だからこそ自分たちの気持ちでもって希とともにいたいと伝えるふたりの姿が響きますね。大変良いクライマックスでございました。

文乃は言うに及ばず、学校の友人たちや、お嬢な千世もテンション高くて極端な性格で描かれているので、このノリでどんどん続いていくとちょっと辛いような気もしますが、物語の方向的に、今回の終わり方のような暖かな展開を予定しているのなら、とても楽しみになってしまいます。そうなってほしいなあ。

しかし、主人公に想いを寄せる娘たちはみんな天の邪鬼で見ていて楽しいです。にやにや。文乃の言葉がどこまでホントでどこまでが嘘か、今回のラストの台詞を思うと、こういう娘も可愛いって思えてしまいますね。

hReview by ゆーいち , 2008/11/05

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