I need you × 2

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MR=13さんから寄稿いただいた、ONE~輝く季節へ~ SSです。

『I need you × 2』

オレが“えいえんの世界”から帰ってきて、早数ヶ月。

高校自体は無事(?)卒業できたものの、大学受験を受けてなかったので、
(そして就職につこうと思ってなかったので)
オレは春から、いわゆる「浪人生」となった。

以前は、進路の事なんてまるで考えてなかった。
けれど、長森が地元の大学に受験し、現役合格したという話を聞いたとき、
オレは長森と同じ大学に進もうと決心し、由起子さんに頼み込んで、
家から少し離れた予備校に通うことになった。

グータラな高校生活を送っていたせいで、通い始めた頃は辛かった。
オレの通っている予備校は、規則が厳しいとかではなく、
授業の密度も濃いうえに、出される課題の量もハンパじゃない。
そして、ついていけなくなったヤツは容赦なく切り捨てる。
そんな場所だった。
おかげで、オレは何度もめげそうになった。

だけど。

──もう一年待っててあげるから、がんばろうよ──
──大丈夫だよ。浩平、やればできるほうなんだから──
──約束、だよ──

そんな時、長森との約束を思い出して、自分を奮い立たせた。
そのおかげかどうかはわからないが──いや、そのおかげで、だろう──、
オレはなんとか授業についていくことができ、予備校での生活も少しずつ慣れて
きた。

そして……。

「えっ? 遊園地?」
「おう。 何でも由起子さんが知り合いから譲って貰ったヤツなんだけど。
 『自分は行けないから』って言って、オレに渡したんだ」

ゴールデンウィークのまっただ中。
由起子さんから、郊外にある大型テーマパークのペア・チケットを貰ったオレは 、
長森を誘って行くことにした。

「で、どうだ? 一緒に行かないか?」
「うん、もちろん行くよ。
 ……けど浩平。課題の方は大丈夫?」
予想通りの長森の心配性に、オレは小さく溜息をつきながらも、
「課題ならとっくに片づけたって」
「えーッ?! ホントにーッ?!」
受話器の向こうから、予想以上の大声が飛びだし、オレは思わずのけぞってしま
った。
「……お前、オレの事なんだと思ってる?」
こめかみをひくつかせながら、オレは抗議の声を挙げる。
「……グータラ浪人生」
「バカッ。そりゃ高校生の話だろうがッ。
 今のオレは、まじめな予備校生だ」
「……そうなの?」
「ああ、まじめじゃなきゃ勤まらないトコだからな」
「そうなんだぁ……、大変なんだね」
「ああ。
 でも、半分はお前のおかげだよ」
長森は大学生なので、高校の時と違って時間の都合がつきやすい。
そして、その空いた時間のほとんどは、オレの勉強に付き合っていたのだ。
予備校から出された課題を何とかこなせているのは、長森のおかげでもあるわけ
だ。
「そんなことないよ。
 浩平、こないだだって、ウンウン唸ってたけど結構問題を解いていたし」
「でも、お前がいたから頑張れたんだよ」
「浩平……」
「じゃあ、お前も行く事に決定でいいな?」
「あ、う、ウン」
「で、時間はどうする?」
オレは、枕元の時計に目を移しながら瑞佳に聞く。
時計の針は、11時を指している。
「お昼すぎた後でいいかな?」
「うーし、決まり。
 1時に近くの公園で待ち合わせだな」
「うん、それでいいよ」
「言っとくけど、遅れるなよ」
「浩平こそ遅れてこないでよ」
「バァカ。昔ならともかく、今のオレが遅れてくるかよ。
 じゃあな」
オレはそう言って電話を切った。

正午をすぎた後、オレは軽く昼食をとり、身支度を整えて家を出る。
今日は、雲一つない快晴である。
オレは、眩しい初夏の日差しに目を細めながら歩く。
程なくして、待ち合わせ場所である公園に着いた。
長森はまだ来ていない。
「……」
せっかくだから、何かやって長森を驚かせてやろうか。
そう考えているオレの背後で、
「あ。浩平、来ていたんだ。
 もしかして待ってた?」
人の気も知らないで、長森が声をかけた。
「……いいや。
 オレもたった今来たところだから」
長森に背を向けたまま、オレはそう答えた。
「アレ? どうしたの、浩平」
「お前、ちょっと来るのが早いぞ」
「早いって……、
 今、1時5分前だよ?」
「あのなぁ。
 そんな早くこられたら、お前を驚かせようとしたオレの立場は……」
振り向きながら言ったオレは、そこで言葉が止まってしまう。
長森は、白を基調とした、シンプルなデザインのワンピースを着ていた。
そして、おそらくはワンピースと対なのであろう、つば広の帽子を被っている。
似合っている。
可愛い。
不覚にもオレは、そんな瑞佳に見とれてしまっていた。
「?
 どうしたの、浩平」
「あ、ああ。
 まー、その、なんだ……」
再び、長森に背を向けて言う。
「……お前、それ、似合ってるぜ」
オレは戸惑ってるのを長森に悟られないよう、さりげなく深呼吸する。
「本当?」
「ああ、オレがお前に嘘を言ったことがあるか?」
「うん、3回ぐらい」
キッパリと言う長森。
「な~が~も~りぃ~」
「あっ、で、でも今の言葉が本当だってのはわかってるよッ」
恨めしげに振り返ったオレを見て、長森は両手をパタパタと振りながら言った。
「……もういい。行こうぜ」
オレは肩をすくめて歩き出した。
「あっ、待ってよ、浩平~」
長森がてとてとと付いてくる。

公園を出た後、商店街を抜けた先の大通りを歩き、駅にたどり着く。
何回か電車を乗り換えて、ようやく目的のテーマパークにやってきた。

「ねぇ、どこへ行こうか?」
正面ゲートを先にくぐった長森が訪ねる。
「んー、そうだなァ……」
テーマパークの案内パンフレットを手に、続いてゲートをくぐったオレは、
ふと何かを思いついた。
「……そうだ。
 なぁ、長森。今日はオレが行き先を決めてもいいか?」
「え?いいけど」
長森はあっさり頷いた。
──しめた。さっきの借りは返すぞ、長森──
「んじゃ、行くぞ」
オレは、内心ほくそ笑みながら、目的の乗り物へと足を向けた。

そして小一時間後、

「はう~~~」
長森は見事にへたばっていた。
「なんだ、長森。もうダウンか?」
「もうって……。
 3回も絶叫マシンに乗ったら誰だってこうなるよぉ」
長森は涙目で恨めしそうにオレをにらむ。
「そうか?オレは平気だけど」
「浩平は平気でも、私が平気じゃないよぉ」
長森は、手近なベンチに腰掛けると、がっくりとうなだれた。
その様子を見ると、さすがにやりすぎたかな、と思った。
「……長森。
 その……、オレが悪かった」
「…………」
長森はうなだれたまま答えない。
「……いや、本当に悪かったって」
「…………」
「……なぁ、どうすれば許してくれるんだ?」
「……ソフトクリーム」
「え?」
「それで許したげる」
ようやく長森が顔を上げる。
さっきまでは心なしか顔面蒼白だったが、今は顔色も元に戻り、
いたずらっ子のような笑みを浮かべている。
長森の目線を追って振り返ると、そこには屋台型の軽食屋があった。
オレは肩をすくめつつ、
「わかった」
と言って、長森をベンチに座らせたまま、ソフトクリームを買いに行った。
買うのにさほど待つこともなく、両手にソフトクリームを持ってベンチに戻る。
「ホラ」
オレは長森の隣に腰掛け、一本差し出す。
「ウン。ありがと」
長森は早速食べ始める。
「……長森、さっきの店、クレープも売ってたけど、
 ソフトクリームで良かったか?」
「ウン。今日みたいな日は冷たい物が食べたいから」
「だな」
空はあいかわらず雲一つない天気なので、日向にじっとしていたら汗ばむぐらい
だ。
おかげで、二人ともすぐに食べ終えてしまった。
「じゃあ次行こうか」
オレは、ベンチから立ち上がって長森に声をかける。
「絶叫マシンはいやだよ」
長森は立ち上がりつつ、オレに釘を刺す。
オレは苦笑しつつパンフに目を通す。
「お」
「何か見つかった?」
「大観覧車。
 これならいいだろ?」
「うん、いいよ」
長森は即答する。
「じゃ決まり」
言って、オレ達は大観覧車に向かって歩き出した。

ガタン。
手際のいい係員に誘導され、オレと長森はゴンドラに乗る。
そして、ゴンドラのドアが閉まり、ゆっくりと上昇する。

「……」
「……」
オレ達は向かい合わせに座っている。
しばらくの間は無言だったが、長森が目線を窓の外に向ける。
「あ。見て、浩平」
「何だ」
「ホラ。いい眺めだよ」
オレも、窓の外に目線を移す。
なるほど。
長森の言うとおり、ゴンドラからはテーマパークが一望できるのはもちろん、
天気がいいため、遠くの山や町並みまでがおぼろげながら見えてくる。
「……」
ふと目線を上に向けると、まだいくつかのゴンドラが見える。
と言うことは、まだ頂上じゃないってことか……。
「……どうしたの、浩平」
「あ。
 ……なぁ、長森。ちと席詰めてくれないか」
「え、どうして?」
「お前の隣に座りたいんだよ」
「ええっ」
「ダメか?」
「あ、だ、ダメじゃないけど……、危ないと思うよ」
「大丈夫だって。
 ちょっとぐらいじゃ、ゴンドラが落ちたりしたりするもんか」
「…………うん」
言って長森は、端の方に体をずらす。
オレはそっと立ち上がり、長森の隣に腰掛ける。
「……」
「……長森……オレさ、今までずっと言いたかったことあるんだ」
「何を?」
「……オレ、今までお前にはずっと世話になりっぱなしだよな」
「うん」
苦笑しながら、長森は答える。
「……オレは、お前に嫌われても仕方のないことだってした」
「…………」
「それでも。
 お前は言ったな。
 『私はやっぱり浩平なんだ。浩平じゃないとダメなんだよ』って」
いつの間にか、オレはマジな顔をして、長森を見つめていた。
「うん。言ったよ」
長森もオレと同じような顔で、深々と頷く。
「…………オレもだよ。長森」
「え……」
「お前がいたから、オレは帰って来れた。
 お前がいたから、オレは今日まで頑張れた。
 だから、お前がいれば、オレはこれからも頑張れると思う」
「浩平……」
「これからも、お前には世話をかけるかもしれない。
 けれど……、オレのそばにいてくれるか?」
長森は、俺の目を見て、
「うん。
 大丈夫。これからもずっと一緒だよ」
キッパリと頷いた。
「長森……」

オレは、自分の左手を長森の右手に重ねる。
そして右手で長森の肩をつかんで、そっと抱き寄せた。
オレが顔を近づけると、長森はゆっくりと瞼を閉じる。
念のため、窓の外を見た後で、オレも目を閉じた。

ゴンドラが頂点に達した時、オレは長森にキスをした。

ほんの一瞬だったけど、それはとても心地よい一瞬だった。

やがてどちらともなく顔を離し、オレは自分が座っていた席に戻る。
ゴンドラが下り始めた時、オレ達は顔を赤くしながら呟いた。

「ソフトクリーム風味……」
「……ばか」

──了──

あとがき。

というワケで、遅ればせながら『ONE』をプレイして、感動の涙を流した私が
ない知恵を絞って書いたSSです。

私のつたない文章から、私の『ONE』に対する想いを感じ取っていただければ
幸いです。

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