世界平和は一家団欒のあとに〈4〉 ディア・マイ・リトルリトル・シスター

stars でも、あのころは楽しかったんだ……本当に

魔法を操り、怪しげな運び屋家業を営む、星弓家の長女・彩美。酒癖の悪さが玉に瑕の彼女が、二日酔いに苦しめられていたある日、突然子どもの姿に変わってしまう。魔法の暴走かはたまた誰かの陰謀か、その愛くるしい姿に色めき立つ星弓家の女性陣はともかく、彩美の姿をこのままにしておくわけにはいかず、軋人は手がかりを求めて動き出す。

軋人にとっては年の離れた姉で、幼い頃には苦手だと思っていた彩美。他人との距離の取り方が微妙にヘタで、いろいろ誤解されていたおかげで、今になってトラブルが舞い込んできたりと、そんなお話。

過去の彩美が関わった事件と、現在進行する彩美の幼児化現象が上手いことリンクしてますね。過去の事件を連想させる出来事が現在でも起きて、かつて彩美とともに事件に関わった人物たちが登場してきて一気に繋がっていきます。誰が怪しいとか、そう思う以前に、あの幸せそうだったメンバーが替わってしまうことを残念に思い、そして真相が明かされる段階でやるせない思いに変わっていきます。全体的に重くなりすぎないような、バランスの良い物語の展開なんですが、やっぱり当事者にとってはかなりヘヴィな過去があったりと、油断してると結構打ちのめされるような。ま、それでもなんだかんだで収まるところに収まって、気持ちの良いラストシーンですが。

軋人の彩美に対する感情は、結構ストレートな「好き」なんですね。子どもの頃に見せられた彩美の優しさを覚えたままで、ひねくれつつも彼女の弟らしい育ち方をしたのは良いのか悪いのか(笑) 良い弟ぶりを発揮してますが、ちょっとデバガメ根性を出したのは運の尽きでしたかね。影の薄い感じがしていた彩美に焦点を当てたエピソードが語られたことで、星弓家全員のキャラ紹介的な部分は完了? 今後はどういう展開に持って行くんですかねー?

終始ツンっぽい雰囲気の柚島さんが、ついうっかり口を滑らせたシーンがなんともニヤニヤできますね。彼女の本心はどの辺にあるのか、軋人は尻に敷かれっぱなしですが、そんなふたりの関係も見ていて楽しいです。紆余曲折ありつつも、上手く行ってほしいですね。

hReview by ゆーいち , 2008/05/01

世界平和は一家団欒のあとに 4

世界平和は一家団欒のあとに 4 (4) (電撃文庫 は 9-4)
橋本 和也
アスキー・メディアワークス 2008-04