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ソリッドファイター 完全版
さらば
アルティメイト・ソリッド――U・S。自キャラの自由なカスタマイズと、ネットワークによる定期的なバランス調整により、革新を起こした格闘ゲーム。スダケンこと増田研二も、そんなゲームにハマるプレーヤのひとり。ゲームの腕と性格を気に入られ、開発元のデバッグのバイトをしながら、今日もスダケンはU・Sのバトルフィールドで新たな闘いを求めている。
第1作目が発行されたのが10年前、当時を思い出すと3D格闘ゲームが大ブームを巻き起こしていた頃かな。大学時代の4年間バーチャファイターにハマりまくった思い出が蘇ります。本気で金つぎ込みまくったからなあ。車の1台くらいは軽く買えてたかも。
という、私みたいな世代で、かつ格闘ゲームにハマった経験のあるひとなら、本作を読むと、より楽しめるんじゃないかと。内容的にもかなり現実の3D格闘ゲームを意識して作られてるし、用語的にもほとんどそのまま通じたり。作中で使われるバグ技だったり裏技だったりも元ネタが思いついたりしますね。ああ、台湾ステップとか居合い蹴りとかあったなあ。
川上稔の『連射王』でもそうだったけれど、こういう自分とゲームの関係を描いた作品というのは、自分の経験が重なる分、感情移入度が増しますね。あちらが、シューティングゲームでひたすら自分とゲームとの戦いだったのに対し、こちらはゲームを通して人と繋がる対人戦。本作の中でも、春日野嬢のようにストイックに自分に課題を課し、自らを磨いていくような求道者的なキャラもいますが、やはり本作の主人公・スダケンのように対人戦の楽しさを生き生きと感じさせられる内容が、とにかく読む方にもその楽しさが伝わってくるかのようです。
街のゲーセンでの出会いから、全国大会でのハイレベルな対戦、ゲームの裏に隠されていた開発者たちの願いだったり思いだったり、自身が身近に感じられる題材だからこそ、この作品の伝えたいものがよりダイレクトに受け取ることができたように思います。
格ゲー好きならこの作品、とても楽しめるんじゃないでしょうか。そして、これが10年前に書かれたというのは驚きですが、現実のゲームもこれに近づいてきていて、一部は実現されていたりしますからね。確かに、早すぎた作品かもしれませんが、だからこそ逆に、格ゲーをプレーすることが生活の一部で、自分とは切り離すことができなかった過去に読んでいたら、さらに大きな共感を得られたのではないかと思うと、それが残念でなりません。
ともあれ、絶対おすすめの一作。買う方法が限られてるのがとても惜しいですね。いつか一般流通で誰もが手に取ることができるようになってほしい、名作だと思います。
hReview by ゆーいち , 2008/11/17
- ソリッドファイター 完全版
- 古橋 秀之
- アスキー・メディアワークス 2008-10-05
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ダンタリアンの書架
けれど、ひとつだけ、決して忘れないように。世界には、知るべきでないことがあるということを――。
青年は少女を連れて旅をしている。青年の名はヒューイ、少女の名はダリアン。胸に大きな錠前をぶら下げた彼女こそが、呪われ、失われた禁断の書物・“幻書”を納めたダンタリアンの書架への扉。そして、ヒューイの手にはその扉を開く鍵が握られていた。
幻書とそれを納めた図書館・ダンタリアンの書架。それの管理人であるダリアンと、書架を祖父から受け継いだヒューイの旅のお話。幻書によって与えられる人智を越えた力を得、それによって人生を狂わされたり、あるいは幸せを掴んだりと様々な結末を描いた短編集です。
この手のアイテムを手に入れたことで、その力に溺れ、振り回され、不幸な結末になるのは良くある話で、本作もダークな結末で締められる「美食礼賛」という短編からスタートするわけですが、良い雰囲気ですね。個人的にはもっと救われない話が多くてもいいかなとも思います。人間を不幸にする書架を帯同し、さらには力を与えるために幻書を貸与する、そんなヒューイとダリアンの行為こそが、悪であるとして動く焚書官のエピソードが最後で語られているだけに、両サイドから見たときに明確に善悪が反転しているだけに、ふたりが焚書官という存在を知ったとき――あるいはすでにその存在を知っているのかもしれませんが――どのような対立・対決になるのかも気になるところ。
断章で語られたふたつのエピソードは、誰の手によって幻書が持ち主に渡されたのか分からないままなのが謎めいていますね。ダリアン以外にも、幻書を管理する存在があるのか、幻書を使って何か思惑を持って動いているのか、そして焚書官の最終的な目的など、これから語られるべき物語には事欠かないようにも思います。
メインは幻書によって引き起こされる事件をヒューイたちが解決していく、その軸にさまざまな要素が絡んできて一本の物語を作っていくのかな、とそんな風に思います。
hReview by ゆーいち , 2008/11/16
- ダンタリアンの書架1 (角川スニーカー文庫 123-21)
- 三雲 岳斗
- 角川グループパブリッシング 2008-11-01
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機械じかけの竜と偽りの王子
僕は……。……僕はアルトゥール。フランシスカの兄です。
リュクサリアへ侵攻するオルガンドの襲撃を受けつつも、奴隷のイアンはその場を辛くも逃れることができた。しかし、逃げる最中、偶然にも搭乗し動かすことに成功した
偶然動かすことのできた機体は、王家の血を引く者のみが操れる特別製。そのおかげで、戦争に巻き込まれ、さらには身に覚えのない兄の役目まで押しつけられたイアンの波乱の物語が幕を開ける。
中世的な世界がらも、そこに機巧鎧と呼ばれるロボット的な要素を盛り込んで、なかなかに重厚な展開を予感させる第1巻です。機巧鎧のデザインを FSS の MH っぽいなあとか思ったり。まぁ、大昔に作られたはずの機体が、現行機を圧倒してみせたり、なんだか不思議パワーで窮地を脱したりってのは、ある意味お約束ではありますが。
主人公のイアンは、奴隷として扱われていたせいか、貴族や王家といったこれまでに全く縁のなかった世界に組み込まれようとしても、なんだかビクビクオドオド。政治的な道具扱いされてますが、彼を利用しようと思いついたヴィクトも善意からって訳でもなさそうだし、これからさらに微妙な立場になっていきそう?
そもそも、王国を守るべきトップの人間たちの多くが、自らの功を焦ってたりして、これから反撃しなければならないのに、姫を巡って争ってる辺りが生っぽいというか、そんなんで良いのか、いい年したオッサンどもが。
物語的には、後の世に大きな戦争として語られる戦史のまだ序章の段階。そもそも、双竜戦争というからには、もう一方の竜が出てこないと話にならないのですが、それは誰なんでしょうね。いろいろと曰くのありそうなキャラもいましたが。さらにはエリュシオンが発揮した謎パワーとか不思議要素も詰め込まれて、まだまだ裏設定がありそうです。
hReview by ゆーいち , 2008/11/15
- 機械じかけの竜と偽りの王子 (電撃文庫 あ 27-1)
- 安彦 薫
- アスキー・メディアワークス 2008-11-10
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繭の少女と街の防人
俺たちは今、境界を越えて古い理の中にいるんだ。
街の中に存在する、目に見えない「境界」。こちら側とあちら側を隔てるそれは、ときとして迷いを持つ人間を誘い込み姿を消させる。境界を見張る防人としての役目を持つ少年・諏訪守は、美貌を持ちながらも粗野な性格の少女・桜野ミチルから持ちかけられる境界絡みの事件を、解決していく。
なんだか古式ゆかしい雰囲気を持つ作品。悪くいうと、全体的に古くさい感じを受けてしまう、といったところでしょうか。
全体的に説明不足で、守が持つ街の防人としての役割や能力がよく分からないまま話が進んでいって、やや置いてけぼり感を覚えてしまいます。
そして、続刊が前提の構成になっているので、タイトルにもなっている「繭の少女」の紹介がほとんどないまま、この巻が終わってるあたり、消化不良じゃないのかなあと思ってしまいます。
最後のエピソードで、彼女(と彼女に属するものたち)と防人との間の因縁めいたものは感じられましたが、それよりも、そのエピソードで描かれた、境界に関わってしまったひとたちの悲劇的な結末の方がインパクトがあったり、というか、後味悪い終わり方でぐんにょりですね。
あとは守がどうにも冷め切って、さらにはその能力が万能くさいのがなあ。ピンチらしいピンチがなくて、淡々と事件を収束させたり。その辺が盛り上がりが感じられなかった一端なのかもしれません。
hReview by ゆーいち , 2008/11/15
- 繭の少女と街の防人 (電撃文庫 く 1-9)
- 栗府 二郎
- アスキー・メディアワークス 2008-11-10
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イスカリオテ
神と子と聖霊の御名において――汝に認証を求める! 我が名は九瀬イザヤ!
亡き兄・九瀬諫也として彼――九瀬イザヤが訪れた街・御陵市は〈
三田誠作品は初めてです。面白かったです。
七つの大罪をモチーフにした化け物、聖人の名を冠し、その奇蹟を科学により擬似的に再現することで戦う力を得る断罪衣、とタイミング的にはこれとは別に似た感じの作品を読んでいましたが、それとはまた違った面白さのある作品でした。
イザヤがなぜ諫也としてこの街を訪れなければならなかったのかは、かつて英雄視された九瀬諫也という存在に頼らなければならないほど逼迫している都市の事情や、対〈獣〉戦の指揮を執るカルロの思惑、そして諫也を兄と慕う玻璃の存在など、様々な理由付けがされています。
が、イザヤが諫也として戦うという選択肢を選んだのは、やはり最初の戦いで出会ったノウェムの存在が大きいのかな。戦うために作られた人形にして街そのものである彼女。ノウェムとイザヤの、他人とのふれ合いを満足に知らないふたりの、ぎこちない生活や、イザヤが餌付けされる(笑)情景、彼の言葉に笑顔を浮かべるノウェム、とそんなやりとりが良い感じです。
一転、〈獣〉との戦いではピンチの連続。十分な迎撃のための戦力に乏しく、直接的な戦闘担当がカルロとノウェムのみという状況で、なぜかイザヤの訪れとタイミングを合わせたかのように襲ってくる強大な敵。なんとも王道的な展開ですが、燃える燃える。敵の目的も、この世界に存在する断罪衣という力の理由も、明かされないことは多いのですが、それを謎としたまま熱く見せる展開に引き込まれますね。
そして、重要な位置づけにいそうな朱鷺頭玻璃嬢の抱えた秘密。物語の冒頭で語られた内容が終盤で大きな意味を持ってきてますね。彼女の抱く九瀬諫也への想いが、過去の本当の諫也と、今の偽物であるイザヤを繋いでいますが、彼女の抱く罪と、語られていない過去の出来事が、これからの戦いのどんな影を落とすのか、それもまた気になるところです。
偽物として多くの人間を騙したまま戦わざるを得ない状況に置かれてしまったイザヤ。彼がこれからの一年間をどうやって戦っていくのか、絡まった想いと、謎に満ちた世界、それらの展開と合わせて期待したいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/11/13
- イスカリオテ (電撃文庫 さ 10-5)
- 三田 誠
- アスキー・メディアワークス 2008-11-10
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