円環少女〈4〉 よるべなき鉄槌

2013年4月18日

円環少女 (4) よるべなき鉄槌

読了。

悪鬼の中で特別である仁の過去が明かされるエピソード。これまでとこれからを繋ぐ転換のお話でもありますか。

束の間の夏休みに興じる、仁とメイゼル、きずなの日常の描写が、重々しい設定に支配される本作の中で、ほんの少しだけでも仁が望んでいたであろう日々を幻視させるのが悲しいですね。所々に回想として挿入される、妹・舞花との思い出が、取り返せない出来事であるだけに、仁が護りたいと願う現在の生活の、メイゼルの存在の重みを実感させます。

きずなという、過去をすら改変できる存在があるということの意味を、仁は気付いているのかどうか。きずながその身に宿る魔法を自在に使えるようになったとしたら、あるいは舞花の存在の復活ということさえ可能になったりしないのか? 彼女を巡るこれまでの争奪戦においても、それぞれの目的が過去の改変であったりしたことからすると、その可能性も十分に考えられるのかな。今のところ、ほとんど巻き込まれ型で役に立っていないきずなですが、終盤、王子護の語った言葉から想像するに、今後の展開におけるキーパーソンになるのは間違いなさそう。

そして、多分一番救われていない、エレオノールは、仁との戦いの後に何を思うのやら。心身を捧げた神意より自らの心を選び、かつての聖騎士の仲間たちと袂を分かった彼女の行く道も気になります。信仰以外の何もかもを失い、それでも生きていくことを強いられるこの世界で、「いつか」彼女の魂が救われる日が来るのでしょうか。

様々な勢力が行動を開始し、微妙なバランスが一気に崩壊しそうな雰囲気を漂わせて続いています。次回はまたとんでもないことが起きそうな予感がひしひしとしますね。