あの日々をもういちど

2008年8月8日

stars う~ん、ちょっと期待しすぎたかな

妖魔が跋扈する時代。水際の剣士・流がその身とともに強大な力を持つ鬼を封じてから400年。封印が解け、流が見回した世界は一変し、守るべき人も、村も何もかもがなくなってしまっていた。自らの存在意義すら失われてしまった現代にあって、彼の前に再び現れたのは、かつては姉と慕い、そしてどうしようもない理由から憎しみを向けられることになってしまった土地神でもある妖狐・夕凪で。

かつて守れなかったもの、これから守っていくもの。400年という取り戻しようのない時間を経てしまった流の苦悩や絶望が、彼の視点であったり、あるいは過去の幸せな時間でもって語られ、重さを感じさせます。
時代の変化について行けず、剣を振るうという自身の価値を現代において見いだすことができなかった流が、同じ時間を過ごした夕凪と再会し、互いを傷つけ合うことしかできないながらも居場所を見つけていくまでの物語。なんともお約束な感じではありますが、挫折と再起というのは燃えるものがあります。

まぁ、作品自体が設定のスケールの大きさと相反する感じで小粒にまとまっている感じで、流と夕凪の関係とか、妖魔らとの戦闘描写とか、そういった部分も深く深くじっくりと描いている感じはしなかったかなあ。過去の流と、義理の妹・茅乃とのやりとりとか、流の根幹を築いていた部分の描写が足りない感じ。それは夕凪との関係にも言えますが。

健速作品としては、初めて触れたものが『遥かに仰ぎ、麗しの』本校系シナリオで、その作風に非常に惹かれたものですが、本作においてはそんな部分がなりを潜めていて、私が期待していたのとはちょっと違った感じの作品に仕上がっていたのがやや残念。氏のテキストはゲームという媒体で、絵や音声を伴って映えるのかなあとも思いました。
あとはイラストがいまいち……。妖魔の作画とかかなり手抜きに見えて、脅威とか伝わってこなかったからなあ。

hReview by ゆーいち , 2007/08/05

あの日々をもういちど

あの日々をもういちど (HJ文庫 た 3-1-1)
健速 双
ホビージャパン 2007-08-01