僕は彼女の9番目

stars わたし、あなたに、差し上げたいんです。いっとう欲しい物、あるでしょう? どうぞ、なんなりと。

自分を轢いた犯人が見つからないのは仕方がないことだったと気付かされた。東司の部屋に忍び込み、彼を轢いたと告白したのはサンタクロースだったのだから。お詫びに欲しい物を何でもひとつプレゼントするという彼女の言葉に、東司は「君が欲しい」と答えてしまい……。

東司のうっかりな一言で、突然始まる同居生活。唐突に現れたサンタ少女・黒須にこらに東司の周囲はかき乱されていって。良識はあるけれど、常識はない、そんな彼女と東司のかみ合わない会話だったり、東司が実はサンタアレルギー(笑)でサンタ的存在に触れられると大変なことになるという無茶ぶりだったり、ツンデレな幼馴染みの遠回しなアプローチだったり、サンタの愉快なトナカイたちの個性に圧倒されたり、最後の最後にとんでもないヘヴィな展開が用意されていたり、と盛りだくさんだけれど、やっぱりバランスの悪さが感じられるかなあ。

最後に用意されていた友人の話は、序盤~中盤からは想像できなかったなあ。というか、唐突に重い過去話持ち出されてちょっと戸惑いがありますね。東司とにこらの、次のクリスマスイブまでと設定した同居期限の間に、恋愛方面の発展が描かれるのかなあと思ったら、これだよ。サンタ絡みで当事者がいるとはいえ、この重い話が必要だったのかというのは疑問が。

登場人物が個性的だけれど、それが活かされたシーンがあんまりなかったのかな。せっかく、良いツンデレ幼馴染みと、唐突に現れたサンタ少女という三角関係必至な設定なのに、そういう話が薄いんだもんなあ。もっと幼馴染み分を出してくれよう。

そんな感じで、予想外のヘヴィなエピソードを経て、東司とともに生活を続けることを選んだにこらですが、彼女の心に芽生えた感情だったりを思うと、これからも続いていく毎日の楽しさは保障済み、あとは東司が自分のアレルギーを治せばハッピーエンド? まぁ、その前に美早子との東司を巡る恋の鞘当てとかもあるんだろうなあ。個人的にはそっちを見てみたかったけれど、続きます? この話?

hReview by ゆーいち , 2008/08/16

僕は彼女の9番目

僕は彼女の9番目 (電撃文庫 さ 12-2)
佐野 しなの
アスキー・メディアワークス 2008-08-10